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賃貸アパートの老朽化で取り壊しする場合の立ち退き料相場を解説!

はじめに

アパートが老朽化したため立て直す必要があり立ち退いてほしいという連絡がきた。
老朽化で建て替えるということはわかるが、立ち退き料はもらえないのか疑問をおもちではないでしょうか。
結論、立ち退き料をもらうことができるでしょう。
本記事では、アパート老朽化でも立ち退き料がもらえること、その相場などを解説します。
【この記事でわかること】

  • アパート老朽化でも立ち退き料はもらえること
  • 老朽化でも立ち退き料なしに正当事由があるといえないこと
  • アパート老朽化での立ち退き料相場は月賃料8ケ月分であること
  • 立ち退き料を貰うには交渉が大切なこと
  • 立ち退き料を多くもらう3つのコツ
    • いつまでに立ち退いてほしいのか
    • 具体的な内訳と金額の提示
    • 交渉を記録に残す
  • 立ち退き料を受け取るまでの流れ
  • 立ち退き交渉を弁護士に依頼するのがおすすめ

なお、大家都合で退去させる際の立ち退き料の相場を詳しく知りたい方は、「大家都合で退去する際の立ち退き料の相場は?交渉のコツを弁護士解説」をご覧ください。

目次

1.【結論】アパートの老朽化による取り壊しで立ち退き料はもらえる!

結論、原則として立ち退き料をもらうことができます。
アパートは木造が多く、築40年ごろをすぎてくると、安全性に問題が出てくるという理由で「老朽化したので立て替える」と大家から言われることが多くみられます。
確かに安全性の面から取り壊しが必要なのであれば、立ち退くのも仕方がないように思われるかもしれません。
しかし、引っ越しを余儀なくされる以上、引っ越し費用などの負担はしてもらえるのが一般的です。

1)そもそも立ち退き料とは?

立ち退き料とは、貸主から支払われる、「引っ越しや新生活のための補償金」です。
日本では借地借家法という法律によって、大家都合で引っ越しを余儀なくされる借主を保護しています。
この「保護」の措置として、財産上の給付である立ち退き料が支払われるのです。
そして、原則として、この財産上の給付である立ち退き料を払わなければ、正当事由があると認められず契約を終了することができません。
したがって、立ち退き料はもらえるというのが原則です。
この正当事由についてもう少し解説します。

2)「老朽化で取り壊し」は正当事由になる?

正当事由とは、平たく言うと、賃貸借契約を終了することが仕方ないなといえる事情をいいます。
これは、大家とあなたの様々な事情を考慮しますが、主に以下のような判断要素があります。

判断要素 具体例な内容
建物の使用を必要とする事情 貸主、借主が、その建物を使う必要性の程度
建物の賃貸借に関する従前の経過 賃貸借契約の期間、賃料、その他費用、更新回数など
建物の利用状況 居住用、事業用、大家業などどのように利用されているか
建物の現況 築年数、老朽の程度、構造などの建物の状況
立ち退き料 貸主が立ち退きの際に申し出る立ち退き料の額、代替不動産の提供

これらの判断要素において、その事情であれば賃貸借契約を終了しても仕方ないといえるのであれば、正当事由があると判断するのに強い事情といえます。
老朽化によって取り壊さなければいけない」という事情は、強い正当事由ではあります。
ですが、あなたは転居により費用がかかることは確かですから、その補填としての立ち退き料はもらえます。
要するに、大家側に強い正当事由があったとしても、原則として財産上の給付(立ち退き料)は得られるということです。

2.アパート老朽化で取り壊すケースでの立ち退き料相場

基本的にはアパートの老朽化により取り壊すといったケースにおいても、立ち退き料はもらえます。
そして、全体としてその相場は、月額家賃の8ケ月分です。
ですが、これはあくまで目安であって、個々の事情によって大きく異なります。
立ち退き料が安くなる事情としては、あなたがこの不動産に20年など長期間住んでいる場合です。
また、短期間しか住んでいなくても、老朽化で近く取り壊す前提で家賃を安くして入居させてもらった場合です。
対して立ち退き料が高くなる事情としては、子どもの学区を変わらず転居する同等の不動産がない、家賃を定期的に上げていて周辺相場とそん色ない金額を払っている、病気の家族と同居しており転居に大きな負担がかかるなどです。
これら様々な事情が要素となります。
それでは、立ち退き料は具体的にどのような内訳となっているのかを解説します。

3.アパート取り壊しの立ち退き料の内訳

立ち退き料の内訳は、次の3つがあります。

【立ち退き料の内訳】

  • 引越し費用
  • 仲介手数料等
  • 家賃増加分等

内訳を把握することで、あなたのケースにおける適正な立ち退き料が計算しやすくなりますから、ぜひチェックしてみてください。
これら一つ一つを解説します。

1)引っ越し費用

引越し業者に支払う費用です。
費用は、業者によって異なりますが、一般的に4月から6月上旬が高くなっております。
賃貸借契約が継続するのであれば引っ越しは必要ありませんから、追加でかかる負担部分は払いましょうということです。

2)仲介手数料等

不動産仲介業者に支払う仲介手数料、敷金礼金、保証料などです。
これらの相場は、新規家賃の1ケ月分が相場です。
これも立ち退かないのであればかからない費用です。

3)家賃増加分等

新規で同等の物件を賃貸する場合に増加する家賃の補填です。
一般的に、新規で同等の物件を借りると、現在の賃料よりも高くなります。
その増加する家賃2年分が補填されます。

(新家賃-現家賃)×24ケ月です。

例えば、新家賃20万円、旧家賃15万円の場合、120万円({20万-15万}×24)となります。
また、これに加えて、ある種の迷惑料・慰謝料も加わります。
2年分の家賃増加分に+αというイメージです。

4.【例外】立ち退き料がもらえないかもしれないケース

これまで述べてきた通り、アパート老朽化で立て替える場合、立ち退き料はもらえるのが基本です。
しかし「100%立ち退き料がもらえる」とは言い切れず、例外として以下の条件を満たすようなケースでは、立ち退き料がもらえない場合もあります。

  • 老朽化が著しく、比較的軽めの地震でさえも倒壊の危険がある
  • 近く取り壊される可能性を承知で入居した
  • または、そのアパートに長期間住んでいる(20年ほどが目安)

いうなれば相当ボロボロのアパートという場合です。
とはいえ、あくまで例外ですので、基本的に立ち退き料がもらえるという前提は変わりません。

5.アパート取り壊しでの立ち退きでは「交渉」が大事!

立ち退きを求められた場合は、大家との「交渉」が大事になります。
アパートの老朽化による取り壊しが理由の場合、立ち退きの拒否は難しいため、「立ち退き料を多くもらう」ことにフォーカスすると良いです。
アパートの老朽化を理由に取り壊しが決まった場合、法的には「正当事由がある」と認められるケースが多く、借主が退去を拒み続けるのは現実的には難しいのが実情です。
つまり、取り壊しが決定している以上、遅かれ早かれ退去せざるを得ない可能性が高いということです。
だからこそ重要になるのが、立ち退き料を納得のいく金額にするための「交渉」です。
引っ越し費用や新居の初期費用はもちろん、生活の変化による不便も考慮して、貸主に十分な補償を求めましょう。
3章で述べた相場はあくまで相場であり、交渉で立ち退き料を多くもらうことは可能です。
交渉次第で金額が増える可能性は十分にあるため、ここでは立ち退き料を最大化するための交渉のコツを解説します。

6.立ち退き料を多くもらうための交渉の3つのコツ

立ち退き料を多くもらうためには、相手の財布事情を検討しつつ相手の利益を考えることです。

1)いつまでに立ち退いて欲しいか確認する

大家は、入居者をゼロにして再開発業者に売却する、建て替えて利回りを上げるなど計画があります。
大家にとっては、その期日が大切です。
その期日を超えると立ち退き自体が不要になるという事もあります。
その計画になるべく沿うように、急いで立ち退くので、立ち退き料を上げてほしいと交渉します。

2)具体的な内訳をこちらから提示する

3章で解説した内訳に沿って、どういった理由でどれくらいの金額が必要かこちらから提示します。
相手の立場や個人か法人かによっても異なりますが、とりあえず上げてほしいというのでは相手が決済を取れません。
大家に対して、引っ越し費用、新居の契約費用、家賃の差額などの具体的な金額を示します。
例えば、以下のような提示ができるでしょう。

【例:内訳と金額】

内訳 必要な金額
引越し費用 10万円:家族3人の場合
新居の契約費用 40万円:月額賃料3ヶ月分
家賃の差額 24万円:賃料差額の2年分

あなたにこれだけの経済的負担があることを明確にするのです。
これまで説明した通り立ち退き料は必要です。
加えて、そもそもこれだけの費用が掛かるため、その費用をもらえないと立ち退きようがないということを伝えましょう。
相手の立場、状況を考慮して、相手が立ち退き料を上げられるようなトスをすることです。

3)交渉内容はすべてテキストや録音で残す

相手との交渉はできる限り記録しましょう。
言った言わないの話になるのは互いに不毛な議論です。
また、相手やこちらも変遷があるとおもいますし、そこからどのように考えが変わったのかも読み解くことができます。

7.立ち退き料をもらうまでの流れ

交渉で立ち退き料が合意できれば一つのヤマは越えました。
ですが、安心して口頭で合意したままにするなどはとても危険です。
実際に受け取るまでの流れを次の通りです。

  1. 立ち退き料を含めた退去に関する合意を締結し書面化する
  2. 実際に立ち退く
  3. 立ち退き料を受け取る

立ち退き料を受け取るのは、立ち退いた後になります。
引っ越し費用などがねん出できない場合は、引っ越し費用などを先に受け取るということは可能でしょう。
ですが、まとまった立ち退き料を受け取るのは、立ち退いた後になることが多いです。

8.立ち退き交渉は弁護士に依頼するのもおすすめ!

アパートを取り壊すからと立ち退きを求められた場合に自分で交渉するというのも一つですが、弁護士に依頼することを検討ください。
弁護士は、専門家としてあなたの利益のために相手と直接交渉します。
弁護士に依頼することで次のようなメリットがあります。

  • 立ち退き交渉を任せられる
  • 立ち退き料が増額できる可能性がある
  • 原状回復など含めて一連で解決できる
  • 書面化など必要なことが抜けない

一方で次のデメリットがあります。

  • 弁護士費用がかかる

費用とのバランスをみて依頼するか検討下さい。
もっとも、弁護士費用以上に立ち退き料が増額できる可能性がありますから、結局、手取りとしては弁護士に依頼した方が増えるということも多々あります。
総合的により良い判断をしてください。

まとめ

アパート老朽化による立ち退き料についてをまとめます。
アパートの老朽化による取り壊しで退去を求められた場合、原則として立ち退き料をもらうことができます
これは、借地借家法に基づき、大家さん都合で引っ越しを余儀なくされる借主を保護するための補償金です。
大家さん側にいくら「正当事由」(立ち退きが仕方ない理由)があったとしても、原則としてこの立ち退き料を支払わないと契約終了が認められません。

「老朽化による取り壊し」は強い正当事由となり得ますが、入居者の引っ越し費用などの負担を補填する立ち退き料はもらえるのが基本です。
その相場は、月額家賃の8ヶ月分が目安ですが、居住期間や転居に伴う負担(子どもの学区変更、病気の家族の同居など)によって増減します。

立ち退き料の内訳は、引っ越し費用、新しい住居の仲介手数料・敷金礼金、そして家賃増加分の2年分(+迷惑料)が一般的です。
これらの費用が具体的にどれくらいかかるかを把握し、交渉材料にしましょう。
ただし、極端な老朽化で倒壊寸前の場合や、取り壊し前提で格安で入居した場合は、立ち退き料がもらえない例外もあります。

アパートの取り壊しの場合、退去自体を拒否するのは難しい現実があるため、**「立ち退き料を最大限もらうこと」**に焦点を当てて交渉することが重要です。
大家さんの立ち退き希望時期を把握し、それに協力することで増額を交渉したり、具体的な内訳を提示して交渉を有利に進めたりするコツがあります。
交渉内容は必ず書面や録音で残しましょう。

複雑な交渉や金額の最大化を目指すなら、弁護士への依頼もおすすめです。
専門家が交渉を代行し、立ち退き料の増額や適切な書面化などをサポートしてくれます。
費用はかかりますが、結果的に手取りが増えるケースも少なくありません。

監修者

飛渡 貴之

資格:弁護士/司法書士、土地家屋調査士有資格
所属:弁護士法人キャストグローバル

〒105-0001 東京都港区虎ノ門3丁目4-10 虎ノ門35森ビル1階
相談受付:03-6273-7758
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