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「解雇をした外国人従業員から突然訴えられてしまった」
解雇とは使用者による労働契約の一方的解消を意味しますが、現在の日本の労働法制では、労働者を解雇するのは合理的理由があり、社会通念上相当でなければならず、一般的には容易ではありません。業務遂行能力が低い社員や勤務態度が悪い社員であっても、簡単に解雇をすることはできません。安易に解雇をしてしまうと、従業員から労働審判や労働訴訟を提起され損害賠償請求などをされてしまったり、場合によっては、SNSなどを通じて社会的に「炎上」してしまったりすることも考えられます。
外国人労働者の解雇が認められるためには
解雇が認められる客観的で合理的な理由を基礎付けうる事情は、例えば下記のようなものです。
- 会社の度重なる指導によってもなお勤務態度の不良が改まらず、会社の指示に従って労務を提供できないこと
- 成績が著しく不良で改善の見込みがなく、他の職務にも転換できないなど就業に適さないこと
- 重大な経歴を詐称して入社していたことが判明したこと
- 正当な理由なく業務上の指示・命令に従わないことを繰り返したこと etc…
外国人労働者を解雇する場合、上記理由のほか、労働基準法第3条に基づく「差別的解雇」に該当しないかどうかに特に注意をする必要があります。
差別的解雇とは
差別的解雇とは、労働基準法第3条において、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と定めるもので、外国人であることなどを理由とした不当な待遇を外国人に対して行ってはならないことを定めています。外国人であることを理由とした差別的解雇は無効となります。
「日本語能力が劣り、コミュニケーションが十分にできず、労働契約の目的を達成できないこと」を理由に解雇する場合、外国人が日本人と比べ、日本語能力に劣ることは一般にやむを得ないといいうることであり、その事情を使用者が理解していなかったか否かが、解雇が有効か無効かを判断する要素の1つとなりえます。仮に、外国人労働者の側から解雇無効を訴えられた場合、その解雇を有効とするためには、採用条件で、外国人が従事する職務内容に鑑み日本語能力が十分であることを要求していたか等、幅広い事情が考慮されるでしょう。
特定技能の場合の留意点
特定技能の外国人を受け入れるには、外国人との間で雇用契約を締結する日の1年前から、特定技能の外国人に従事させる業務と同種の業務に従事する労働者(外国人のみならず日本人も含む)を非自発的に離職させていないことが必要となります。したがって、整理解雇や退職勧奨を行う際にはこのことを念頭に置く必要があります。
弁護士に依頼をすることで、解雇に客観的に合理的な理由があるか、手続に正当性があるかについてアドバイスを受けることができますので、お気軽にご相談ください。また、解雇は非常に重い法的手続きとなり、トラブル化することも多くあります。トラブルを避け、スムーズな解雇を実現するためにも、まずは弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
【参考文献】
外国人の雇用に関するトラブル予防Q&A
外国人雇用の実務 第2版