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大家が立ち退き料を払ってくれない!3つの対処法を弁護士が解説
突然、大家さんから立ち退いてほしいと言われた。
立ち退き料は払わないとのこと、どうして?、もらえないの?っと疑問をお持ちでないでしょうか。
立ち退くのであれば、せめて引越し費用はもらいたいですよね。
結論、ほとんどの場合、立ち退き料はもらえます。
また、立ち退き料がもらえるとして、いくらもらえるの?という疑問がおわりではないでしょうか。
賃貸アパートの場合は60万円~100万円程度、賃貸戸建ての場合は80万円~150万円が相場ですが、あくまで目安であり、あなたの状況、大家さんの状況によって異なります。
そこで本記事では、立ち退き料がもらえる場合、もらえない場合を解説し、もらえる場合であれば、立ち退き料の相場、立ち退き料の算定方法、どうやったら立ち退き料を増やすことができるのかなどを解説します。
【この記事でわかること】
- 立ち退き料はもらえること
- どうして払わない大家がいるのかというと
- 立ち退き料を払わないといけないことを知らない
- 立ち退き料がなくても正当事由があると考えている
- あなたに契約違反があると考えていて、賃貸借契約を解除できると考えている
- 立ち退き料がもらえるケースは再開発などがあること
- 立ち退き料がもらえる場合の内訳は、引越し費用+仲介手数料等+家賃増加分等であること
- 立ち退き料がもらえないケースは、定期賃貸借契約などの場合
- 大家が立ち退き料を払ってくれない時は、3つの対処があること
- 大家と立ち退き料を交渉する際の5つのコツ
- 大家との交渉で絶対にやってはいけない2つのこと
- 立ち退き交渉を弁護士に依頼する4つのメリットと1つのデメリット
- 立ち退き料は立ち退いた後に受け取ること
なお、その他のケースの立ち退き料については、「立ち退き料の相場は?7つのケース毎にいくらもらえるか・内訳を解説」をご覧ください。
目次
1.【結論】大家から立ち退き料は基本もらえる!
まず結論として、一般的に立ち退き料はもらえます。
絶対もらえるというわけではありませんが、なぜもらえるのかを説明します。
家やマンションを借りる際には、賃貸借契約を締結します。
大家はその賃貸借契約を終了させて出て行って欲しいといっているのですが、大家が出て行けと言ったら出て行かないといけないとなると、借主に著しく不利です。
そこで、借地借家法28条が、借主を保護しており、正当事由がないと借主を出て行かすことができないよう定めているのです。
この正当事由があると認められるためには、あなたの事情、大家の事情などに加えて、財産上の給付(立ち退き料)が必要です。
ただし、定期賃貸借契約を締結している場合はこれに当たりません。
定期=期間を定めて借りているため、その期間が過ぎれば出て行かなければならないからです。
1)どうして払わない大家がいるのか
では、なぜ立ち退き料を払わない大家がいるのでしょうか。
以下のパターンが考えられます。
①立ち退き料を払わないといけないことを知らない
大家が個人で大家業をされている場合は、法律に詳しくないため、知らないということがあります。
②立ち退き料を払わないといけないことを知っているが、払いたくない
立ち退き料を払わないといけないとわかっていても、払いたくないと考え、払わずに立ち退いてもらおうと考えているのでしょう。
③立ち退き料がなくても正当事由があると考えている
大家の事情が強く、あなたの事情が弱い場合に、あまりないケースですが、立ち退き料がなくても正当事由があるといえる場合があります。
そのケースにあたると大家が考えているのでしょう。
④あなたに契約違反があると考えていて、賃貸借契約を解除できると考えている
あなたに契約違反があり、かつ、大家との信頼関係を破壊する程度のものと認められる場合は、賃貸借契約を解除できます。
ちょっとした契約違反でなく、重大な契約違反がこれに当たります。
例えば、3か月間賃料を払っていないなどです。
2)大家から立ち退き料がもらえるケース
では、どのような場合に立ち退き料がもらえるのでしょうか。
・建て替えて高い賃料をとれる物件にしたい
・新しい賃貸人に変えて賃料を上げたい
・身内にその不動産を使わせたい
などの場合です。
①立ち退き料がもらえる場合の内訳
では、立ち退き料がもらえるとして、その内訳はといいますと、
- 引越し費用+仲介手数料等+家賃増加分等
となります。
アップル引越しセンターなどの引越し業者に払う費用です。
引っ越し時期、荷物の量によって価格は変わります。
・仲介手数料等
次の物件を借りるにあたって必要な費用で、敷金礼金、保証料(家賃保証会社への支払い)、不動産業者に支払う仲介手数料です。
・家賃増加分等
同等の物件を新しく賃貸する場合は、一般的に、現在の賃料よりも高くなります。
その増加する家賃2年分が補填されます。
②立ち退き料がもらえる場合の相場
用途 | 立ち退き料の相場 | |
---|---|---|
住宅 | 賃貸アパート | 60万円~100万円程度:家賃の8ケ月分 |
賃貸戸建て | 80万円~150万円:家賃の8ケ月分 |
※賃貸アパート家賃は月額10万円、賃貸戸建て家賃は月額15万円として。
賃貸アパート・マンションの立ち退き料の相場は、ざっくり100万円(家賃の8ケ月分)です。
賃貸戸建ての立ち退き料の相場は、150万円(家賃の8ケ月分)です。
3)大家から立ち退き料がもらえないケース
一般的に立ち退き料がもらえるとして、もらえない場合を解説します。
①重大な契約違反がある場合
重大な契約違反があると信頼関係が破壊されたとして賃貸借契約を解除されてしまいます。
立ち退き料は賃貸借契約を終了させるためにもらうものですから、重大な契約違反によって契約が終了してしまう場合は、立ち退き料がもらえません。
重大な契約違反がある場合とは、
・3ヶ月連続して賃料を滞納する
・定期的に賃料を滞納している
・大家に無断で増改築をした
・住居用として借りているのに民泊として利用している
・夜間、早朝に大音量で音楽をかけるなどの著しい迷惑行為がある
などの場合です。
このような場合は、立ち退き料がもらえません。
②大家の事情が強く、あなたの事情が弱い場合
大家さんの住むところがない、大家さんの子どもなどが住むところがないなど大家さんが住居として利用する必要があるなどの事情がある。
これに加えて、あなたが別のところに住んでいて、この不動産は他人に貸しているなどあなたがここに住む必要がない場合です。
このような場合は、立ち退き料を払うことなく、正当事由があると認められる場合があります。
③定期賃貸借契約を締結している場合
定期賃貸借契約とは、定期=期間を定めた契約ということです。
ですから、その期間がくると賃貸借契約が終了することになります。
契約を終了させるために立ち退き料を払う必要がないということです。
ですが、定期賃貸借契約として有効でないという場合があるため、注意が必要です。
定期賃貸借を有効に締結するには、書面ですること、期間の満了により終了することを記載した書面を交付して説明しなければなりません(借地借家法38条)。
不動産会社を仲介に入れていない場合など、これらを守っていないというケースが稀にあります。
その場合は、定期ではない普通の賃貸借契約になりますから、立ち退き料がもらえることになります。
2.大家が立ち退き料を払ってくれないときの3つの対処法
では、大家が立ち退き料を払ってくれない場合はどのようにすればいいのでしょうか。
以下の3つの手順で進めてください。
1)立ち退き料がもらえるケースであることを確認
まずは、立ち退き料がもらえないケースに当たらないことを確認してください。
立ち退き料がもらえないケースについては、1.2)で解説しました。もらえないケースに当たらない場合は、基本的には立ち退き料がもらえることになります。
もらえるケースに該当するなら、次のステップです。
2)大家さんと交渉する
まずはあなたから大家に立ち退き料を払うよう交渉しましょう。
立ち退き料を払わないと賃貸借契約を終了させることができないことを伝えましょう。
大家が立ち退き料を払わなくていいと勘違いしている場合は、大家が考えを改めてくれるかもしれません。
払わないといけないことをわかっている大家であっても、あなたが立ち退き料なしで出て行かないとわかり、考えを改めるかもしれません。
この交渉におけるコツは3章で解説します。
3)それでも払わないというなら弁護士に相談する
あなた自身で交渉してみても大家が全く考えを改めない場合は、それ以上ご自身で交渉しないほうがいいでしょう。
正反対の意見がぶつかり合ったとしても、平行線のままですから、大家との関係が悪化することになるだけです。
この場合は、不動産と交渉の専門である弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士に相談するメリットは、6章で解説します。
3.大家と立ち退き料の交渉をする際の5つのコツ
大家と立ち退き料の交渉をするには、以下の5つのコツがありますので、実践してみてください。
【5つのコツ】
- 立ち退き料を払ってくれない理由を確認する
- 立ち退き料をもらう正当性を主張する
- 具体的な金額と内訳を提示する
- 妥協案を提示する
- 交渉内容はすべてテキストに残す
これらのコツを実践することで、大家が立ち退き料を払ってくれる可能性が上がります。
1)立ち退き料を払ってくれない理由を確認する
まずは、大家の言い分を聞いてみましょう。
大家がどうして立ち退き料は必要ないと思っているのか理由を聞いてください。
その理由が立ち退き料がもらえない場合にあたるのかを確認です。
立ち退き料を払う必要がないと勘違いしているかもしれません。
また、あなたが実は重大な契約違反をしていると思われているかもしれません。
このように、大家の言い分に耳を傾けてみることで、何を論点にして交渉すればいいかが見えてきます。
2)立ち退き料をもらう正当性を主張する
賃貸借契約を終了させるさせるには正当事由が必要であり、立ち退き料なくして正当事由がないということを伝えてください。
大家さんの言い分は分かりますが、その事情では立ち退き料を払わないと、正当事由に当たらないと伝えます。
「借地借家法28条により、立ち退き料が必要ですよ」という伝え方でもいいでしょう。
大家はそうなのかもしれないと思い弁護士に相談するなどして、考えを改めるかもしれません。
3)具体的な金額と内訳を提示する
あなたが立ち退くための費用を計算し伝えましょう。
大家に対して、引っ越し費用、新居の契約費用、家賃の差額などの具体的な金額を示します。
【例:内訳と金額】
内訳 | 必要な金額 |
---|---|
引越し費用 | 10万円:家族3人の場合 |
新居の契約費用 | 40万円:月額賃料3ヶ月分 |
家賃の差額 | 24万円:賃料差額の2年分 |
あなたにこれだけの経済的負担があることを明確にするのです。
これまで説明した通り立ち退き料は必要です。
加えて、そもそもこれだけの費用が掛かるため、その費用をもらえないと立ち退きようがないということを伝えましょう。
4)妥協案を提示する
大家が立ち退き料が必要なことを理解してくれた場合は、その金額と支払い方法が問題となります。
できる限り金額は減らしたくないと思います。
そこで、支払い方法から妥協案を提示しましょう。
分割払いで払ってもらう、来月から賃料をなしにしてもらうなどの妥協案を提示してください。
速やかに立ち退き、立ち退くまでの期間を短くすることも提案してください。
支払い方法でダメな場合は、立ち退き料の金額を下げることになります。
金額を下げるかどうかは難しい判断となりそうですから、専門の弁護士に相談してからの方が良いのではないでしょうか。
5)交渉内容はすべてテキストに残す
大家との交渉はすべて記録してください。
できる限り電子メールなどでやり取りするのが望ましいでしょう。
ですが、交渉の初めは電話や面談などテキストメッセージのみのやり取りはあまりよくありません。
テキストだと感情が互いに伝わりにくく、不必要に悪い印象を与えかねません。
そこで、面談など口頭で話したことについても、録音をしておく、メモをとっておくなどしてテキストに残してください。
立ち退き料の代わりに賃料を免除するなどの話になったならば、契約書を交わしておくべきですが、どうしてもできない場合はメール等で必ず証拠を残しましょう!
後で言った言わないとなったときに、不利益を被るのはこちらです。
5.大家との交渉で絶対にやってはいけない2つのこと
交渉において絶対にやってはいけないことをお伝えします。
1)感情的になる
交渉の初めは電話、面談がいいと申し上げましたが、その際に腹が立つこともあると思います。
ですが、絶対に感情的になってはいけません。
感情的になると冷静な判断が出来なくなりますし、相手に著しいネガティブ印象を与えます。
これによって、結果的に、交渉の主導権を失ってしまいます。
ですが、上手くバランスの取れた感情を表すことは、相手に本気度を示すことができるというメリットもあります。
ですが、これは意図的に感情を込めるという意味で冷静さを失って感情的になるわけではありません。
2)家賃の支払いを止めるなど
交渉が上手くいかなかったから相手が嫌がることをしようとして、家賃の支払いを止めるなどの契約違反をしては絶対にいけません。
あなたにメリットはなに一つありません。
最悪、重大な契約違反と評価されて、立ち退き料を受け取ることなく、賃貸借契約を解除されてしまいます。
そこまで重大な契約違反と評価されなくても、正当事由の判断において、こちらにマイナスの評価を与え、結果、立ち退き料が減ってしまうことになります。
6.立ち退き交渉は弁護士に依頼するのもおすすめ!
大家がなかなかわかってくれない、話が通じないなどだけにとどまらず、交渉に気乗りしないなどないでしょうか。
この様な時には不動産に強い弁護士に依頼するのもおすすめです。
1)弁護士に依頼する4つのメリット
弁護士に依頼するメリットは4つあります。
①立ち退き料がもらえる
一番のメリットはこれです。
物わかりの悪い大家で立ち退き料は払わない、払う必要がないといって、取り付く島もない場合があります。
弁護士に依頼することで、立ち退き料の必要性をしっかり伝え、大家の考えが変わる可能性が高いです。
仮に変わらなくても調停・訴訟といった手段もとることが出来ます。
②立ち退き料が増額できる
立ち退き料を払うと言ったが金額があわないということもあります。
貸主は強い正当事由があることを主張して、できるだけ立ち退き料が安くなる主張をしてきます。
不動産の立ち退きに強い弁護士なら、正当事由に対する適切な反論が可能です。
正当事由に対する適切な反論をすることで、立ち退き料を増額することが出来ます。
③面倒な交渉を丸投げできる
弁護士に依頼すると、立ち退き料を払ってもらう交渉だけでなく、立ち退き料の増額、そして、立ち退くまで一連の面倒なやりとりをすべて丸投げできます。
例えば、立ち退きに関する合意書の作成、立ち退き時期の調整、立ち退き料の額、その受け取り方法、敷金、保証金の返還、原状回復までです。
それらをすべて弁護士に任せられるため、楽だしとても安心です。
④交渉のストレスから解放される
自分のことに関する交渉をするというのは、めちゃくちゃストレスがかかります。
不動産に強い弁護士に依頼することで、交渉を丸投げすることができ、ストレスから解放されます。
弁護士であっても、自分のことの交渉は弁護士に依頼することが多いです。
ストレスからの解放は、めちゃくちゃ大切です。
2)弁護士に依頼するデメリット
デメリットもあり、それは弁護士費用です。
受け取った立ち退き料に対して、弁護士費用がかかります。
ですが、弁護士費用は増額した分に対してかかることになるため、手取り額は増えることになります。
弁護士によって異なるので、十分相談して納得して依頼ください。
7.立ち退き料を受け取るまでの流れ
立ち退き料を受け取るまでの流れは次の通りです。
一般的に、立ち退き料は立ち退いた後に支払われます。
また、お金をもらっているため、税金がかかる可能性があります。
立ち退きに係る経費の方が、受け取る立ち退き料よりも多額になることが多いため、税金をチェックしてください。
個々異なるために、税理士さんにご相談ください。
税金が掛からないとしても、申告が必要な場合もあります。
まとめ
ここまで解説してきた大家が立ち退き料を払わない時の対処法などをまとめます。
基本的に立ち退き料はもらえます。
ですが、定期賃貸借契約を締結している場合など立ち退き料がもらえない場合があります。
大家が立ち退き料を払う気がない時は、交渉しましょう。
大家が立ち退き料を払ってくれる気になったら、次は立ち退き料の増額を狙いましょう。
大家が立ち退き料を払ってくれないとき、払ってくれるが額に納得がいかないとき、交渉が大変だなと思ったときなど不動産に強い弁護士に依頼するのもおすすめです。
立ち退き料を受け取るのは立ち退いた後になります。
立ち退き料を受け取ったら、税金にもチェックが必要です。
大家が立ち退き料を払うように交渉して、納得のいく立ち退き料を受け取り、気持ちよく新天地で過ごしてください。