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監理団体運営時の法的課題について
監理団体を運営するにあたっては、技能実習法などの法律をしっかり守らなければならないことはいうまでもありません。しかし、技能実習法の規制が複雑であるせいか、法律を守り切れていない場合があり、外国人技能実習機構による実地検査の際などに指摘をされています。これは由々しき自体であり、一刻も早く違法をなくすべきことは当然として、今後も違法が発生しないような体制づくりをしなければなりません。監理団体の運営時の法的課題について、特に注意したいのは以下の点です。
実施実習者に対する監査等の実施
令和元年度の監理団体に対する実地検査において、実習実施者の監理・指導に関する違反が644件指摘されています。監理団体は、実施実習者(受入企業)に対して、3か月に1回以上の頻度で監査を行う必要がありますし、実施実習者に実習認定の取消し事由があると疑われる場合には、臨時監査を行う必要があります。また、1号技能実習の場合は、1か月に1回以上、実施実習者に対する訪問指導を行わなければなりません。このような監理団体による実施実習者の監査や指導は、監理団体の根幹業務です。
技能実習制度の問題として、悪質な実施実習者が技能実習生を違法に酷使し、劣悪な環境で稼働させているという点が多く指摘されています。しかし、監理団体による実施実習者の監査が機能していれば、そのような問題はほとんど生じないはずです。技能実習生の違法な酷使の問題は、監理団体による監査が機能していないことの裏返しです。このように考えると、監理団体による監査について違反が指摘されることは、監理団体としては危機的な状況といえます。
帳簿・記録の作成と備付け
令和元年度の外国人技能実習機構による実地検査において、最も多く指摘されているのが帳簿・記録の作成と備え付けで、1170件もの指摘が発生しています。各種管理簿が適切に作成等されていなかったもの、監査・講習・指導・相談等の記録が適切に作成等されていなかったものが大半を占めています。
監理団体には多種多様な帳簿や記録の作成が課されていますが、これらは監理団体が監理業務を適正に行っていることを証明するためのものといえます。外国人技能実習機構による実地検査や主務大臣の立入検査の際に、直ちに提示できる必要があり、それができなければ監理業務を適正に行っているのか疑問符が付いてもやむを得ないでしょう。
なお、帳簿・記録の作成と備え付けについては、外部監査人等による監理団体の外部監査が適切に行われていれば、実地検査で指摘される前に発覚して改善されていたはずです。帳簿・記録の作成と備え付けについて違反が指摘された場合は、外部監査が機能していない疑いがありますので、外部監査のあり方についても見直すべきでしょう。なお、令和元年度の実地検査において、外部役員・外部監査人の設置・監査が適切に行われていなかったものが161件指摘されています。
送出機関との関係
現在の技能実習制度の問題点としてよく取り上げられるのは、技能実習生の失踪の問題です。決められた給料を支払っていないなど失踪の原因が実施実習者や監理団体に問題がある場合もありますが、送出機関に問題がある場合も少なくありません。技能実習生が日本に入国する際に送出機関やブローカーなどに多額の借金を背負わされている場合があり、そのような技能実習生は、短時間で高額の報酬を得るために、失踪して違法な仕事をすることがあります。失踪対策として、そのような悪質な送出機関から技能実習生を受入れないということが重要となります。
外国人技能実習機構は、令和3年6月、失踪者の発生が著しい送出機関からの受入れを停止する措置を取ることを発表しましたが、今後も同様の措置がとられることが予想されます。悪質な送出機関との関係は直ちに絶つことが、技能実習生の失踪を防止するためにも必要です。
他の監理団体での摘発事例
監理団体の許可の取消しと改善命令
監理団体は、許可基準を満たさなくなった場合、欠格事由に該当することとなった場合、許可の条件に違反した場合、改善命令に違反した場合、入管法令や労働関係法令に違反した場合等には、許可の取消しの対象となります(技能実習法37条1項)。また、監理団体は、技能実習法、出入国又は労働に関する法令等に違反していることが判明したときであって、監理事業の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、主務大臣による改善命令を受ける場合があります(技能実習生36条1項)。
許可の取消しがなされれば監理団体として活動できませんので、これを避けるべきは当然です。改善命令は、直ちに監理団体としての活動を停止するものではありませんが、対応を誤れば許可の取消しにつながる場合もあり、これも当然ながら避けるべきです。なお、許可の取消しと改善命令は公表されますので、監理団体の評判に致命的なダメージとなりかねません。
監理団体の処分の実例
平成30年12月以降、監理団体の許可の取消しや改善命令がなされており、それらが公表されています。公表された事例を検討すると、以下のようなパターンがあることが分かります。
実施実習者の監査に関するもの
実施実習者の監査に関する違反により、改善命令や許可の取消しに至った事例が複数公表されています。
公表された文書によれば「監査を適切に行っていなかったこと」、「実施実習者への指導等必要な措置を講じていなかったこと」、「実施実習者に対して訪問指導を適切に行っていなかったこと」などが指摘されています。監査の問題に加えて入国後講習を実施していなかったことや技能実習計画の作成指導を適切に行っていなかったことが指摘されている事例もあります。
処分内容としては、改善命令でとどまるものと、許可の取消しに至るものがありますが、公表内容は抽象的であるため、何が原因でその差が生じたのかははっきりしません。
送出機関との不適切な関係
送出機関との不適切な関係が指摘され、許可が取り消された事例があります。
技能実習生を受入れるにあたっては違約金を設定することが禁止されています(技能実習法47条1項)が、監理団体が送出機関との間で違約金を定める内容の覚書を締結していたことにより、許可の取消しがなされた事例があります。
また、監理団体は、技能実習生を受入れるにあたって送出機関から報酬や手数料を受け取ることが禁止されています。法務省、厚労省、外国人技能実習機構は平成29年7月14日付けで「送出機関との不適切な関係についての注意喚起」という文書を発出しており、送出機関からこのような報酬・手数料を得ることが技能実習法28条に違反する旨の注意喚起を行いました。この点で、送出機関から手数料を受領していた監理団体が、許可の取消しをされた事例が複数あります。
名義貸し
監理団体が自らは監理業務を実際には行わず、名義を他人に貸して、その他人が実際の監理業務を行うというような場合には名義貸しが成立します。監理団体の許可を得るために厳しい要件・手続が課され、監理団体には厳しい法規制がなされていることから考えれば、この名義貸しがあってはならず、その違反に厳しい処分が科されることは当然です。
名義貸しによって、監理団体の許可の取消しがなされた事例は、複数報告されています。
当事務所でのサポート内容
このように、監理団体の運営には法的な課題があり、また、違反した監理団体が重い処分を受けている事例があります。監理団体に対する法規制は厳しく、監理団体が独力で対応することが難しい場合があります。当事務所においては、監理団体が適法かつ適正に運用できるようにするため、以下のようなサポートを行います。
運営状況のコンプライアンスチェック
監理団体の運営状況について、コンプライアンス(法令遵守)チェックを行います。監理団体として運営していて、特に大きな問題が発生しなければ、何も問題がないのではないかと思ってしまいます。他の監理団体の話を聞き、それと同じように運営しているから、何も問題がないと思ってしまう場合もあります。しかしながら、実地検査で多数の違反が指摘されていることからも明らかなように、問題ないだろうと思っていることが実は違法、ということは残念ながら多いのです。そのような違反を外国人技能実習機構などの当局に発見される前に発見し、是正しておくことが重要です。
当事務所は、監理団体のコンプライアンスチェックを行い、違法その他の問題点を発見するだけでなく、それらの原因を分析し、取り得る可能な改善策を提案します。
コンプライアンス体制の確立
違法その他の問題点を発見し、改善することは重要ですが、それで十分とは言えません。再発を防止するとともに、他の点においても違反が発生しないような体制をつくることが重要です。
当事務所は、このようなコンプライアンス体制が構築できるよう、サポートします。
外部監査人の就任
問題点を発見し、発生を予防するためには、外部監査も重要です。しかし、これが十分機能していないため、実地検査で多くの違反が指摘されてしまうのです。
当事務所では、法に精通し、法定講習受講済みの弁護士が在籍しておりますので、監理団体の外部監査人に就任することも可能です。