有名中華料理店の運営会社の社長と役員が不法就労助長罪で逮捕された件が大きく報道されました。
この件は、首都圏に20店舗を構える有名飲食店が摘発された点で注目されていますが、それよりも注目すべき点があります。
それは、技術・人文知識・国際業務の在留資格を有する外国人従業員による違法な資格外活動が摘発されたという点です。
「技術・人文知識・国際業務」は留学生が大学等を卒業後に取得する代表的な在留資格です。2019年12月の法務省の統計によれば、在留外国人約293万人中の約27万人がこの技術・人文知識・国際業務の在留資格で滞在しているとのことです。
技術・人文知識・国際業務の在留資格は、他の就労系在留資格と同様、就労できる業務内容が限定されます。機械工学等の技術者,通訳,デザイナー,私企業の語学教師などが認められますが(法務省ウェブサイト参照)、どのような業務も可能というわけではなく、例えば単純作業をさせることは認められないのです。
そして、そのような認められない業務をさせた場合、違法な資格外活動をさせたということになり、不法就労助長となる可能性があります。
今回の事件は、まさにこの違法な資格外活動をさせていたことから不法就労助長で摘発がなされました。接客業務をさせていたことが問題視されたようです。
不法就労助長罪の摘発事例は、一昔前までは、オーバーステイ等そもそも在留資格がない外国人を雇用した場合が多数でした。そのようなケースでは、無許可・無届けの風俗店など、営業そのものが違法であることも少なくありませんでした。誰がどう見ても悪質なケースが摘発の中心だったのです。
ところが、その傾向がここ数年で変わりつつあり、当該外国人が在留資格を保有しているものの、法で認められた範囲外の活動を行ったケース(違法な資格外活動のケース)でも摘発されることが増えてきました。飲食店など、外国人の在留資格の問題を除き、営業そのものが法的に問題のない場合でも摘発がされるようになりました。
今回の事件もまさにその流れの一環といえるでしょう。
今回の事件と同様に、技術・人文知識・国際業務の在留資格を有する外国人従業員に単純作業をさせている事例は、現実には少なくないと言われています。経営者の中には、技術・人文知識・国際業務の在留資格を単なる「外国人を働かせるための資格」ととらえ、この在留資格さえ取得させれば何をさせても良いと誤解している人もいるようです。
今回の事件は、そのような経営者に対して警鐘を鳴らしたと言ってよいでしょう。
今回のような有名な飲食店でも摘発され、しかも経営者が逮捕までされたということはインパクトが大きいと思います。
心当たりのある経営者の方は、今すぐ見直す必要があります。