- 最終更新:
家賃滞納者を立ち退きさせる4つの手順とは?内容証明〜強制執行まで

家賃の滞納が発生してどう対応するのがよいのか、はやく立ち退いて欲しいとお考えではないでしょうか。
結論、3ケ月連続で家賃滞納があった場合は強制的に立ち退かせることが出来ます。
ですが、それ以外の場合であっても立ち退かせることが出来る場合もあります。
強制的に立ち退かせるには、督促、訴訟、強制執行というステップとなり半年近くの期間が必要です。
また、訴訟費用、強制的に立ち退かせる費用、弁護士費用などがかかります。
ですから、自ら出て行ってくれるように持っていく方が適切です。
自ら出て行ってくれそうもない場合は、速やかな法的手続きが適切です。
そこで、本記事では家賃滞納が発生してから強制的に立ち退かせるまでの流れやポイント、注意点などを解説します。
【この記事でわかること】
- 家賃滞納が連続して3ケ月以上となると強制的に立ち退かせることができること
- その他の場合でもできるが、信頼を破壊する程度であることが必要であること
- 家賃滞納発生から立ち退きまでのステップが以下であること
- 督促
- 保証人へ連絡
- 内容照明郵便による督促と警告
- 任意の立ち退きを求める
- 強制執行
- 家賃不払いによって立ち退きを拒まれたら速やかに立ち退かせることのみを目的に切り替える
- 家賃滞納者を強制退去させる法的手続きの流れとその注意点
- 退去させた借主への家賃回収は基本難しいこと
- 家賃滞納を防ぐために保証会社をいれること
- 家賃滞納があり督促して払ってもらえなかったら弁護士への依頼を検討すること
- 家賃滞納の立ち退きについてよくある質問
なお、立ち退き交渉のコツと立ち退き料の相場について詳しく知りたい方は、「オーナー必見!築40年アパート立ち退き交渉のコツと立ち退き料相場」をご覧ください。
目次
1.家賃滞納が続く借主は立ち退かせることができる!
結論、家賃滞納が続く借主を立ち退かせることはできます。
ですが、1度滞納しただけでは立ち退かせることはできません。
次の項目であらためて述べますが、目安は3ヶ月連続の滞納が立ち退きを求められる目安とされています。
というのも賃貸借契約という契約を解除するには、賃貸借関係を継続するに堪えない事情が必要とされております。
これを信頼関係破壊の法理といいます。
簡単に言うと、ちょっとした約束違反(債務不履行)で住居を追われるのは適切ではないということです。
以下では、そんな「賃貸借関係を継続するに堪えない事情」に当てはまる具体的なケースを解説します。
1)【基本条件】3ケ月以上の家賃滞納で立ち退きが可能
基本的に立ち退かせることができるのは、家賃滞納が連続して3ケ月以上続いた場合です。
家賃滞納が断続的ではなく、連続することが条件です。
家賃滞納による立ち退きとしては、この条件が原則として必要です。
3ヶ月という期間が目安になっているのは、過去の判例に基づいて実務慣行となった背景があります。
3ヶ月という期間連続して家賃を払わないことで、支払意思がない、違反行為が反復しているから「契約を継続するに堪えられない」と判断されるためです。
では、連続して3ケ月以上の家賃滞納以外の場合はできないのかについても解説します。
2)連続して3ケ月以上の家賃滞納以外|立ち退きできる条件
連続して3ケ月以上の家賃滞納以外の場合であっても、立ち退きさせられる場合があります。
例えば、次のような事案です。
- 家賃滞納が断続的ではあるが、頻度が多い場合(例:6ヶ月間に4回滞納)
- 滞納額が家賃の3ケ月分以上に達した
- 無断で他人に転貸した
- 無断で他人に譲渡した
- 無断で目的外の利用をした
下3つについては、1度の違反で必ず立ち退きさせられるとは限らないものの、無断での譲渡・転貸は、ちょっとした約束違反とはいえません。
ですから、原則として、解除が可能であり、立ち退かせることができます。
2.家賃滞納が発生してから立ち退かせるまでの4ステップ
家賃滞納が発生してから立ち退かせるまでの手続きを解説します。
なお前提として、法的手続きにいくよりも、「任意の明け渡しを求める」方が得策です。
そのつもりで、対処の手順をチェックしてみてください。
1)速やかに督促する
借主に対して速やかに督促をしましょう。
管理会社を通している場合は、管理会社に督促を頼みましょう。
その際、滞納した理由を確認してください。
振込み忘れ、振替忘れといった単純なミスであるのか、払いたくても払えない要因があったのかを知ることが大切です。
もし入居者に、今すぐ支払えない事情がある場合は、その事情を考慮してあげて、話し合いの上で支払い期限を設定するのが一般的です。
2)保証人へ連絡
借主の連帯保証人へ滞納があった旨を連絡してください。
連帯保証人は、借主と全く同じ支払い義務を負っている立場ですから、連帯保証人は家賃を支払う義務があります。
また、これによって連帯保証人から借主に対して厳しく注意してもらえることが予想されます。
連帯保証人に一喝してもらえば、2ヶ月目以降の家賃滞納は生じない可能性も高まります。
早めに連絡しておかないと、連帯保証人からの支払いに支障をきたすので、対応は遅れないようにしましょう。
3)内容証明郵便にて督促と警告
督促しても払われなかったら、内容証明郵便によって督促と警告を発します。
具体的には以下の内容を網羅してください。
- 賃貸借契約を特定する内容(不動産の所在、賃料、支払時期、契約日等)
- 滞納している家賃等金額
- 振込先口座
- 支払期限
- 期限までに支払われない場合
- 法的手段に出ること
- 契約解除となること
家賃滞納発生から2ケ月を目途に内容証明郵便を送ります。
ひな形を以下に示します。
通知書
貴殿は、当方との間において、つぎの賃貸借契約(以下、本契約という。)を締結しておられます。しかし、〇年〇月〇日から〇年〇月〇日まで、合計〇円の家賃が支払われておりません。〇年〇月〇日までに滞納家賃金〇円を指定口座にお振込みください。
期限までにお振込みがない場合は、本通知書をもって本契約を解除します。また、訴訟等の法的手段をとることをご承知おきください。
<振込先>
A銀行B支店 普通〇〇〇〇 甲野一郎
1.物件の表示 東京都〇〇区〇〇1-2-3 〇〇マンション 〇号室
2.月額賃料 金〇円
3.契約日 令和〇年〇月〇日
4)任意の明け渡しか法的手続きかの検討
内容証明郵便に記載した期日までに支払われなかった場合には賃貸借契約を解除し立ち退いてもらいます。
ここで手続きをどうするかが大切です。
先述の通り、法的手続きにいくよりも、「任意の明け渡しを求める」方がオーナーとしては得策です。
法的手続きをとると、訴訟提起から明け渡し完了まで、はやくても4ケ月程度はかかります。
訴訟で争っている間は家賃滞納者が入居し続けている状態で、家賃収入は得られません。
ですから、任意の明け渡しで少しでも早く退去させて次の入居者を入れた方が得なのです。
とはいえ、借主は経済的に相当困窮していると予想されます。
ですから、借主が自主的に出ていってくれるというのは難しいケースも少なくありません。
こうした場合の交渉方法は、次の項目であらためて解説しています。
家賃滞納期間を短くして損失拡大を防ぎましょう。
3.家賃滞納による立ち退きを拒否された場合の対応策
相手と連絡がとれないということも結構ありますが、連絡が取れるものの立ち退きを拒否された場合の対応です。
どうやって速やかに立ち退いてもらうかを目的にしてください。
一時的な収入減少であって、まもなく解消される見込みがある場合などの例外的状況を除いて、このような賃借人がいることは後々紛争にしかなりません。
1)家賃回収を諦めてでも早く立ち退かせる
相手の窮状を理解して、どうやったら立ち退けるかという目線で対応してください。
今までの家賃不払の回収は諦め、「〇月〇日までに退去すれば、不払い分の家賃の支払と免除する」と通知し、退去させてしまうことが効果的です。
加えて、代替不動産の検索、引っ越し代を支払ってあげるなども交渉カードになります。
いわゆる立ち退き料を払ってでも速やかに出て行ってくれるなら、それも一案です。
ここまで譲歩するのは、先述の通り早く出ていってくれた方がオーナー(あなた)にとって得だからです。
訴訟で争っている間は家賃滞納者が入居し続けている状態で、家賃収入は得られません。
ですから、任意の明け渡しで少しでも早く退去させて次の入居者を入れた方が得なのです。
2)生活保護または住宅確保給付金による対応も検討
借主がどうしても払えず、引っ越し先も見つからない場合です。
この場合は強制的に出て行ってもらう手続きを検討します。
他方、家賃が5万円前後であれば、借主に住宅確保給付金または生活保護を申請してもらうということも検討可能です。
生活保護は抵抗を持つ方も多いですが、生活確保給付金であれば抵抗は少ないでしょう。
生活確保給付金を知らない人も多いので知らせてあげましょう。
これが通れば、今後は家賃を行政が支払ってくれるため滞納はおきません。
いずれも家賃に上限があり、場所によって異なりますので、役所に確認してください。
4.家賃滞納者を強制退去させるための法的手続き
任意の退去の見込みが薄い場合は、強制的に退去させる手続きを並行して行います。
1)強制退去させるための法的手続きの流れと費用
強制退去させるための法的手続きの流れ、費用、期間を説明します。
- 建物明渡訴訟を起こす
- ※訴状のひな形、記載例は裁判所ホームページにあります。
- 明け渡しを命じる判決をもらう
- 明け渡しの強制執行を申し立てる
- 明け渡しの催告をする
- 明け渡しを実行するー鍵の交換
- ※必要書類などは裁判所ホームページにあります。
- 残置物の処分
2)注意するべきこと2つのこと
①借主の抵抗が予想されるか
明け渡しを強制的に行うときに、現場に行ったら借主は必要なものだけ持って出ていっていた後であったということも見られますが、抵抗するという方もおられます。
警察を同行するなどの対応策が必要です。
執行官に対して、事前に、借主の状況、抵抗が予想されるかなどを答えましょう。
②鍵の交換を忘れず
強制的に明け渡しをすると同時に、鍵を交換してください。
借主が、鍵を持っていったり、合鍵を作っていたりしたら、再度入室されてしまいます。
なんのために強制執行したのかとなってしまいます。
5.家賃滞納者を退去させたら家賃の回収はできる?
強制的に立ち退かせることになった場合に、借主から滞納家賃を回収することはほぼできません。
払えない、払う気がないという方だからこその強制執行となるからです。
家賃回収のために、借主の銀行口座を差し押さえるなどの強制執行をすることもできますが、時間と費用の無駄になる可能性が高いです。
連帯保証人、家賃保証会社がある場合でなければ、滞納家賃の回収を諦めるというのがもっとも合理的になります。
とはいえ、先にも述べたように家賃滞納者は早く追い出して、その分早く新しい入居者を入れるのがトータルで見れば1番得です。
このように損得の観点で見ても、家賃滞納者1人の処遇に躍起にならない方が良いのです。
6.家賃滞納を防ぐための3つの予防策
今後家賃滞納をどうやって防ぐかということが大切です。
1)家賃保証会社を必須にする
昨今、家賃保証会社が充実していますので、入居者に家賃保証会社と契約することを必須にしましょう。
そうすれば、滞納が発生しても家賃保証会社が代わりに支払ってくれます。
家賃保証会社の保証料は、入居者が払いますから経済的負担もありません。
2)不動産管理会社を入れる
不動産管理会社を入れると、入居者の審査、入居者への家賃滞納などの対応をしてくれます。
煩わしいことをすべてやってくれますからとても助かります。
ですが、注意が必要なのは、不動産管理会社の選び方です。
不動産管理会社は、入居者の対応、リーシングと不動産の投資効率に直接関わります。
多くの不動産管理会社がありますが、相当ずさんな会社も散見されます。
大手ということは一つの安心材料ですが、大手というだけで選ぶのも危険です。
3)家賃滞納リスクを減らす入居審査の強化
入居者の審査を強化することで、問題のある人の入居を防げる可能性が上がります。
具体的な審査方法としては、収入証明と家賃比率の計算(年収÷12×1/3 ≧ 家賃)したり、過去の賃貸トラブル歴の確認したりするのが効果的です。
家賃保証会社を入れたり、不動産管理会社をいれることで、この手間を省くことができます。
7.家賃滞納による立ち退きに強い弁護士にご相談ください
家賃滞納が生じたら弁護士に相談することも検討ください。
最初の督促で支払い見込みが立たないという時点でご相談されるのがいいでしょう。
1)速やかな立ち退きを実現できる
賃貸不動産にとってもっとも重要な投資効率は上げることです。
家賃滞納による明け渡しに強い弁護士に依頼することで、訴状の提出から強制執行まで迅速かつ正確な対応が必要です。
書類に不備があると裁判所から是正が入り訂正する必要があります。
裁判所は提出した日に不備を伝えてくれるほど迅速性はありませんから、不備があればそれだけで時間をロスしてしまいます。
2)裁判外の解決も見込める
任意の立ち退きや滞納家賃の回収が裁判外で解決できる可能性が上がります。
裁判による解決は時間と費用が掛かるためにできれば避けたい解決方法です。
家賃滞納による明け渡しに強い弁護士に依頼することで、借主と冷静に話し合い、あらゆるカードを使いながら適切かつ柔軟な解決を図れます。
裁判外による早期解決こそ理想的な解決です。
3)家賃滞納から明け渡しまでまるっと任せられる
家賃滞納から明け渡しまでの対応はとても手間がかかりますし、家賃滞納する入居者との交渉も大変な作業です。
家賃滞納による明け渡しに強い弁護士に依頼することで、これら一連の流れをまるっと任せることが出来ます。
8.家賃滞納の立ち退きについてよくある質問
家賃滞納の立ち退きについてよくある質問です。
1)滞納者が夜逃げしたらどうなる?
夜逃げされて罪に問えませんかという質問をよく受けます。
お気持ちはよくわかりますが罪には問えません。
あくまで刑事事件ではなく民事事件としての対応が必要です。
また、勝手に荷物を処分してしまうと、逆にこちらが罪に問われてしまいます。
夜逃げが発覚したら、連帯保証人など親族に連絡し、連絡がつかなければ、速やかな法的手続きに入りましょう。
2)家賃滞納者がコロナなどで生活に困窮している場合、立ち退きはさせられる?
立ち退き可能です。
3章でお伝えしましたが、生活確保給付金または生活保護を検討してもらうのも手です。
生活に困窮している人を追い出すのは心が痛いですが、生活困窮者が住んでいるというだけで、大家がその方の援助をしないといけないというのはきわめて不合理です。
それは行政の役目です。
3)テナント(店舗)が家賃滞納している場合は立ち退きさせられる?
立ち退きさせられる条件は個人の入居者でもテナントでも同じです。
ですが、店舗をしている場合は、事業用の物があり引越しにかかる費用が大きくなります。
また、残置物を廃棄する際に、事業活動に伴って生じたものですから、産業廃棄物になり、廃棄費用も大きくなります。
強制的に退去させるコストが相当負担になることが見込まれるため、できる限り自主的に退去してもらえるように交渉した方が望ましいです。
まとめ
家賃滞納の立ち退きについてまとめます。
3ケ月連続した家賃滞納者を強制的に立ち退かせることはできます。
もっとも、強制的に立ち退かせるには、訴訟、強制執行と手間と時間、費用がかかります。
不動産投資をされているオーナーからすると、利回りが最も大切です。
場合によっては引越し費用を払ってでも早く立ち退いてもらう方が得ということもあります。
冷静に分析してください。
家賃滞納が発生し督促で払ってもらえなかった時点で弁護士に相談するのも良い方法です。
弁護士費用を払ったとしても、速やかな解決が出来ればメリットがあるからです。
大切な不動産の投資効率を下げないため、本記事が有用であれば幸いです。