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迷惑クレーマーを退去させる方法!3つの手順と注意点を弁護士が解説

クレームばかりいってくる入居者の対応はとてもとても大変ですよね。
この記事では、大家さんの大変な苦労、クレーマー入居者のストレスから解放するためにどうすればいいのかを解説します。

【この記事でわかること】

  • クレーマーを退去させるためにすることはつぎの3つのこと
    • 証拠を集める
    • 不動産管理会社と連携とる
    • 弁護士に相談する
  • クレーマーはそのクレームの程度がひどいと退去させることができること
  • クレーマー入居者を放置する3つのデメリット
    • 大きなトラブルに発展する
    • 他の入居者が退去してしまう
    • 物件の評判が悪くなる
  • クレーマー入居者の任意退去を促す交渉術
  • クレーマー対応でやってはいけないことは
    • 事実確認をせず迷惑クレーマーと決めつけること
    • 感情的に対応すること
    • 自力救済で解決しようとすること
  • クレーマー入居者を強制退去させる法的手続きの流れ
  • つらいクレーマー対応に強い味方の弁護士

家賃滞納、騒音トラブル、ゴミなどの迷惑入居者の退去について詳しく知りたい方は、「迷惑入居者を追い出したい!5つの事例別に退去のさせ方と条件を解説」をご覧ください。

目次

1.クレーマーを退去させるために、まずするべき3つのこと

前提として、クレーマーを退去させたくても、いきなり強制退去させることはできません。
まずは、強制退去に値するほどのクレームだという証拠を集め、必要に応じて不動産管理会社や弁護士と連携しながら、クレーマーを退去させる準備をします。

1)記録を集める

強制退去に値するほどのクレームであるという証拠を集めます。
録音、録画、写真といった証拠が価値が高いですが、メモであっても証拠となります。
次のようなものが証拠です。

  • 日時・内容・言動の詳細なメモ(いつ、誰が、何を、どうしたか)
  • 録音・録画・写真
  • 他の入居者からの報告書

クレームの証拠は、話し合いで解決できず、裁判手続きとなる場合に特に重要となります。

2)不動産管理会社と連携をとる

不動産管理会社にもクレーマーの迷惑行為の記録が残っている可能性がありますので、不動産管理会社と連携をとることは大切です。
「どういう迷惑行為があるのか」を時系列で共有してもらえます。
不動産管理が、これまでにどのようなクレームに対して、どのように対応してきたのか、履歴(注意したことがあるか? 何回くらいか?)を確認します。
また、他の住人からクレーマーに対する苦情が来ているかなども確認してください。

3)弁護士に相談する

次章で詳しく説明しますが、クレーマーとの契約を解除に持ち込めるのかは難しい判断となります。
弁護士は、契約書・証拠・経緯を見て、「このまま行けそうか、まだ積み上げが必要か」の判断をしてくれます。
もう少し具体的に言うと、クレーマーの行為が「契約違反」であるか、その程度、「正当事由」にどれほど考慮されるかをチェックします。
退去させる交渉、交渉で解決しなかったときの強制退去手続きでもとても頼りになるので、早めに相談しておくことをおすすめします。

2.クレーマーを強制退去させられる条件

では、どのような時にクレーマーを強制退去させることができるのかというと、クレームに対して注意しても改善されないということが何度か続いた場合です。
どれくらいの回数注意が必要であるかは、クレームが重大であればあるほど、少なくて済みます。
どういう理屈であるかを解説します。
契約は違反があれば解除することができるのが原則で、これを債務不履行による解除といいます(民法第541条)。
ですが、賃貸借契約については、信頼関係が破壊される程度の契約違反でないと解除できないというのが判例です。
つまり、強制退去させるためには、契約違反の程度が著しく酷い必要があります。
このような条件を満たすと判断できる程度のクレームとは次のようなものです。

1)具体例①:大家や管理会社宛のクレーム

迷惑クレーマーの1つのめのパターンは、大家や管理会社あてに過剰なクレームを入れてくるパターンです。
このタイプで退去に値する程度のクレーマーというと、以下のような条件を満たす場合です。

  • 大した内容ではないことでクレームを入れてくる
    • …例えば「階段のきしむ音が不快」「隣人が郵便ポストを開ける音が気になる」など
  • 数日に1回以上のペースで頻繁にクレームを入れてくる
    • 時には深夜・早朝や、1回で数時間、同じ内容を延々と繰り返す
  • 大家の家や事務所に来て、インターホン連打・大声で文句
  • 「すぐ直せ」「1週間以内にやれ」と一方的な期限を設ける

このような条件を満たしていれば、強制退去させることができるでしょう。

2)具体例②:他の住人宛のクレーム

次に、他の住民に対して過剰なクレームを入れるタイプのクレーマーです。
こちらも大枠としては同じで、(ⅰ)要求する内容が過剰(ⅱ)要求の仕方が過激(ⅲ)頻度が過剰ならアウトと考えて良いでしょう。
例えば、以下のようなケースです。

  • 通常の生活音に対して「騒音だ」とクレーム
  • 深夜早朝など、非常識な時間に訪問
  • 他人の部屋の前にゴミを放置、張り紙、壁ドン
  • 何度注意しても改善しない

なお、契約違反の程度が著しく酷いといえない場合においては、賃貸借契約を更新しない理由である「正当事由」の一要素となります。

3.クレーマー入居者を放置する3つのデメリット

クレーマー入居者を放置していると、さらなるトラブルに発展、退去が増える、評判が悪くなりリーシングに苦戦するなどして、物件価値が下がってしまいます。

1)入居者どうしでさらに大きなトラブルに発展する

他の入居者が、クレーマーに耐えきれずに、やむなく報復するなどして、トラブルがさらに大きくなります。
報復に発展すると報復は連鎖してしまうため、問題はさらに大きくなります。
また、そこから別のトラブルに発展してしまいます。
さらに大変な対応を迫られることになります。

2)他の入居者が退去してしまう

他の入居者が、クレーマーに耐えきれずに、退去してしまいます。
さらに、退去理由がクレーマーの迷惑行為であり、大家への管理責任が問われかねません。
そうすると、退去に伴う引っ越し費用などを請求されてしまうことになります。
退去するだけでなく、費用負担までということになりかねません。
「あの人がいるなら住みたくない」とファミリー層・女性層が特に敏感ですので、注意してください。

3)物件の「評判」が悪くなる

近隣住民や仲介業者の間で「あの物件トラブルあるらしいよ」と噂になったり、Google口コミなどのSNSで悪評を書かれる可能性があります。
そのような物件は避けられてしまいますし、不動産仲介業者も進めることは出来なくなります。
そうすると、空室が埋まりにくくなってしまいます。
入居者が引っ越してしまうことになると、入居率が下がり賃料収入が減少しますので、ぜひ避けたいところです。

4.クレーマー入居者の「任意退去」を促す交渉術

まずは「穏便な解決」である、クレーマー自ら転居してもらうことを目指します。
クレーマーが、自分の考え通りになるのは難しいと考えてもらい、次の物件に移動しようと思わせます。
「引っ越し費用が捻出できない」などと言われたら、引っ越し費用を出してあげるのも手です。
クレーマーですから、引っ越し費用だけならずさらなる費用を請求してくるかもしれません。
次に、クレーマーというその人を非難するのではなく、クレームという行為を是正するように注意します。
まずは、口頭での注意が穏当でしょう。
止まない場合は、書面によって警告を発し、クレーム行為が継続すると、賃貸借契約を終了させて退去してもらわざる得ないということを伝えます。

警告書

〇〇様

平素より大変お世話になっております。

さて、これまで度々ご連絡させていただいております〇〇に関する件について、現在も貴殿による〇〇(具体的な迷惑行為、例:過度な要求、頻繁な連絡など)が継続しており、周辺住民の皆様および弊社の業務に多大な支障をきたしております。

貴殿の行為は、賃貸借契約書第〇条(契約書の該当条項、例:善管注意義務、迷惑行為の禁止など)に明確に違反しており、このまま改善が見られない場合、契約解除の対象となる可能性がございます。

つきましては、本書面到達後〇日以内に、貴殿の〇〇(具体的な迷惑行為)を直ちに中止し、今後一切行わないよう強く警告いたします。

上記期間内に改善が見られない場合、誠に不本意ではございますが、貴殿との賃貸借契約の解除、損害賠償請求、および法的措置を含む厳正な対応を検討せざるを得ませんので、予めご承知おきください。

ご理解とご協力をお願い申し上げます。

令和〇年〇月〇日

【賃貸人情報】 氏名または法人名:〇〇 住所:〇〇 連絡先:〇〇

このような警告書を送付しても、なおも止まない場合は、いよいよ法的手続きを検討します。

5.クレーマーを退去させる時にやってはいけないこと

クレーマー対応で絶対やってはいけないことは、相手をクレーマー扱いすること、感情的に対応すること、自力救済で解決しようとすることです。

1)事実確認をせず、「迷惑クレーマー」だと決めつける

クレーマーを迷惑クレーマーと決めつけてはいけません。
クレーマーは、自分のことをクレーマーだと思っていない方がほとんどです。
むしろ自分は周りより優れていて、社会を是正する正義の味方だと思っています。
コロナ中に出たマスク警察などと同じです。
社会正義でやっていると勘違いして、自分はむしろ社会に必要だと勘違いしている人たちです。
だからこそのクレーマーなんですが、そんな人にあなたは迷惑クレーマーだというと、自分が否定されたことに逆上します。
クレーム行為をさらに助長してしまいます。

2)退去交渉で感情的になる

クレーマーとは上記のような人です。
そんな人に感情的に対応すると、相手はとてつもない反発を起こします。
感情のぶつけ合いは何も生みません。

3)「自力救済」で解決しようとする

クレーマーが大迷惑でも、強制退去させるには法的手続きに則って進めなくてはいけません。
法的な手続きを経ずに、大家が実力行使で追い出したり締め出したりする行為は「自力救済(じりききゅうさい)」と言われ、違法行為にあたります。
ですから、絶対にやってはいけません。
具体的には、次の行為です。

  • ドアを封鎖・施錠し、帰れなくさせる
  • 鍵を勝手に交換する
  • 部屋に勝手に侵入し、荷物を外に出す・捨てる
  • 電気・水道・ガスなどを止める
  • 脅し・威圧で退去を強要する

これらの行為をすると、逆に相手から損害賠償を請求されるリスクがあり、場合によっては、住居侵入罪や器物損壊罪などに問われることもあり得ます。
このように良いことがないので、絶対にやめてください。
これらは違法行為ですから、逆に相手から損害賠償請求を受けてしまいます。
必ず適法に手続きを進める必要があります。

6.クレーマー入居者を「強制退去」させる法的手続き

クレーマーを強制退去させるためには、そこに住むことが出来る根拠となる賃貸借契約を終了させる必要があります。
クレームが賃貸借契約に定めた義務に反するから賃貸借契約を終了させるということです。
ですが、2章で解説した通り、賃貸借契約のような継続的な契約の場合は、単なる義務違反にとどまらず、重大な契約違反であることが必要です(信頼関係破壊の法理)。
これを裁判所に認めてもらう必要があります。
強制退去させる具体的な手順は次の通りです。

  1. 警告・注意の積み重ねと証拠収集
  2. 契約解除通知(内容証明郵便)
  3. 建物明渡請求訴訟の提起
  4. 判決確定
  5. 強制執行の申立て
  6. 明け渡し断行(執行官による強制的な退去)

なお、強制退去の費用や期間についてもっと詳しく知りたい方は、「強制退去・立ち退き強制執行の方法と流れ!条件や期間も弁護士が解説」をご覧ください。

7.つらいクレーマー対応に強い味方の弁護士

度を超えたクレームを言ってくる人と話し合うというのはとても大変です。
また、強制退去させるとなると、法的手続きといった専門的な対応が必要な上に、クレーマーがさらなるクレームをつけて来る可能性が高いです。
こんな時は、強い味方となる弁護士に相談して依頼することを検討ください。
弁護士に依頼すると、弁護士がクレーマーと直接コンタクトをとってくれるため、大家さんがクレーマーと直接コンタクトをとる必要がなくなります。
これだけでもかなり助かりますが、交渉から強制退去の手続きまで、任せることが出来るので安心です。
大家さんが、クレーマーと同じアパートに住んでいる場合などは、とてもとても辛い状況になります。
出来る限り早い弁護士への依頼が、大家さん、近隣住民の平穏を早く取り戻す近道となるでしょう。

まとめ

クレーマーを退去させる方法をまとめます。
賃貸物件の悪質なクレーマーへの対応は、オーナーにとって大きな負担です。
いきなり強制退去はできないため、まずは準備と法的手続きが必要です。
まず、すべきことは、クレームの日時、内容、言動を詳細に記録(録音・録画、メモなど)し、証拠を集めることです。
不動産管理会社と連携し、これまでの対応履歴や他の入居者からの苦情も確認しましょう。
そして、早めに弁護士に相談し、クレーマーの行為が法的な契約違反に当たるか、強制退去が可能かどうかの判断を仰ぐことが重要です。
クレーマーを強制退去させられる条件は、注意しても改善が見られない重大な契約違反が何度も続いた場合です。
例えば、大したことない内容で頻繁にクレームを入れる、深夜早朝の迷惑行為、他の入居者への過剰なクレームなどが該当します。
これらの行為が賃貸借契約における「信頼関係の破壊」と認められるレベルに達している必要があります。
クレーマーを放置すると、他の入居者とのトラブル激化、退去者の増加、物件の評判悪化(空室増加)といった深刻なデメリットが生じます。
対応で最も重要な注意点は、「自力救済」を絶対に行わないことです。
鍵の交換、荷物の撤去、電気・ガス・水道の停止、脅しなどは違法行為であり、逆にオーナーが罪に問われるリスクがあります。
また、クレーマーと感情的に対応することも避け、あくまで冷静に事実に基づいて対処しましょう。
最終的にクレーマーを強制退去させるには、証拠収集、契約解除通知、明け渡し訴訟、判決、そして強制執行という法的手続きを踏む必要があります。
これらの手続きは複雑で精神的負担も大きいため、弁護士に依頼することを強くおすすめします。弁護士が直接交渉や法的手続きを代行することで、オーナーはストレスから解放され、問題の早期解決が期待できます

監修者

飛渡 貴之

資格:弁護士/司法書士、土地家屋調査士有資格
所属:弁護士法人キャストグローバル

〒105-0001 東京都港区虎ノ門3丁目4-10 虎ノ門35森ビル1階
相談受付:03-6273-7758
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