1 外国人技能実習機構による改善勧告・改善指導とは

実施実習者(技能実習生の受入れ企業)は、認定計画に従って技能実習を行わせていない場合や、その他の違法等が認められる場合、当局から改善命令(技能実習法15条)や技能実習計画の認定取消し処分(技能実習法16条)を受ける可能性があります。

 

もっとも、外国人技能実習機構(以下、「機構」といいます。)による実地検査などにおいて、これらに該当する事情が発見されたとしても、重大な違反・違法でない限り、いきなり改善命令や取消処分を受けることは比較的少なく、まず改善勧告・改善指導がなされることが多いと思われます

 

2 機構による指摘の傾向

機構の統計によると、令和元年度は14970件の実地検査がなされ、そのうち約32.9%の4922件において指導がなされています。実地検査は全ての実施実習者に対して3年に1回の頻度でなされる検査であること、つまり違反の疑いのある実施実習者が狙い撃ちされているわけではないことを考慮すれば、この32.9%という割合は高いというべきです。

 

違反が指摘された事項としては、技能実習生の待遇に関するものがもっとも多く(2374件)、帳簿書類の作成・備え付けに関するものも多くなっています(2258件)。実習内容が計画と異なっていたもの(363件)や、計画通りの報酬が支払われていなかったもの(401件)というような認定取消し処分の理由となっているものが多いことは注目に値します。また、残業代が適切に支払われていなかったものも多く指摘されています(747件)。

 

3 機構から改善勧告・改善指導を受けた際の適切な対応とは

機構の実地検査で改善勧告・改善指導を受けた場合、これに従わなければならないのはいうまでもありません。これを無視したり、いい加減な対応をすると、今度こそ改善命令や認定取消しの処分を受けかねません。

したがって、当然ではありますが、機構に指摘された事項についてしっかりと改善をしなければなりません。

ただし、問題は必ずしも単純ではない場合があります。

実習内容が計画と異なっているという指摘を受けた場合、例えば、技能実習生に計画外の業務を日常的に担当させていた場合は、その業務を技能実習生に担当させないようにする必要がありますが、その分を他の従業員に担当させたり、外注にするなどの対応が求められて、事業場全体の業務のやり方の変更を迫られる場合もあると思います。

 

また、なぜそのような違反が発生したのか、その原因を解明し、それを踏まえた改善が求められます。不正事案が発生した場合、その原因を解明せず場当たり的な対応をし、その結果、しばらくしてまた同じような不正が生じてしまうというのは世の常です。原因をしっかりと解明し、それに応じた適切な対策を取ることが、再発防止の鍵となります。

 

このように改善勧告・改善指導に対する対応の仕方は、単純ではありません。どのような対応を取る場合であっても、機構の指摘を真摯に受け止めることが第一歩であり、同様のことを再発させないために、抜本的な対応が必要です。

 

4 監理団体に不信感を覚えた場合

このような対応は、実際には監理団体と協議しながら進めていく場合が多いと思いますが、その過程で監理団体とトラブルになってしまう場合もあります。

 

機構に問題を指摘された実施実習者の中には、「知っていてわざと違反をした」というよりも「違反になるとは知らなかった」ケースのほうが多いと思います。そのような実施実習者の場合は、定期監査でなぜ問題を指摘してくれなかったのか、今までなぜ指導をしてくれなかったのかなどと監理団体に不信感を抱く場合があります。

 

また、監理団体が勧めてくる対応方針に納得できないこともありがちです。

監理団体が機構の方だけを見て、実施実習者に目を向けてくれないと感じ、監理団体に不信感を抱いてしまう場合もあるかもしれません。

 

機構による是正勧告の内容を十分理解し、監理団体と協力して適切な対応ができればよいのですが、それがなかなかうまくいかない場合、監理団体とのトラブルに発展してしまう場合もあります。

 

5 当事務所ができるサポート

監理団体と協力した対応が難しいと感じた場合や、徹底的な改善を図りたい場合、機構と綿密な連絡調整をしたい場合は、弁護士がサポートします。当事務所では、技能実習法に通じ、企業の不正調査の経験を積んだ元検察官の弁護士を中心として、技能実習生の受入企業のサポートが可能です。

   
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