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賃貸契約を更新しないと言われた!6つの対応と立ち退き料相場を解説

大家から賃貸借契約を更新しないので立ち退いて欲しいという連絡が来た。
大家が更新しないと言ったら更新できないの?と疑問をお持ちではないでしょうか。
結論、更新は原則できるますし、立ち退く必要はありません。
本記事では、大家から立ち退いて欲しいといわれた際に、どうなるのか、どういう対応がいいのかなどを網羅的に解説します。
【この記事でわかること】
- 賃貸更新の3つのルールがあること
- 普通借地か定期借地かでことなること
- 大家が更新拒絶するには3つの条件が必要なこと
- 契約終了の6か月から1年前までの通知
- 正当事由
- 立ち退き料
- 家賃滞納などがあれば更新拒絶されること
- 立ち退きを要求されたときの対応方法
- 契約書内容の確認
- あなたの正当事由をまとめる
- 大家と交渉する
- 弁護士に相談
- 立ち退き料の決まり方
- 立ち退く場合のスケジュール
- 弁護士に相談した方がいいケースと依頼する3つのメリット
- メリット①立ち退きを回避できる可能性があがる
- メリット②立ち退き料が増額できる
- メリット③交渉をまるっと依頼できる
- 立ち退き料を多く獲得できた事例
目次
1.賃貸更新しないと言われたら立ち退かなきゃいけない?3つの法的ルール
オーナーから賃貸借契約を更新しないと言われた場合、結論からいえばほとんどのケースでは「原則立ち退かなくていい」です。
ただし、以下の3つの状況によってそれぞれ適用されるルールがことなるので、自分はどれに当てはまるか、まずはチェックしてください
- 普通借家契約を締結している場合
- ┗借主が大きな契約違反をしてない→原則更新できる
- ┗借主が大きな契約違反している→原則更新できない
- 定期借家契約を締結している場合
- →原則更新できない
ほとんどの方は(ⅰ)普通借家で、(ⅱ)大きな契約違反などしていないでしょうから、原則オーナーが「更新しない」といってきても、更新できます。
ですが、あなたとオーナーの個別具体的な状況とオーナーが立ち退き料を提供するのか、その提供する立ち退き料の額などの条件は異なります。
この点については、2章で解説します。
1)【基本ルール】更新拒否するにはオーナーに正当事由が必要であり、原則は立ち退かなくて良い
オーナーから「賃貸借契約を更新しない」と言われた場合、基本的な状況としては、(ⅰ)普通借家で、(ⅱ)あなたが大きな契約違反などしていない状況でしょう。
ちなみに「普通借家」契約とは、1年〜2年単位で更新していく、お馴染みの賃貸で、8割ほどの賃貸はこの形態で契約しています。
この場合は、あなたが希望するかぎり賃貸契約を更新できます。(自動更新、借地借家法26条1項)。
借地借家法は、住居を簡単に追い出されてしまっては困るという観点から、契約期間満了後も借主が居住を継続する意思を示した場合、貸主が特定の条件を満たさない限り契約が更新されるように借主を保護しています。
この保護があるのにオーナーが「賃貸借契約を更新しない」というなら、以下の条件をみたす必要があります。
- 契約満了の6ヶ月~1年前に通知する
- オーナー側に「正当事由」があること(次章で解説)
2)【更新できないケース①】あなたが家賃滞納など契約違反をした場合
普通賃貸契約でも、あなたが契約に定めた義務に違反し、かつその義務違反が重大な場合は、債務不履行によって契約が解除されてしまいます。
更新ができないというか、その時点で契約が終了することになります。
例えば、どのような義務違反が重大なものかというと以下のものです。
- 賃料滞納
- 3ヶ月分以上の連続した未納
- 支払い遅延が断続的であるが複数回ある(3回以上が目安)
- 無断転貸・譲渡
- 大家さんの許可なく他人に転貸・譲渡した
- 用法義務違反
- 住居として借りているのに飲食店を営んでいる
- 建物を損傷する可能性がある大型ペットを飼っている
- その他契約違反
- 原状回復不能なほど損傷させた
- 近隣への著しい迷惑行為(騒音・不法占拠など)
債務不履行によって解除されるのは、上に挙げたような”重大な”違反をしたケースのみです。
例えば家賃滞納についていえば、1ヶ月・2ヶ月程度ならまだ許容範囲です。
なぜなら、入居者が住むというような継続的な契約において、ささいな契約違反で解除されてしまうと、入居者が大変困ります。
そこで、その契約違反によって、「信頼関係が破壊される程度に至ったこと」(最高裁昭和39年7月28日判決)が必要とされています。
これらの重大な違反をもしあなたがしていた場合は、契約終了を待たずして立ち退かなくてはなりません。
3)【更新できないケース②】定期借家契約だった
定期借家契約とは、その契約期間”だけ”賃借りする契約であって、更新することは初めから想定されていません。
定期借家契約の期間満了で「更新しない」と言われるのは当然であって、当然立ち退かなければなりません。
とはいえ個人の住宅として賃貸する場合、この契約方法はあまり使われません。
都内中心部の超人気物件、大手デベロッパーの建てた有名な物件、大家さんが海外赴任していていつか日本に帰ってくるなどの場合に用いられる契約です。
2.「賃貸更新しない」が認められる3つの条件
定期借家契約でなくて、契約違反もない場合の基本ルールは「更新できる」と述べました。
ですが、オーナー側にも事情があり、3つの条件を満たせば例外として「更新しない」ということができます。
ここでは、更新しないことが認められるその3つの条件を解説します。
1)期限内に更新拒否の連絡がくる
大家は、賃貸借契約終了の6ヶ月から1年前までに通知をしなければなりません。
一般的には、言った言わないの紛争を避けるために、内容証明郵便など形が残る方法で連絡があります。
2)大家側に契約更新しない「正当事由」がある
大家が契約を更新しないためには、大家側の事情、あなたの事情、その他の事情及び立ち退き料を総合的に考慮して、「正当事由」が必要です。
正当事由とは、簡単に言うと、あなたに引っ越してもらうことが、事情を勘案すると仕方ないよねという事情をいいます。
大家側の事情、その他の事情とは、次のようなものがあります。
- 建物の老朽化(特にアパートで築40年を超えてくると、”強い”正当事由になる)
- 大家さんが住む必要がある
- 大家さんの親族が住む必要がある
- 建て替えて魅力的な投資物件に変えたい
- あなたに軽微な契約違反がある
ですが、これらの事情があれば足りるというわけではありません。
原則として、これらに加えて、次で解説する立ち退き料が必要です。
なお立ち退きの正当事由については、以下の記事でさらに詳しく解説しています。気になる方はあわせてご覧ください。
関連:立ち退き・退去の正当事由!借地借家法と貸主都合の判例をもとに解説
3)立ち退き料を払う
立ち退き料とは、正当事由の一要素ですが、実質的には正当事由が不足している場合に、正当事由を補完するための金銭の支払いをいいます。
また、いざ立ち退くとなった場合にかかってくる移転費用(引っ越し費用+新居の契約費)や、精神的負担の賠償といった意味合いもあります。
1)で説明した正当事由の事情だけで認められる場合は少ないです。
オーナーの都合で引っ越すのに、その引っ越し費用を入居者(あなた)が負担するのはアンフェアだからです。
つまり、借主(あなた)としては、基本的には立ち退き料はもらえると考えてください。
立ち退き料の具体的な金額と内訳など詳しいことについては、5章であらためて解説します。
3.立ち退きを要求された時の具体的な対応
大家から更新しないと言われた際、具体的にどのように対応するのが良いのでしょうか。
まず基本的な対応のスタンスとして、「基本的に更新はしたいけれども、そちらの事情と立ち退き料次第で立ち退きも考える」という姿勢がベストです。
よほどそこから転居できない事情がない限り、「頑なに立ち退きを拒否する」というのはおすすめできません。
オーナーもあなたも希望を譲らなければ関係は悪化しますし、解決までに時間もかかってしまうからです。
立ち退き料をきちんと受け取れば引っ越しや新生活スタートにかかる費用は賄えますから、
「必要なだけの立ち退き料をきちんと受け取って立ち退く」というゴールに向かうのがおすすめです。
ただ、どうしても立ち退きを拒否したいという事情がある方は、以下の記事で対処を解説しておりますので、ご覧ください。
関連:賃貸でも立ち退き拒否はできる?権利があるケースと交渉の方法を解説
1)まず確認するのは、契約書と更新拒否の理由
賃貸借契約書から以下の項目を確認してください。
- 定期賃貸借契約かどうか
- 契約の終了はいつか
- 契約にある義務に違反していないか
次に、大家からの更新しない理由を確認してください。
正当事由があるかどうかの判断に必要です。
契約終了の半年から1年前に来ているかも確認です。
2)あなたの正当事由をまとめる
正当事由の判断要素には、あなたの事情、あなたがその不動産を使用する理由、その他契約にかかる従前の経緯などが含まれます。
ですが、大家はあなたの事情を詳しく知りません。
あなたの事情、この家に住みたい理由を洗い出しましょう。
例えば、次のような事情です。
- 家族が重病で移転が困難
- 子どもの学区が変わってしまう
- 長い間住んでいて地元での人間関係がある
- 収入が少なく新しい物件を見つけられない
これらの事情をまとめて伝えれば、大家は立ち退き料を多く払わざるを得なくなります。
3)大家と交渉する
基本的には立ち退きたくない、「あなた(大家)から一方的に『更新しない』なんて認められない」というスタンスで交渉しましょう。
大家から譲歩を引き出すための交渉方法として有用です。
戦略的にやや感情的になるのは時には有効ですが、感情的になって我を忘れてしまうということは避けてください。
交渉のポイントは、相手の譲歩をいかに引き出すかということです。
大家さんもその時の気分で立ち退きを要求していることはなく、立ち退きを簡単にあきらめるということはないでしょう。
- 家賃の増額
- 契約期間の変更
- 定期借家契約への切り替え
ただし、賃貸借契約の開始が平成12年3月1日以降であることが必要
- 立ち退き料を増額してもらって立ち退く
といった着地点を探るというのがいいのではないでしょうか。
4)必要があれば弁護士に相談
弁護士に相談すれば、どういう進め方にすればいいのか、あなたの現状を理解して専門的な回答を得られます。
立ち退きたくないとなった時に立ち退かないで良い方法、立ち退き料の額によっては立ち退いてもいい場合に立ち退き料を増額させる方法など出口に対する解決策が見えてくるでしょう。
専門の弁護士であれば、あなたの状況、大家の状況、その他の状況を客観的かつ専門的に分析できます。
5)【立ち退く場合】約束した日(契約満了日)までに立ち退く
大家との交渉が上手くいって、納得できる条件をもらったので立ち退くという選択をした場合です。
賃貸借契約終了日となることが多いですが、大家と立ち退くと決めた日までに立ち退きましょう。
4)【立ち退き拒否を貫く場合】裁判等で決着をつける
大家との交渉が上手くいかず、納得できる条件を得られず、立ち退かないという選択をした場合です。
大家が立ち退きを諦めて何もしないという可能性もあります。
ですが、大家さんは調停・訴訟といった裁判手続きを選択することが多いのではないでしょうか。
調停はいわば話し合いで両者の合意を探る手続きですが、訴訟は裁判所によって判断が下されます。
訴訟はどのような結果になるか推測することは難しいです。
全面的にあなたの言い分が通らないということもありえなくはありません。
専門の弁護士に相談することが必要不可欠でしょう。
4.賃貸更新しない場合にもらえる立ち退き料相場と決まり方
賃貸借契約書を更新しない場合に、受け取れる立ち退き料の相場は、月の賃料の8ケ月程度が相場です。
具体的な金額はあなたの事情、大家さんの事情などによって、大きく変わってきます。
ですが、新しい家に引っ越すことでかかるお金は基本的にカバーしてもらえると考えて大丈夫です。
1)立ち退き料に含まれるお金
相場はあくまで目安であって個別でかなり異なります。
なぜなら、正当事由は、両者の様々な事情を考慮しなくてはならず、事情は事案によって全く異なるからです。
立ち退き料の内訳は3つあります。
【立ち退き料の内訳】
- 引越し費用
- 初期費用(仲介手数料等)
- 家賃増加分等
引越し費用とは、引越しのために引越し業者に支払う費用です。
初期費用(仲介手数料等)とは、新しい物件を契約するために必要な初期費用であり、礼金、仲介手数料をいいます。
家賃増加分等とは、現物件と同等の物件を借りる場合、賃料が増加することが一般的であり、それを一定期間補填するものです。
つまり引越しに関わる費用を補填するということです。
必ずこれらの金額を全額もらえるということではなく、正当事由の判断によって異なります。
ですが、逆に言うとこれらの相場とはかけ離れた高額な立ち退き料を受け取る事案も多くあります。
なお、立ち退き料の相場について詳しく知りたい方は、「立ち退き料の相場は?7つのケース毎にいくらもらえるか・内訳を解説」をご覧ください。
2)立ち退き料を増額交渉する方法
立ち退き料を増額するためには、相手に譲歩を促すことが大切です。
①交渉の扉を閉めない
もう交渉には応じませんと頑なに立ち退きを拒否する姿勢を取らないほうがいいでしょう。
ある程度強気に出て相手に譲歩を促すというのも一つの手段ですが、話し合いを終わらせるような方法はダメです。
②大家の事情を理解して譲歩の糸口を探す
大家側の事情を聞き取って、相手によってメリットがある提案と引き換えに立ち退き料を増額してもらうようにしましょう。
例えば、契約満了を待たずに立ち退くから立ち退き料を増額してほしいとか、立ち退き料に加えて契約終了までの家賃を免除してほしいなどです。
③契約違反をしない
交渉している間に頭にきたからと賃料を払うのを止めたという方がおられました。
これまで説明しましたが、契約違反をすると、相手の正当事由が強くなりますし、最悪、賃貸借契約書の解除となり立ち退き料がもらえなくなります。
5.【いつまで住める?】立ち退く場合のスケジュールと退去日
立ち退くと決めた場合のスケジュールを解説します。
1)立ち退きまでのスケジュール
遅くとも半年前に通知を受けますから、半年間の猶予があるということになります。
大家さんの通知において、十分な立ち退き料があり、納得して立ち退く場合は、契約期間終了日となります。
通知後、大家と交渉して立ち退きを決めた場合は、大家と合意した日です。
いずれであっても、立ち退いた後に大家さんの退去確認がありますから、余裕をもって引越しする必要があります。
2)退去までにやるべきことと新居探しのポイント
立ち退きをしないと思っていても、水面下で(大家さんに知られないように)新居探しをしましょう。
同等の物件の賃料がいくらくらいなのか、保証料、仲介手数料など初期費用がいくらかかるのかなどは、必要な情報です。
また、引っ越し準備をすることで、実際に引っ越しにかかる費用も検討できます。
引越し費用は、3月中ごろから4月初旬までが、とりあえず高いですからこれを外すだけでも費用を節約できます。
6.弁護士に相談した方がいいケースと依頼する3つのメリット
自分で交渉するのには不安があるという方もおられるでしょう。
そのような場合は弁護士に依頼するのも良いでしょう。
1)弁護士に相談した方がいいケース
次に当てはまる方は弁護士に相談した方がいいでしょう。
- 立ち退きたくない
- 立ち退くとしても立ち退き料を最大化したい
- あるいは、大家が提示してきた立ち退き料が安すぎる
- 大家側との交渉を自分でするのが不安でストレスが大きい
専門の弁護士であれば、正当事由という専門的な法的評価ができ、あなたにとって有利になるでしょう。
弁護士に依頼するメリットは次の通りです。
2)【弁護士のメリット①】立ち退き回避できる可能性があがる
立ち退きを回避できるか否かは正当事由の判断が大きな要素です。
立ち退き料の額にもよりますが、あなたの事情が大きく、大家の事情が小さい場合は立ち退く必要がありません。
もっとも、正当事由の判断は、事情の総合考慮であって網羅的客観的ですし、法的評価です。
弁護士であっても難しいところですから、素人の方にはもっと難しいでしょう。
弁護士であれば、この判断が難しい正当事由の判断をサポートできます。
3)【弁護士のメリット②】立ち退き料が増額できる
立ち退くとすると立ち退き料の額を最大化したいところです。
立ち退き料は正当事由の補完ですから、正当事由の正確な判断が必要です。
これに加えて、実務上、交渉上のポイントがあります。
弁護士であれば、立ち退き料を最大化するサポートができます。
4)【弁護士のメリット③】交渉をまるっと依頼できる
交渉ってとても難しい上に、自分にとって大切であればあるほど、ストレスは大きくなります。
交渉に慣れているという人であっても、自分事となると簡単ではありません。
交渉が仕事の大半となる弁護士であっても、自分のことは他の弁護士に依頼します。
弁護士に依頼すれば、ストレスがかかり時間的な負担も大きい交渉をまるっと任せることが出来ます。
7.「賃貸更新しない」と言われてから立ち退き料を多く獲得できた事例
当事務所の事案で多く獲得できた事例をお伝えします。
裁判例では、住居利用の入居者が多額の立退料を得た事案はあまりありません。
高額の立ち退き料を得た事案のほとんどが、裁判外の交渉で合意しています。
裁判は公平性が重要なポイントであり、相手の懐事情から払える額を考えるという視点はありません。
そのため、立ち退き料は妥当な額へとおさまっていくことになります。
1)700万円の立退料を得た事案
都内で月額8万円程度の家賃で住んでいたところ、大家から立ち退きを要求されました。
その立ち退き料の額は、700万円です。
住居に利用していて、そこに住まないといけないという強い理由が特段ない事案です。
相場があっても、事案により異なることを理解いただけたのではないでしょうか。
2)7,500万円の立退料を得た事案
都内で月額40万円程度の家賃で住んでいたところ、大家から立ち退きを要求されました。
その立ち退き料の額は、7,500万円です。
ひとつ前の事案の10倍以上です。
大家さんの事情から開発目的であることを見抜き、相手の懐事情を計算して、交渉できたところがポイントです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
大家から立ち退きを要求された際の対応をまとめます。
原則は立ち退かなくていいです。
原則とは、普通借地契約であり、あなたに大きな違反がない場合です。
ですが、大家の正当事由、立ち退き料の額によっては、立ち退かないといけない場合があります。
その場合は、立ち退き料を最大化して、立ち退くのが良いでしょう。
また、立ち退かないで済むかもという場合であっても、納得できる高額の立ち退き料を受け取って立ち退くというのも魅力です。
弁護士に相談することで方向性が定まると思いますから、積極的に相談してみましょう。
そのまま弁護士に依頼するというのもメリットがあります。
納得いく結果を得てもらえると幸いです。