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マンション建て替えで立ち退き料はもらえる?分譲・賃貸に分けて解説

築40年を超えるマンションに住んでいて老朽化に不安をもっていたところ、マンション管理組合において、建て替えの話が出た。
旧耐震など不安な点もあるところ、どうするのがいいのかを迷い、立ち退き料の額によっては転居でも良いかなとお思いではないでしょうか。
結論をいうと、分譲マンション建て替えでは一般的な意味での「立ち退き料」はもらえません。
ですが、実質的にお住いのマンションの売却額が立ち退き料になります。
一方の賃貸マンション建て替えに関しては、大家さんから立退料がもらえるケースが多いです。
なお、分譲マンションの場合は、建て替えに賛成するか反対するか、という意思決定をしなければなりません。
その際に「立ち退き料(=入ってくるお金)」だけでなく、あなたが支払う費用も考慮する必要があるでしょう。
そこで本記事では、マンションの建て替えの立ち退き料を分譲・賃貸に分けて解説するとともに、建て替えで動く「お金」の全体像を解説します。
立ち退き料を増額して多くもらう方法も述べているので、ぜひ参考にしてください。

【この記事でわかること】

  • マンションの建て替えには、分譲、賃貸の2パターンがあること
  • 分譲マンション建て替えには立ち退き料がもらえないこと
    • ただし、マンション売却が立ち退き料といえること
    • 売却は、建て替えが具体化しているかで価格に影響すること
  • 分譲マンションの建て替えには区分所有者が負担する金額は1,000万円~2,000万円ほどになるケースが多いこと
  • 賃貸マンションの建て替えでは立ち退き料がもらえ、内訳は内訳は、引越し費用、仲介手数料等、家賃増加分等であること
  • 賃貸マンション建て替えの立ち退き料には増額の3つのコツがあること
    • 頑なに立ち退きを拒否しない
    • いつまでに立ち退いて欲しいか確認する
    • 賃貸借契約の禁止事項にふれない
  • 弁護士を活用すると立ち退き料が増額でき、交渉のストレスから解除されること
  • 弁護士を活用すると弁護士費用がかかるというデメリットがあること

なお、立ち退き料の相場について詳しく知りたい方は、「立ち退き料の相場は?7つのケース毎にいくらもらえるか・内訳を解説」もご覧ください。

目次

1.マンション建て替え時の立ち退きとは?

マンションは築45年ほどを目安に建て替えが検討されることが多いです。
躯体や設備の老朽化、現在の水準とかけ離れたスペックであること(社会的な老朽化)や耐震不足が主な原因です。
マンションの建て替えと一口に言っても、以下の2パターンで状況は異なります。
【マンション建て替えの2つのパターン】

  1. 分譲マンション(購入した)の建て替え
  2. 賃貸マンション(借りている)の建て替え

また、分譲マンションの場合はさらに、すでにマンション管理組合で可決され、具体的に建て替えが進んでいるのか、これから建て替えの議論をするのかでも状況は異なります。
いずれにしても、建て替えるためには、住んでいる人全員が一旦出て行って、取り壊す必要があります。
「立ち退き料」の話に入る前に、2つのパターンと建て替えのシチュエーションをまず把握しておきましょう。
その後、それぞれのパターンごとに「立ち退き料」について解説しますので、当てはまるパターンの方をチェックしてみてください。

1)分譲マンションの立ち退き

分譲マンションの建て替えは、所有者たちで構成する管理組合があり、その組合の中で建て替えの話が持ち上がって進められます。
建て替えの決議要件は、所有者の5分の4以上の賛成が必要(ただし、旧耐震マンションの建て替えは4分の3等法改正による決議要件の緩和が予定されています。)であり、いずれであっても可決するには高いハードルがあります。
また、建て替えを進めることじたいは大半が一致していたとしても、建て替えに必要となるコストが問題となります。
マンションを取り壊しマンションを再建築するわけですから、その費用はかなり高額になります。
その費用は、所有者でコストを分担して建て替えることになります。
状況によっては、デベロッパーに参加してもらって、デベロッパーや新所有者にもコストを負担してもらうことが出来る場合があります。
このような場合は建て替えがすんなり進みやすいです。

→分譲マンションの立ち退き料はこちら

2)賃貸マンションの立ち退き

マンションに賃借人としてお住まいの場合、建て替えを理由に大家さんから立ち退きを要求されることになります。
こちらは、いわゆる一般的な立ち退きです。
この場合の立ち退き料は、老朽化の程度によって額の大きさは変わってきますが、もらえるケースが多いです。

→賃貸マンションの立ち退き料はこちら

2.分譲マンションの建て替えにおける立ち退き料と相場は?

分譲マンションの建て替えの場合、そこに住んでいる所有者は、「立ち退き料」はもらえません。
自分の分譲マンションを建て替えるための立ち退きですから、立ち退くことが当たり前なので、立ち退き料はもらえないことになります。
ただ、マンションを売却すれば、その売却額を移転費用に充てることができます。
分譲マンションの売却する場合は、これを立ち退き料と表現することがあり、立ち退き料に相当するお金は分譲マンションの売却額となります。
建て替えに賛成して建て替え後のマンションに住む場合は、立ち退いて仮住まいで竣工まで待ち、建て替え完成後に自分に割り当てられた居宅部分に転居します。

1)分譲マンションの売却額(立ち退き料)の相場

売却額は市場価格(時価)となるため、個々により違いすぎるため、一概に相場を述べるのは難しいですが、一例を挙げてみましょう。
先の話を整理すると、マンションの建て替えに賛成した場合は立ち退き料はなく、反対した場合は、マンションを売却することになるので、その売却楽が実質的な立ち退き料になります。
その上で、売却のタイミングにも2つの種類があり、それぞれ売却額(立ち退き料)が異なります。

  • 建て替えの話が具体化する前に売る場合
  • 建て替えの話が具体化した後で売る場合

①建て替えの話が具体化する前に売る場合

建て替えの話が持ち上がったばかりで、まだ具体的なことが決まっていない段階で売却する場合は、単純に今現在のマンションの時価で売却額が決められます。
もちろん具体的な金額はマンションごとに全く異なります。
目安となる金額は、近隣の地域で、同じような条件(面積・築年数など)で物件が売りに出されている金額と近くなるはずです。
ですが、建て替えの話が出ているわけですから、建て替えするかもしれないことが額に影響します。
どう影響するのかということが、個々の事情によって全く異なるため、一般的な説明が困難です。

②建て替えの話が具体化した後で売る場合

建て替えの話が具体化した後でマンションを売る場合の金額は、建て替え後にできる新築マンションの建物および敷地利用権の価格から、建て替えに必要な経費を差し引いた金額になるのが一般的です。
これまたマンションの状態や取り壊し費用、マンションの価格などによって金額はまちまちですが、目安としては、建て替え経費の割合は約25%とされています
例えば、建て替え後のマンションが5000万円で売りに出されるとしたら、以下のようになります。

  • 5000万円(新築の売り値)ー1250万円(建て替え経費25%)=3750万円

ただし、これはあくまで目安なので、正確な金額を把握するには、不動産会社、マンションの管理組合に尋ねる必要があります。
次のような東京高裁の判決によっても確認できます。
要は、得られる建物の価格から必要な費用を引くということをいっています。

建替えが完成した場合における再建建物および敷地利用権の価値から建替えに要する費用を控除した額と再建建物の敷地とすることを予定した敷地の更地k額から既存建物を取壊し費用を控除した額をそれぞれ相当な方法で算出し、比較考量し、個別事情を加味して総合的に考慮するのが相当(東京高裁平成16年7月14日)

2)売却額(実質的な立ち退き料)の増額はできる?

増額とは、マンションを高く売るということになります。
その物件を欲しくてほしくてたまらない人がいればより高く売れるということになります。
そのため高く売るには、優良顧客を多く抱えて情報を持っている不動産仲介会社に相談するのが良い方法です。

3.実際どうなる?分譲マンションの建て替えにおける「費用」と「流れ」

分譲マンションの立ち退き料については解説しましたが、それだけではイマイチ「お金がどうなるのか」わかりにくいかと思います。
具体的なイメージを持つには、立ち退き料(=入ってくるお金)だけでなく、費用(出ていくお金も含めて)、スケジュールの全体で把握することが大切です。
マンションの建て替えの話が出たときに、あなたがとれる立場は、以下の3パターンに分かれ、必要な費用などお金の流れは次のとおり。

パターン 得られる金銭(立ち退き料) 必要な費用
①マンション建て替えに賛成し、建て替え後のマンションを取得する なし
±0円
転居費用
仮住まい費用
自己負担分の建て替え費用
②マンション建て替えに反対し、立ち退く 売却額(マンションの時価)
売渡請求により、マンションを売却
転居費用
③建て替え決議の前にマンションを売却する 売却額(マンションの時価) 転居費用
仲介手数料

このパターン②、③における売却額が、「立ち退き料」に相当するものとして考えられます。

1)分譲マンション建て替えに賛成した場合の費用

区分所有者が負担する金額は1,000万円~2,000万円ほどになるケースが多いです。

内訳は、以下のようになります。

【分譲マンション建て替え費用の内訳】

  1. 引っ越し費用(2回分)
  2. 仮住まいの家賃(2年分〜3年分が目安)
  3. 建て替え費用の自己負担金

転居費用は仮住まいに転居して建て替え後戻ってくる2回の引っ越し費用です。
家族4名で8万円~20万円を2回となります。
仮住まいは、建替工期2年間別の賃貸マンションに住むとすると、月賃料10万円であれば、その24ケ月分で、240万円です。
これに加えて、仲介手数料、敷金礼金、保証費用で40万円(それぞれ1ケ月分の賃料)です。
以上は一般的な移転費用ですが、分譲マンション建て替えの場合、それとは別に大きな出費になってしまうのが、建て替えにかかる費用です。

  • 調査設計費
  • 地盤整備費
  • 補償金
  • 工事費
  • 営繕費
  • 事務費
  • 借入金利子
  • その他

マンション1棟を取り壊して建て替える費用ですから、かなりの高額になります。
これを全所有者で按分して負担することになります。
マンション規模によって全く異なりますが、概ね一人あたりの負担が数百万〜1000万円程度になると考えておいてよいでしょう。
ただし、修繕積立金、補助金、保留床処分金などが入ってくるため、全部を負担しないといけないかどうかは個々の事情で全く異なります。

2)分譲マンション建て替えに反対して立ち退く場合の費用

管理組合等から売渡請求権を受けて、マンションを時価で売り渡して出ていくことになります。
新しいマンションを借りるか買うかすることになり、家族4名で8万円~20万円の引っ越し費用がかかります。

3)分譲マンション建て替え前にマンションを売却した場合の費用

この場合も上記と同じであり、家族4名で8万円~20万円の引っ越し費用が掛かります。
これに加えて、勝ってもらう人を自力で探すことは難しいと思いますし、より高く買ってくれる人を探すためにも、不動産売買仲介会社に依頼することになるでしょう。
そうすると、不動産売買仲介手数料が必要です。
仲介手数料は宅建業法で定められており、以下のとおりです。

取引物件価格(税抜) 仲介手数料の上限
400万円超 取引物件価格(税抜)×3%+6万円+消費税
200万円超~400万円以下 取引物件価格(税抜)×4%+2万円+消費税
200万円以下 取引物件価格(税抜)×5%+消費税

4)分譲マンション建て替え決議の全体的な流れ

建て替え決議までの流れは、以下の図とおりです。

建て替えを必要とする理由などを添えて建て替え決議集会の招集します。
建て替え決議をする日の1ケ月前までに、建て替えについての説明会を開催する。
建て替え決議をする。
所有者の5分の4以上の賛成で可決されます。
反対した人、2ケ月以内に回答をしなかった人は、売渡請求権の行使対象となります。

4.賃貸マンションの建て替えにおける立ち退き料とは

マンションに賃借人としてお住まいの場合、建て替えを理由に大家さんから立ち退きを要求されることになります。
多くの場合は立ち退き料をもらうことが出来ます。
建て替えとはいえ、突然立ち退いてほしいと言われても困りますよね。
借地借家法28条が賃借人の保護をしており、「正当事由」がない限り立ち退きが認められません。
大家さんの事情、あなたの事情、財産上の給付(立ち退き料)を考慮して、正当事由があるか判断されます。
建て替えなえれば人命にかかわる程度の老朽化が進んでいるということでない限り、立ち退き料の支払いなくして、正当事由があると認められません。
立ち退き料の内訳は、引越し費用、仲介手数料等、家賃増加分等となります。

①引越し費用

アップル引越しセンターなどの引越し業者に払う費用です。
引っ越し時期、荷物の量によって価格は変わります。

②仲介手数料等

次の物件を借りるにあたって必要な費用で、敷金礼金、保証料(家賃保証会社への支払い)、不動産業者に支払う仲介手数料です。
それぞれ相場は引っ越し先の物件の家賃1ケ月分です。

③家賃増加分等

同等の物件を新しく賃貸する場合は、一般的に、現在の賃料よりも高くなります。
その増加する家賃2年分が補填されます。
計算式は、(新家賃-現家賃)×24ケ月です。

1)賃貸マンション建て替えの立ち退き料の相場

建て替えにおける賃貸アパート・マンションの立ち退き料の相場は、ざっくり100万円(家賃の8ケ月分)です。

  • 引越し費用:家族3人で8万円~20万円
  • 仲介手数料等:40万円程度
    • 敷金、礼金、保証料、仲介手数料(それぞれ家賃1ケ月分)
  • 家賃増加分等:24万円
    • (11万円新家賃-10万円現家賃)×24ケ月

これらに加えて、借家権の価格(ある種の迷惑料・慰謝料)も加わり、100万円というイメージです。

2)賃貸マンション建て替えの立ち退き料は増額できる?

賃貸マンションの建て替え(取り壊し)の場合は、いわゆる「相場」とされる立ち退き料より増額できる可能性があります。
増額のポイントとしては、以下の2点が挙げられます。

  1. 増額交渉のコツをおさえて交渉を持ちかけてみる
  2. 弁護士を活用し、交渉を任せる

それぞれ解説していきます。

①増額交渉の3つのコツ

・頑なに立ち退きを拒否しない
頑なに拒否をすると裁判になることになり、話し合いに比べて立ち退き料が下がってしまうかもしれません。
・いつまでに立ち退いて欲しいか確認する
立ち退きのスケジュールを確認してください。
期日を超えそうになると裁判になって、立ち退き料が下がってしまうかもしれません。
・賃貸借契約の禁止事項にふれない
交渉で腹が立ったからと家賃を止めるなどしてはいけません。
契約違反で立ち退き料を受け取ることなく追い出されてしまいます。

②弁護士を活用するメリット

立ち退き交渉に不安がある方は弁護士を活用することを検討ください。
弁護士を活用することで以下のメリットがあります。
・立ち退き料が増額できる場合がある
大家さんの正当事由が小さいほど立ち退き料が大きくなります。
弁護士に依頼すると、抜けなく有利な事情を主張し、不利な事情をより小さいものと主張できます。
・交渉のストレスから解放
自分に関する交渉のストレスは大変大きいものになります。
胃が痛くなり夜も寝れないという方もたくさんおられます。
弁護士に依頼すると、あなたに代わって交渉しますので、このストレスから解放されます。

③デメリットは弁護士費用がかかること

弁護士費用がかかることが、デメリットです。
ですが、弁護士費用は増額分から頂きますので、手取りの額が増額します。
ストレスから解放され手取りも増やすことが出来ます。

3)【補足解説】賃貸マンションの建て替えで立ち退きを拒否したらどうなる?

賃貸マンション建て替えにおける立ち退きを拒否した場合、大家さんは立ち退くように裁判に出ることになります。
管理組合で立ち退きが具体的に検討され、立ち退きを可決した状況で考えます。
裁判所は、建物の建て替えが必要であり、大家さんがこの建物を使用する理由があるとして、正当事由が強いと判断されてしまう可能性があります。
そうすると、立ち退き料がより少ない額になってしまう可能性があります。
立ち退きの話が出たら、速やかに弁護士に相談頂き、どう対応するのが適切であるかのアドバイスを受けてください。

まとめ

これまで解説してきたマンション建て替えの立ち退き料の相場、内訳、増額アップのコツをまとめます。

マンションの建て替えにおいて、
・分譲マンション(購入した)の建て替え
・賃貸マンション(借りている)の建て替え
により状況は異なる。
さらに、建て替えがどこまで具体化しているのかによっても、状況が異なります。
分譲マンションの場合は立ち退き料はもらえないが、マンションを売却して出ていくことでお金を得ることができる。
マンションの売却額は時価であり、その額は近隣の条件の同じマンションを参考にできる。
建て替えの話が具体化した後でマンションを売る場合の金額は、建て替え後にできる新築マンションの建物および敷地利用権の価格から、建て替えに必要な経費を差し引いた金額になるのが一般的であるす。
建て替えには費用が掛かるところ、得られる金銭と費用は次のとおり。

パターン 得られる金銭(立ち退き料) 必要な費用
①マンション建て替えに賛成し、建て替え後のマンションを取得する なし
±0円
転居費用
仮住まい費用
自己負担分の建て替え費用
②マンション建て替えに反対し、立ち退く 売却額(マンションの時価)
売渡請求により、マンションを売却。
転居費用
③建て替え決議の前にマンションを売却する 売却額(マンションの時価) 転居費用
仲介手数料

賃貸マンションの場合は、一般的な立ち退きと同じで、立ち退き料がもらえる。

その相場は、賃貸アパート・マンションの立ち退き料の相場は、ざっくり100万円(家賃の8ケ月分)
さらに、増額アップも可能であり、弁護士を活用して増額できる。
ぜひ、将来のライフプランを検討して、よりよい選択をしてください!

監修者

飛渡 貴之

資格:弁護士/司法書士、土地家屋調査士有資格
所属:弁護士法人キャストグローバル

〒105-0001 東京都港区虎ノ門3丁目4-10 虎ノ門35森ビル1階
相談受付:03-6273-7758
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