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 地主様向け 不動産コラム

不動産の共有の解消が必要な理由とは?

不動産が共有となるタイミングは、主に、お金を出しあって不動産を購入する場合と、相続があった場合です。一般に「共有状態」とは、どういった内容かについては、あまり良く知られてはいません。通常は共有だと、その不動産を売却しづらいといった場合や、不動産価格が下がるといった程度の情報のみ知られていることが多いようです。このコラムでは、共有とはどういうものなのかを説明し、その解消が必要な理由についてご説明いたします。

不動産の共有とは

不動産の共有とは、共有者の各人が処分を伴わない、共有物の全部について、持分に応じた使用収益できる状態をいいます(民法249条、251条等)。
不動産の共有が発生するのは、主としては相続、住宅の購入、離婚時の財産分与などで発生します。やっかいなのは、前述のとおり、原則的には共有者の各人には、「持分に応じた使用収益できる」ので、長期の賃貸に渡らない短期賃貸であれば、共有物の管理に関する事項なので、例え反対があった場合でも、持分の価格で過半を有する共有者の行う場合であれば、止めることはできません。
また、ある不動産を処分しようと考えていた場合であっても、共有者全員の同意を得ない限りは売却することができません(民251条)。
この他、住宅地で私道を周囲の住民で共有するといったこともあります。一般的には、その地域の市区町村に寄付される場合が多いですが、この場合であっても、共有で所有関係が不明となっている場合は手続きが出来ず、私道を引き取ってもらうことができません。

不動産の共有状態のまずい理由とは

不動産の共有が発生する場合の一番の原因は、「相続」の発生です。また、かつては、農地を複数の人で共有するといったことも行われていたため、畑などの農地が共有で、相続が数次にわたり放置されてきた場合には、大変な問題が生じます。
もっとも典型的な事例として、例えば、宅地開発を行っている不動産業者が、ある放置された畑を宅地に造成して、分譲しようと計画を立てたとします。しかしながら、その土地は、暫く相続登記をしていなかったため、調査を行うと、相続により100人以上の相続人による共有状態となっており、しかも、幾人かは連絡がつかないといったことは珍しくはありません。
あるいは、ある事業者が風力発電設備を建設しようと、山林に地上権を設定しようと、地権者と交渉しますが、上記と同様に相続人が膨大な数にのぼり、交渉が難航するといったことがあります。
民法上の「所有権」という強い権利があり、現行法上は、例え政府であっても、原則的には個人の所有権を侵害することができません。
「共有」とは、数人で「所有権」を共有することですので、この原則は共有にも該当し、かつ、ある共有者は他の共有者の権利を侵害できません。
こうしたことから、現在、相続手続きが放置されるなどにより、放置され、所有者が不明になっている土地が、一説には北海道ほどの面積となると問題視されています。

相続登記の義務化の動き

ここまで説明してきたとおり、相続登記が長年放置され、共有の状態となったり、管理されず放置されることが社会的な問題となってきています。国はこの問題に対し、例えば空家対策に関しては、「空家等対策の推進に関する特別措置法」を制定するなどの対策を進めています。
他方で、土地等の不動産に対しては、法務省の研究会などは、相続登記の義務化、所有権放棄制度の創設、遺産分割協議期間の制限などが検討されています。
このような流れから、相続などで不動産が共有になっている場合などの際には、早期に共有状態を解消するように話し合いを行うのが良いでしょう。

不動産の共有を解消するにはどうすれば良いのか

不動産の共有を解消するには、他の共有者とともに処分するのがもっとも現実的です。例えば、相続が発生している場合であって、遺産分割協議がととのわず、ひとまず、法定相続分で相続登記を行った場合、他の相続人の同意が得られれば、その不動産を処分(売却)することができます。
「他の相続人の同意」とは、実務上は、売買契約書と委任状に実印で捺印をもらい、発行から3か月以内の印鑑証明書の交付を受けることです。なお、これは登記実務上の話ですが、住所に変更があり登記記録と一致しない場合には、住所変更登記が前提として必要なため、住民票等が必要となります。
また、相続以外で共有となっている場合、例えば、親子で不動産を購入した場合などは、持分を他方に譲渡することによって、共有状態を解消することができます。譲渡の内容としては、「贈与」でも「売買」でもいずれでもかまいません。ただし、「贈与」を原因とする場合には、税務上、贈与税がかかる場合があります。この点は注意が必要です。最後に離婚に伴う財産分与で共有となっている場合には、持分権を放棄して単有にするといった方法があります。心配であれば、弁護士などにご相談ください。

まとめ

不動産の共有状態が長期間にわたると、相続が数次に生じることや遺産分割で問題が生じる、所有者が不明になるなど、様々な問題が生じます。また、不動産を売却する場合や、災害用に道路の拡張や防風林の建設などが必要な場合、一つの不動産が複数の共有者に渡ると、手続が進まず、対策が遅れるなどの障害が生じます。
民法の考え方としては、「共有」は一時的な状態であって、将来的には単独所有になることを想定しています。一般的には、不動産を共有にしておくメリットはないので、共有状態の場合には、早期に解消するのが良いでしょう。また、そもそも共有にならないようにしておくことが大切です。

監修者

弁護士法人キャストグローバル 企業法務担当

〒101-0054 東京都千代田神田錦町2-11-7小川ビル6階

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