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 借主様向け 不動産トラブルお役立ちコラム
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大家からの退去命令が来たらいつまで住める? 猶予期間と対応を解説

突然大家から退去を求められてお困りではないでしょうか。
退去しなければならないのか、退去までにどれだけ時間があるのか、立ち退き料は出るのかといった不安が押し寄せます。
結論、退去までのリミットは、基本的には通知から6ヶ月以上先の「契約終了日」。あなたが重大な違反行為をして契約解除される場合は大家から退去の連絡を受けて1ヶ月程度です。
ですが、場合によっては退去命令に対して抗議できる場合もありますし、大家さんとの交渉によって退去時期を遅らせられる可能性もあります。
そこで本記事では大家から退去命令があった場合の退去期限や立ち退き料相場、さらに退去期間を延ばす交渉術まで、具体的に分かりやすく解説します。
【この記事でわかること】

  • 退去命令を受けた場合の退去までの期間は、重大な契約違反をした場合は1ヶ月程度、そうでない場合は賃貸借契約の終了日までであること
  • そもそも大家からの退去命令に正当性がないことが多いこと
  • 退去命令を受けた場合は理由を確認すること
  • 理由に正当性がなければ立ち退き料をもらって立ち退くこともありうる
  • 退去期間は自主的に出て行くことで伸ばせる可能性があること
  • 退去に伴う費用は仲介手数料、敷金礼金、原状回復費用、引越し費用であること
  • 弁護士に任せることで交渉ストレスを回避しつつ退去しなくて済む可能性があること

なお、大家都合での退去する際の立ち退き料の相場を詳しく知りたい方は、「大家都合で退去する際の立ち退き料の相場は?交渉のコツを弁護士解説」をご覧ください。

目次

1.大家から退去命令を受けた場合の退去までの期間

結論、大家から退去をしてほしいと連絡を受けた場合にいつまでに退去しなければならないのかは次の2パターンのいずれかです。

状況 退去までの期間
あなたが重大な契約違反をしていない場合 契約終了日までに退去
あなたが重大な契約違反をしている場合 大家から退去の連絡を受けて1ヶ月程度

どちらのパターンに該当するかは、ご覧のとおり「あなたが重大な契約違反をしているか」どうかによります。
それぞれのケースについて、詳しく説明します。

1)【パターン①】通知から6ヶ月以上先の「契約終了日」

1つ目は、シンプルにもともとの契約に沿って、契約終了日までに退去しなければならないパターンです。
契約終了日が退去日であるということは、契約期間をもって賃貸借契約を終了させるということです。
この場合は、大家は契約を更新せず終了させる旨の通知を契約期間満了の6ヶ月前までに通知しなければなりません(借地借家法26条1項)。
ですから、通知を受け取ってから実際に退去するまで6ヶ月程度の猶予があるはずです。
ただし、通知がきてから気付かずに放置していた可能性もあるので、大家からの通知がいつ到着したのか、そして契約終了日はいつなのかを必ずご確認ください。
なお、大家から一方的に賃貸借契約を終了させることができるのかということは、2章で解説します。

2)【パターン②】連絡を受けて1ヶ月程度

あなたが重大な契約違反をしている場合は、大家から退去の連絡を受けて1ヶ月程度と、速やかに退去しなければなりません。
連絡を受けて速やかに退去しなければならない場合は、賃貸借契約を直ちに解除された場合です。
賃貸借契約等で定めた義務に反することなどがあったため賃貸借契約を解除するということです。
契約に反する”重大な”違反行為とは、具体的に以下のようなものがあります。

  • 家賃を3ヶ月連続で滞納した
  • 無断で増改築をした
  • 無断で他人に貸した
  • 他の入居者への迷惑行為を何度もした

2.そもそも大家からの退去命令は正当なのか

ひとまず、”最悪いつまでに退去しなければならないか”確認できたかと思います。
ここであわせて、そもそも退去しなければならないのか、退去命令の正当性もチェックしてしていただきたく思います。
原則として、大家から一方的に退去を命令することはできません。
ですが、退去を命令できる場合があります。
その条件を詳しく述べていきます。

1)退去を命令できるような場合

退去を命令できる場合は、賃貸借契約を解除するような事情があった場合、賃貸借契約を更新しないことに正当な理由があった場合です。
では、具体的にどのような場合に退去しなければならないのかを解説します。

2)賃貸借契約を解除するような事情がある

最も考えられるのは、あなたが重大な契約違反をした場合です。
重大な契約違反をすることがあれば賃貸借契約を解除されてしまいます。
契約違反は法律上では債務不履行といい、債務不履行があれば契約解除をすることができます(民法541条)。
ですが、賃貸借契約は継続的な契約であるため、単に契約違反をしただけではなく、契約違反によって信頼関係が破壊されることが必要です(信頼関係破壊の法理)。
信頼関係が破壊される程度の「重大な」契約違反をした場合です。
重大な契約違反とは次のような場合です。

  • 家賃を3ヶ月連続で滞納した
  • 無断で増改築をした
  • 無断で他人に貸した
  • 他の入居者への迷惑行為を何度もした

これらの場合は、賃貸借契約を解除され、速やかに退去しなければならないことになります。

3)賃貸借契約を更新しない正当事由がある

賃貸借契約を更新しない正当事由がある場合は、賃貸借契約終了時点で退去しなければなりません。
正当事由とは、大家さんが退去(立ち退き)を求める際に必要となる法的な正当な理由のことです。
ですが、正当事由には厳しい条件があるので、大家側に正当事由があるのか確認が必要です。
そもそも正当事由が必要な理由を解説します。
賃貸借契約は、継続的な契約で借りた建物を自宅に利用するなど容易に退去できないため、借地借家法で借主を保護しています(借地借家法28条)。
大家側の建物を使う理由、借主の建物を使う理由、立ち退き料などを総合的に判断して退去させることに正当な理由があると認められなければなりません。
例えば、退去命令が認められる正当事由の具体例は次の通りです。

  • 老朽化・耐震不足で倒壊の危険が現実的にある場合
  • 大家自身がここ以外に住む家がなくない場合
  • 相応の立ち退き料をはらう場合

逆に、正当事由がなくて退去命令が認められない具体例は次のとおりです。

  • 建物を魅力的にするために立て替えたい
  • 建物を取り壊して更地で売却したい
  • 大家がほかに住む家があるがここに住みたい

正当事由は専門的かつ具体的に総合考慮する必要があります。
かなり判断が難しいものになります。
なお、正当事由についてもっと詳しく知りたい方は、「立ち退きの正当事由とは?貸主からの解約の判例と借地借家法から見る」をご覧ください。

3.退去命令を受けた場合の対応方法

大家から突然出て行ってくれと退去を求められた場合に、まず確認することはどういう理由で出て行ってくれと言っているかです。
重大な契約違反があって直ちに出て行ってくれといわれているのか、賃貸借契約終了時点で更新しないから出て行ってくれといわれているのかです。

1)賃貸借契約を終了する時点での退去命令をされた場合

賃貸借契約を期間満了で終了するという場合は、正当事由があるのかを確認してください。
大家さんは老朽化のため建て替えるという理由をよく使います。
ですが、もう今にも倒壊しそうな程度の老朽化であるならともかく、築40年を超えた、旧耐震であるといった程度では正当事由は認めらえません。
大家が老朽化と主張していても多くの場合は正当事由は認められないでしょう。
大家にはあなたの都合であって正当事由がありませんと伝えましょう。
出て行ってもよいかなとお考えの場合は、最大限の立ち退き料もらうという方針転換もありです。

2)重大な契約違反が原因で退去命令がでたあるからすぐに出ていってくれという場合

重大な契約違反があるから出て行ってくれという場合は、あなたに重大な契約違反があったのかを確認してください。
3ケ月以上の家賃滞納、無断での転貸・譲渡、無断での増改築をしている場合は、重大な契約違反があると認められる可能性が高いです。
この場合は出ていくことを前提にして、もっともメリットがある出ていき方を検討しましょう。
そうでない場合は、重大な契約違反とはいえないという反論を大家にしましょう。
通知の内容や経緯をよく確認し、納得できない点がある場合は、弁護士など専門家に相談することをおすすめします。
なお、あなたの行いが退去を命じられるほどの重大な違反にあたるか、詳しくは以下の記事でご確認ください。
退去させられる迷惑行為とは具体的にどんなもの?」(大家側目線の記事になりますが、参考になるかと思います)

4.大家都合の退去なら立ち退き料がもらえる!

賃貸借契約を更新しないから退去してほしいといわれた場合に、その理由が大家都合であった場合は、原則として立ち退き料をもらうことができます。
この場合は、先ほど解説した正当事由があったとしても、大家は立ち退き料を支払うことで補完する必要があります。
つまり、あなた(入居者側)の違反などでない限り、立ち退き料はもらえるということです。
ですから、大家さんに立ち退き料を請求しましょう。
状況にもよりますが、ざっくり月の賃料の8ケ月分の立ち退き料をもらえる可能性があります。
ですから、大家都合であれば、正当事由が足りないので立ち退き料を払わないといけないことをしっかりと大家に伝えましょう。
大家都合での退去する際の立ち退き料の相場を詳しく知りたい方は、「大家都合で退去する際の立ち退き料の相場は?交渉のコツを弁護士解説」をご覧ください。

大家さんが立ち退き料を払ってくれない場合の対応について詳しく知りたい方は、「大家が立ち退き料を払ってくれない!3つの対処法を弁護士が解説」をご覧ください。

5.退去の期間を延ばすためのテクニック

突然出て行ってくれといわれた際に、これまで解説した通り、まずはそもそも出ていかなくてはならないのかを確認しください。
次に出ていくとしたら、出ていくまでの期間はなるべく遅らせたいところでしょう。
大家があなたを無理やり出ていかすためには、訴訟をして強制執行をしなければなりません。
これには弁護士費用などの費用と訴訟などの時間がかかってしまいます。
ですから、大家としては、あなたに自主的に出て行ってほしいと考えています。
そうだとすれば、自主的に出ていくので期間はいつにしてほしいという交渉が可能です。
他方で、期間ではなくてお金に変える方法もあります。
つまり、早く出ていくから立ち退き料を増額してほしいと交渉するんです。

6. 大家からの退去命令を拒否するとどうなる?

大家からの退去命令を拒否した場合、大家との交渉で退去命令を撤回させるか、それが無理なら裁判になるとお考えください。
大家がどうして出て行ってほしいかの理由によっては諦めるという選択もあります。
ですが、どうしても出て行ってもらいたいという理由であれば訴訟手続きをしてくるでしょう。
訴訟手続きに入った場合は、重大な契約違反があったのか、正当事由があるのかを判断することになります。
判断は裁判所に委ねられることになりますが、あなたも弁護士に依頼するなどで費用を使うことになりますし、裁判での自分の言い分を伝えるのにかなりの労力と時間を使うことになります。
あなたが絶対に出ていきたくないというのでなければ、最大限の立ち退き料をもらって出ていくのが賢明です。

7.【退去準備】立ち退きに伴う費用の具体的な金額と節約法

立ち退くことになった場合に、かかる費用は主に次のものです。

  • 新居の仲介手数料
  • 新居の敷金・礼金
  • 新居の保険
  • 引っ越し費用
  • 原状回復費用

仲介手数料、敷金、礼金は、新賃料の1ケ月分が相場です。
敷金、礼金がない物件を探すと節約することができます。
引っ越し費用は、4月~5月の繫忙期を外すだけで安くなります。
原状回復費用は減額可能です。
原状回復の範囲は、あなたの故意過失で損耗した部分のみであるところ、大家は経年劣化などの損耗まで回復しようとする場合があります。
原状回復費用の項目をみて、あなたの故意過失で損耗した部分であるかを確認ください。
原状回復費用の減額について詳しく知りたい方は、「大家都合の退去の原状回復費用はどうなる?免除にする交渉方法を解説」をご覧ください。

8. 大家からの退去命令を受けた場合|弁護士に相談するメリット

大家から強制退去をいわれた場合に、弁護士に相談・依頼するというのも一つです。
これまで解説した専門的な話をご自身で対応するのは難しいと思います。
これらの対応を弁護士にまるっと任せることが可能です。
特に絶対出ていきたくない、立ち退き料を最大化したいという場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
ご自身で対応が難しい法律的な判断を不動産に強い弁護士なら任せることができます。
また、とてもストレスがかかる大家との交渉を任せることができます。
そして、立ち退き料を増額するという金銭面でも強力なあなたのサポーターとなるでしょう。

まとめ

大家から退去命令を受けた場合の対応をまとめます。
大家さんから突然「退去してほしい」と言われたら不安になりますよね。まず確認すべきは、退去を求められる「理由」と「いつまでに出る必要があるか」です。

退去までの期間は、家賃滞納などあなたが「重大な契約違反」をした場合は通知から1ヶ月程度ですが、違反がない場合は賃貸借契約の期間満了までとなり、通常は期間満了の6ヶ月以上前に通知されるため猶予があります。

大家さんは原則、正当な理由なく一方的に退去させることはできません。法的に認められるのは、あなたの重大な契約違反か、大家さん側の「正当な事由」がある場合です。「正当事由」は建物の老朽化など限定的で、「建て替えたい」といった大家さんの都合だけでは認められにくいです。

あなたに落ち度がなく大家さんの都合で退去を求められた場合、引っ越し費用などを補償する「立ち退き料」を請求できる可能性が高いです。立ち退き料や退去時期について大家さんと交渉することも重要です。

命令が不当だと感じる場合や交渉が難しい場合は、弁護士など専門家に相談することで、適切な対応や有利な解決を目指せます。一人で悩まず、冷静に状況を把握し行動することが大切です。

監修者

飛渡 貴之

資格:弁護士/司法書士、土地家屋調査士有資格
所属:弁護士法人キャストグローバル

〒105-0001 東京都港区虎ノ門3丁目4-10 虎ノ門35森ビル1階
相談受付:03-6273-7758
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