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再開発による立ち退き料の相場は?店舗・一軒家別に増額方法も解説!

駅前再開発で立ち退きの話が突然来た。
立ち退くのであれば、できる限り多額の立ち退き料を受け取りたいですよね。
結論、再開発の立ち退き料の相場は、一軒家で持ち家ですと6,000万円程度、店舗兼住宅であれば150万円です。
もっとも、立ち退き料は建物の種類、構造、お住いの状況などによって大きく変わります。
立ち退きは精神的にも作業的にも負担が大きいですし、移転先での生活にも不安がつきものですから、できるだけ立ち退き料は多くもらいたいですよね。
そこで本記事では、再開発で立ち退きを求められた場合に、立ち退き料の相場、算出方法から増額方法のポイント、納得いかなければ立ち退かなくて済むのかを解説します。

【この記事でわかること】

  • 再開発による立ち退き料の相場がわかる
    • 一軒家持ち家で6,000万円程度
    • 賃貸アパート、一軒家で150万円程度
    • 店舗兼住宅(持ち家)で8,000万円程度
  • 再開発による立ち退きとは、都市環境を改善するための立ち退きである
  • 再開発による立ち退き料の内訳は、土地の価格(借家権の価格)+移転補償である
  • 再開発による賃貸の立ち退き料の内訳は、引越し費用+新物件の仲介手数料+家賃増加分等の補償である
  • 再開発による店舗兼住宅の立ち退き料の内訳は、土地の価格+移転補償+営業補償
  • 立ち退き料の増額交渉の4つのポイント
    • 再開発の「正当事由」の強さを確認する
    • 増額してほしい理由を明確にして伝える
    • 再開発スケジュールの把握、周辺状況の把握
    • 交渉でやってはいけないことを意識する
  • 立ち退き料に税金がかかること
  • 立ち退きをしないで権利変換という方法もあること
  • 立ち退き交渉を弁護士に依頼する3つのメリット
    • 立ち退き料が増額できる
    • 正当事由が弱いと反論できる
    • ストレスフルな交渉から解放される
  • 立ち退き交渉を弁護士に依頼するデメリットは弁護士費用がかかること

なお、道路拡張(都市計画道路)による立ち退きについて詳しく知りたい方は、「道路拡張の立ち退き料はいくらもらえる?一軒家(持ち家)を中心に解説」もご覧ください。

目次

1.再開発による立ち退き料の相場

物件の種類 立ち退き料の相場
一軒家(持ち家) 6,000万円程度
賃貸(マンション・アパート、一軒家) 150万円程度
店舗兼住宅(持ち家) 8,000万円程度

※1 80㎡の土地(千葉県市川市)、公示地価等を用いて概算にて計算
※2 月額賃料10万円として
※営業所得1,000万円/年として、2年分

再開発時による立ち退き料の相場は、一軒家(持ち家)は6,000万円、賃貸は150万円、店舗兼住宅(持ち家)は8,000万円です
ですが、具体的な事情によって、立ち退き料は大きく異なります。
後の項目で、内訳なども含めてより詳しく解説します。

2.再開発による立ち退きとは

再開発とは、都市の機能更新や都市環境を改善するための開発をいいます。
再開発には、市街地再開発事業など法律に定められた法定再開発、民間企業が行う再開発があります。
再開発の例を挙げると、Aさん、BさんとCさんの家を取りこわし、土地を一つにまとめて、高層ビルを建て、余った土地に公共施設などの公園を作ったりするものです。
再開発後の不動産の権利(権利床)を受け取ることもできます。
ですが、権利床を受け取らないで立ち退くという選択も可能です。

3.【3つの状況別】再開発による立ち退き料の内訳と算出方法

最初の項目では、おおよその相場を出しましたが、ここでは内訳なども含めて詳しく解説していきます。
再開発に伴う立ち退き料の内訳は

  • 立ち退き料=(1)土地の価格(借家権の価格)+(2)移転補償です

(1)土地の価格
土地の価格とは時価であり、「公示地価」などを基準に算出されます。
公示地価とは、国土交通省が毎年1月1日時点における土地の正常な価格を3月に発表するものです。
ですが、公示地価は基準の一つであってこの価格で確定するということはありません。
(2)移転補償
移転補償とは、建物を新しい場所へ移動させるなど移転にかかる費用です。
以下、持ち家、賃貸などの場合に分けて説明します。

1)持ち家(一軒家)の立ち退き料相場|内訳と算出方法

立ち退き料の内訳は、土地の価格+移転補償です。
千葉県市川市で80㎡の土地に木造2階建(110㎡)に家族4人で住んでいるとして算出します。

①土地の価格:2,146万4,000円

土地の価格は国土交通省が発表している「公示価格」などをもとに計算されます。
あなたの土地の公示価格は、国土交通省が提供する「標準地・基準地検索システム」からチェックできます。
公示価格は1平方メートルごとに価格が定められているため、あなたの土地の面積をかけることで、おおよその価格が求められます。
例として千葉県市川市についてみてみましょう。
千葉県市川市の2024年の公示地価は、1㎡あたり26万8,300円であり、土地の面積が80㎡ですから、2,146万4,000円(268,300×80)となります。
ですが、公示地価という基準の一つであることに注意が必要です。

②移転補償:2,546万円

「移転補償」とは、新しい住居や店舗に移転するのにかかる実費です。
持ち家の一軒家から移転する場合は、単純な引越し費用だけでなく、今の家の解体費用や、新しい家を建て直す建築費用なども含まれます。

【一軒家(持ち家):移転費用の内訳】

  • 今の家の解体費用
  • 新しい家の建築費用
  • 引越し費用

● 仮住まい費用

・新たに建て直す建築費用:2,277万円
令和6年の千葉県の木造工事費は1㎡あたり20万7千円ですから、110㎡の建築費は、2,277万円となります。
・建物の解体費用:132万円
木造の解体費用は坪40,000円ですから1㎡あたり1万2,000円となり、110㎡の解体費は、132万円です。
・引越しなど移転費用:20万円
家族4人分の引っ越し費用は、8万円~30万円です。
時期により金額の差は大きいです。
・仮住まい費用:120万円
新しい家が建つまでの間、仮住まいの必要があり、その費用は家賃10万円の1年分120万円です。

以上合計、4,695万4,000円です。
これらに慰謝料的要素が加わり、6,000万円となります。

2)賃貸(マンション・アパート、一軒家)の立ち退き料相場|内訳と算出方法

賃貸(マンション・アパート、一軒家)における立ち退き料の内訳は、引越し費用+新物件の仲介手数料+家賃増加分等の補償です。
持ち家の場合とは異なり、建物の建設・解体費用や、土地の価格は含まれません。
千葉県市川市に月10万円の賃貸に住んでいるとします。

➀引越しなど移転費用:20万円

家族4人分の引っ越し費用は、8万円~30万円です。
時期により金額の差は大きいです。

②仲介手数料等:40万円

敷金、礼金、仲介手数料、保証料がかかり、それぞれ家賃の1ケ月分になります。

③家賃増加分の補償等:24万円

周辺で同等の物件を賃貸する場合、通常は家賃が上がります。
上がる分の家賃の2年分を補償してもらいます。
1万円上がるとすると、24ケ月分で24万円となります。

以上合計で84万円ですが、これに慰謝料的要素が各項目に加わり、150万円になります。

3)店舗兼住宅の立ち退き料相場|内訳と算出方法

店舗兼住宅の場合は、上の住宅の場合と少し異なり、立ち退き料の内訳は、土地の価格+移転補償+営業補償です。
住宅のみの場合との違いは、事業しているため、移転によって事業に被る損失に対する補償があります。
千葉県市川市で80㎡の土地に木造2階建(130㎡)、1階の一部で飲食店を営み、その他で家族4人が住んでいるとして算出します。

①土地の価格:2,146万4,000円

1㎡あたり26万8,300円であり、土地の面積が80㎡ですから、2,146万4,000円(268,300×80)となります。

②移転補償:3,003万円

・新たに建て直す建築費用:2,691万円
令和6年の千葉県の木造工事費は1㎡あたり20万7千円ですから、130㎡の建築費は、2,691万円となります。
・建物の解体費用:132万円
木造の解体費用は坪40,000円ですから1㎡あたり1万2,000円となり、130㎡の解体費は、156万円です。
・引越しなど移転費用:60万円
家族4人分の引っ越し費用は、8万円~30万円です。
これに加えて店舗にある什器備品設備なのどの移転が加わり、+30万円です。
・仮住まい費用:120万円
新しい家が建つまでの間、仮住まいの必要があり、その費用は家賃10万円の1年分120万円です。

③営業補償:2,400万円

移転によって失う得られるはずであった利益、常連さんを失うことによる損失の補償になります。
用対連基準などの基準によって算出されます。
月100万円ほどの利益であれば、2年分の利益を補償するとして、2,400万円となります。

以上合計、7,549万4,000円です。
これらに慰謝料的要素が加わり、8,000万円となります。

4.再開発の立ち退き料はの増額交渉ができる!交渉の4つのポイント

1)再開発の「正当事由」の強さを確認する

立ち退きが認められるためには、正当事由が必要です(借地借家法28条)。
「正当事由」とは、立ち退きを求める人(大家や再開発の事業者)があなたに立ち退きを求める際に必要な、合理的な理由のことです。
正当事由が認められるかどうかは、家主がその不動産を利用する必要性がどれだけ高いか、一方、借主がその不動産を利用する必要性がどれだけ低いかといった事情の総合バランスで判断されます。
正当事由が弱ければ弱いほど、立ち退き料が高くなる関係にあります。
では、再開発の場合はどうなるかといいますと、正当事由は弱くなり、立ち退き料が高くなる傾向にあります。
再開発は、再開発によって利益を得たいという、いわば「向こうの事業上の都合」であり、あなたが立ち退く必要性は低いからです。
ですが、市街地再開発事業などの法定再開発はこれに当てはまりません。
法律によって立ち退くことになりますから正当事由の話にはなりません。
民間の再開発の場合は、どのような再開発であるのか、どうして再開発をするのかを確認しましょう。
その上で、家主がその不動産を利用する必要性がどれだけ高いかを確認して、正当事由としての高低を判断します。

2)増額してほしい理由を明確にして伝える

先の項目では立ち退き料の内訳・算定方法を挙げてきましたが、必ずしもこの通りになるということはありません。
あなた(借主)の事情によって、もらうべき立退料は大きく違ってくるからです。
大家や事業者は、あなたの個別の事情を全て考慮して立ち退き料を提示していません。
そのため、あなたの個別の事情を具体的に訴えることで、立ち退き料の増額が期待できる可能性があります。
具体的には以下のような事情が、立ち退き料増額の根拠として使える場合があります。

【例:立退料を増額してほしい理由】

  • 立ち退きによる生活環境の変化が大きい:長く住んでいる場合など
  • 引越しの負担が大きい:高齢者や病気の人、大家族など
  • 物件を改装しなければいけない:病気、後遺障害などで改装が必要である。
  • 立地条件の変化:子どもの学校、親族の病院などが遠くなる。
  • 契約料、敷金など:契約更新直後に立ち退きを求められた場合、更新料などの返還を求める。
  • 営業損失(店舗の場合):常連顧客の喪失など

このような事情(言い換えれば、立ち退き量を増額してほしい理由)がある方は、それを根拠に増額を持ちかけてみてください。

3)再開発スケジュールの把握、周辺状況の把握

事業者にとって、再開発によって不動産を有効に活用し利回りを上げることが目的です。
早く実現出来れば出来るほど早く利益を得ることが出来ますから、時間というのは大きな要素です。
それを逆手にとって、相手のスケジュールに合わせる代わりに増額してもらうなどと交渉しましょう。
また、自分以外の周りがどれほど立ち退きが進んでいるのかなども確認します。
再開発には予算がありますから、予算がある間に予算が予測できる時に、高額な立ち退き料を請求するなどです。

4)交渉でやってはいけないことを意識する

相手を怒鳴りつけるなど感情的な対応をとってはいけません。
交渉が出来ない人だと思われてしまい増額交渉が出来なくなります。
また、賃貸借契約書に記載のある義務に反したり、禁止事項などをしてはいけません。
例えば腹が立ったから家賃の支払いを止める、無断で造作物をつくるなどです。
これらをしてしまうと債務不履行によって契約を解除されてしまい、立ち退き料をもらえなくなります。

5.見逃せない!立ち退き料にかかる「税金」

再開発が認定再開発事業であった場合は、税制の優遇措置を受けることができます。
たとえば、受け取った立ち退き料で次の家を取得した場合、譲渡(土地を明け渡して対価として立ち退き料を受け取った)がなかったとする、譲渡所得から5,000万円控除するなどです。
これらの優遇措置を受けられれば税金はかなり低く抑えられます。
優遇措置が受けられない場合、税金には特に注意してください。
土地の明け渡し費用は、いわば土地の譲渡になりますから、不動産を譲渡したものとして税金がかかります。
また、必要経費以外で立ち退き料が増えた部分は、一時所得として課税されます。
一時所得は比較的高額の税金がとられます。
店舗の場合は、営業損失は事業所得として課税されます。
このように複雑な計算をしなければならないことが多いため、立ち退き料を受け取った方は税理士さんへの相談は忘れないでください。

6.再開発による立退料をもらうまでの流れ

再開発による立退料をもらうまでの流れは、以下のようになっています。

  1. 地主から、立ち退いてほしい(契約を更新しないと)と連絡が来る。
  2. 地主からの連絡文、契約書をもって弁護士に相談する。弁護士が増額可能と判断し、あなたもこの人に任せたいと思ったら依頼する。
  3. 弁護士が地主と立ち退き交渉を開始する。
  4. 弁護士が入って立ち退き料を含めた一連の問題をまとめ、あなたがその内容に納得する。
  5. 立ち退きをする→立ち退き料を受け取る

立ち退き料を受け取れるのは立ち退いた後になります。
立ち退きと引き換えに立ち退き料を受け取る契約をすることになるからです。
そうしないと大家さん側は立ち退き料を払ったのに出ていかないというさんざんな結果になりかねないからです。

7.立退料をもらう以外の選択肢

1)立ち退きを拒否する

立ち退き料が納得できない場合は、立ち退きを拒否するということも一案です。
正当事由が相当弱い場合で、立ち退き料が十分でない場合であれば、立ち退きをせずに済む可能性があります。
ただし、市街地再開発などの法定再開発の場合は拒否できないことに注意が必要です。
この点も踏まえて、「立ち退きは拒否できるか」の判断は相当難しいため、立ち退きに強い弁護士に十分相談してください。

2)「権利変換」を利用する

立ち退く代わりに再開発後の不動産を受け取る「権利変換」を検討しましょう。
「権利変換」とは、立ち退く代わりに、開発後の不動産を受け取ることをいいます。
再開発後の整備された不動産の権利が得られ、将来的に大きな値上がりが期待できる場合もあります。
住み慣れた土地から離れなくていいというメリットがあります。

8.立ち退き交渉を弁護士に依頼するのもおすすめ!

1)立ち退き交渉を弁護士に依頼する3つのメリット

①立ち退き料が増額できる

1番のメリット、立ち退き料が増額できます。
これまで説明してきたことに不安が残れば、専門家に依頼することで立ち退き料が増額できます。
立ち退き料をしっかり増額させて気持ちよく新天地に移転しましょう。

②正当事由が弱いと反論できる

正当事由の根拠となる事実がどれほどの強弱があるのかを判断するのはとても難しいです。
専門の弁護士であれば、この点を正確に把握し、相手に反論することが出来ます。

③ストレスフルな交渉から解放される

私はこれが1番大きなメリットかなと思いますが、ストレスフリーです。
ストレスはとても手ごわい敵です。
自分事の交渉はかなりのストレスがかかります。
弁護士に依頼することで交渉を任せることができ、ストレスから解放されます。

2)弁護士費用がデメリット

唯一のデメリットが弁護士費用です。
立ち退き料の6%~20%ほどの弁護士費用がかかります。
ですが、弁護士費用がかかるものの、立ち退き料が増額した分から支払えば足りるので、トータルでプラスになります。

まとめ

これまで解説してきた再開発による立ち退き料の相場、算出基準、増額アップのコツをまとめます。

物件の種類 立ち退き料の相場
一軒家(持ち家) 6,000万円程度
賃貸(マンション・アパート、一軒家) 150万円程度
店舗兼住宅(持ち家) 8,000万円程度

※1 80㎡の土地(千葉県市川市)、公示地価等を用いて概算にて計算
※2 月額賃料10万円として
※営業所得1,000万円/年として、2年分

上記はあくまで目安であり個々の状況によって全く異なります。
ポイントは、再開発の正当事由の強さとあなたの正当事由の強さです。
相手の状況をくみ取りながら立ち退き料を最大化する交渉をします。
一般的な立ち退き料の算出基準(用対連基準)を大幅に超える立ち退き料を受け取った例が数多くあります。
場合によっては権利変換による権利床を受け取る方が良いという方もおられますからあなたの状況に応じて比較検討しましょう。
自分のことの交渉はとてもストレスがかかりますから、弁護士に依頼することも検討してください。
大切な決断になりますから悔いの残らないように検討して新天地で気分よく過ごしてください。

監修者

飛渡 貴之

資格:弁護士/司法書士、土地家屋調査士有資格
所属:弁護士法人キャストグローバル

〒105-0001 東京都港区虎ノ門3丁目4-10 虎ノ門35森ビル1階
相談受付:03-6273-7758
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