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 借主様向け 不動産トラブルお役立ちコラム
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雨漏りでアパートを退去する場合立ち退き料は出る?2つの条件を解説

賃貸アパートから雨漏りがした。
住んでいられないので、大家から立ち退き料をもらって引っ越したいと思う方もおられるでしょう。
原則、立ち退き料(損害賠償)をもらうことは難しいです。
ですが、場合によっては、立ち退き料を請求できる可能性があります。
本記事では、アパートの雨漏りで立ち退き料がもらえる場合、雨漏りした場合の対応などを解説します。
【この記事でわかること】

  • 雨漏りが原因の引越しで立ち退き料がもらえる条件
    • 修理の依頼を何度しても対応されない
    • 修繕対応されても雨漏りが改善されない
  • 雨漏りが原因で立ち退き料をもらえないケース
    • 入居者(あなた)側の原因で雨漏り等が発生した場合
    • 大家が速やかに雨漏り修繕に対応した場合
    • 雨漏りによる生活環境のダメージが軽い場合
  • 雨漏りによる立ち退き料の相場は40万円程度であること
  • 計算方法は引っ越し費用+新居の初期費用、迷惑料
  • 雨漏りから立ち退き料をもらうまでの対応手順
    • 雨漏りの状況を記録する
    • 大家に報告して修繕を求める
    • 応急処置をして雨漏りの拡大を防ぐ
  • 自分で修理するのは原則だめだが、やむなくするとしても適切にすること
  • 雨漏りと立ち退きのトラブルを相談する場所は、国民生活センターがおすすめ
  • 雨漏りが起きた場合のよくある質問

なお、立ち退き料の相場について詳しく知りたい方は、「立ち退き料の相場は?7つのケース毎にいくらもらえるか・内訳を解説」をご覧ください。

目次

1.雨漏りが原因の引っ越しで立ち退き料をもらえる2つの条件

まず、「雨漏りが原因で引っ越すから立ち退き料を請求する」というのは一般的ではありません。
雨漏りしたから立ち退くのではなく、雨漏りを修繕してもらうというのが普通だからです。
ですが、雨漏りしたことで立ち退かざるを得ず、立ち退き料を請求できる可能性があります。
それは、以下のような場合です。

  • 修理の依頼を何度しても対応されない
  • 修繕対応されても雨漏りが改善されない

それぞれの条件について解説していきます。

1)【条件①】修理の依頼を何度しても対応されない

1つ目の条件は、雨漏りの修理をお願いしても大家がなかなか対応してくれない場合です。
大家には雨漏りを修繕する義務があります民法606条1項本文)。
何度依頼しても対応しないとなると、大家はこの義務に反することになります。
雨漏りの程度によりますが、雨漏りによって生活できないとなると、そのアパートを使用できないことになります。
大家はあなたに住居用に賃貸アパート1部屋を貸すという契約をしていますが、その契約の目的を果たせないということになります。
ですから、これを理由に引っ越す場合、「大家側の責任」と言えるため、立ち退き料を請求できます。

2)【条件②】修繕が不十分で雨漏りが改善されない

2つ目は、大家が対応をしてくれるけれども、改善されない場合です。
雨漏りの原因がわからず改善出来ない場合、業者等の不備で改善出来ない場合などがあります。
大家が修繕をしてくれているが修繕が出来ずに、生活に支障をきたしている場合についても、上と同様に、引っ越しをせざるを得ないということになります。
この場合も、大家側のせいで引っ越しせざるを得ないわけですから、立ち退き料をもらうのにも正当性があります。
ではどれくらいの期間、修繕が不十分であればいいのかというと、時と場合によりますが、一月くらいでしょう。

2.【逆に】雨漏りが原因で立ち退き料をもらえない3つのケース

1章で述べたような例外的な事案でない限り、立ち退き料の請求は難しいです。
例えば、雨漏りに関して、次のような事案が多いです。

1)入居者(あなた)側の原因で雨漏り等が発生した場合

建物の老朽化などではなく、入居者(あなた)側の原因で雨漏り等になることがあります。

入居者側が原因で雨漏りが発生したとしても、立ち退き料はもらえません。

  1. 窓の閉め忘れ
    • 雨天時に窓を全開放置→雨水流入で雨漏り浸水
  2. 排水設備の不適切管理
    • ベランダ排水口の落葉・ゴミ放置→排水不良による浸水
    • 洗濯機排水ホースの誤接続→漏水発生
  3. 改造行為
    • 壁穴開け(アンテナ設置等)→外壁からの浸入
    • 自己流DIY→逆効果の漏水
  4. 放置による拡大
    • 軽微な雨漏りがあったが放置していた→放置によって損傷が拡大し重大な雨漏りになった

あなた側に責任があった場合は、大家には修繕義務がありません(民法606条1項ただし書き)。
なんらの義務違反がない大家から立ち退き料をもらうことはできません。

2)大家が速やかに雨漏り修繕に対応した場合

雨漏りを大家に連絡した際、修繕対応をしてくれた場合も、立ち退き料は請求できません。
ここで注意していただきたいのが、「大家がすぐに対応してくれても、雨漏りがすぐにおさまるとは限らない」ということです。
一般的には、管理会社が対応し大家の決済を得て修繕してくれます。
ですが、雨漏り修理はすぐに対応してすぐにおさまることはすくなく、場所や原因にもよりますが調査〜修繕完了まで短くても2週間はかかります。
修理業者の営業日にしかその工程は進まないので、連休などのタイミングだとさらに遅くなります。
つまり、2週間〜程度の期間雨漏りはおさまらないかもしれませんが、それでも大家としては「するべき対応はきちんとしている」ことになります。
このような合理的な期間を要している場合に、「その修理期間が待てないからもう引っ越す」という言い分で立ち退き料を請求するのは難しいです。

3)雨漏りによる生活環境のダメージが軽い場合

雨漏りの程度が小さい、場所が住環境に影響しないところなど、生活にあまり影響しない軽微な場合も、立ち退き料の請求は難しいです。
生活への影響は小さいが、ちょっとした不満があることをもって、立ち退く料を請求するというのは難しいです。
例えば、軒下からの雨漏り、倉庫など雨漏りなど、あるいはリビングであっても少し水が染み出ている程度などです。

3.雨漏りによる立ち退き料の相場・計算方法

雨漏りによる立ち退き料の目安は40万円です。
その計算方法は以下の通り。
立ち退き料の金額=引っ越し費用、新居の初期費用、迷惑料
引っ越し費用は、引っ越し業者に支払う費用で、単身だと時期によりますが8万円ほどです。
引っ越しにかかる初期費用は、礼金、仲介手数料でそれぞれ家賃一ヶ月分です。
迷惑料は、引っ越しを余儀なくされるための慰謝料です。
それほど多額にはならないでしょう。

4.アパートで雨漏りしてから立ち退き料をもらうまでの対応手順

雨漏りがあった場合の対応方法をお伝えします。

1)雨漏りの状況を記録・保存する

雨漏りしている部分を写真や動画で撮っておきましょう。

  • いつから
  • どこで
  • どの程度

がわかるように記録をします。

2)大家に報告して修繕を求める

大家か管理会社に対して、雨漏りがしていること、その状況を伝えます。
この時、業者を手配して連絡をもらえるようにきちんと話しておきましょう。
修理業者は、現場を確認しに来てくれると思うので、その日取りなどを決めていきます。
また、いつ、雨漏りがあったことを報告したのかがわかるようにしておきましょう。
対応が遅い場合に、いつ申告したのかがわかる証拠が必要です。

3)応急処置をして雨漏りの拡大を防ぐ

大家に連絡したとしても、即日修理できるものではありません。
雨漏りによる被害が拡大しないように、応急処置をできる範囲でしてください。

  • 水受け設置:深型バケツ+吸水マット併用
  • 浸水防止:ポリタンクで段差を作り水流誘導
  • カビ抑制:換気をする、除湿機を漏水周辺に集中配置

あくまでこのような「応急処置」にとどめておく必要があります。
応急処置をなんらしなかったことで損害が拡大したとしても、その拡大部分はあなたの責任となってしまうからです。
なお、釘を打つような修理をしたり、コーキング剤を使用したりなど、業者がするような本格的な修理は避けてください。
その工事が適切であったかどうかで、後々問題となりかねないからです。

4)【大家の対応が不十分な場合】引っ越しを検討し、立ち退き料を求める

大家に連絡しても全く対応してくれない、何度修繕しても改善されなず、その雨漏りが生活に支障をきたす場合は、転居せざるを得ないとして、立ち退き料を求めます。
賃貸契約は、大家があなたに住居用の家を貸すという契約です。
ですが、雨漏りがして住めるような家ではないから、出ていかざるを得ず、その損害分は払ってくださいということです。

5)【大家の対応が不十分な場合】自分で修理を手配するということもできる

物件を結構気に入っているなど引っ越しまでは考えてないという場合です。
この場合は、自分で業者を手配して、修繕してもらうということも出来ます。
次の章で解説します。

5.自分で雨漏りを修繕手配する場合|やりすぎはNG!

自分で修理を手配するということも出来る場合があります。
これまで説明した通り、まずは大家に通知して、一定の期間対応がなされないことが条件です(民法607の2条1号)。
修繕にかかった費用は、もちろん大家負担です(民法608条1項)。
万が一、大家が払ってくれなかったとしても賃料と相殺を求めることができます。
ですが、注意点があります。
後々、その修繕及びその費用が適切であったかが問題となることがあります。
どのような修理をしてその修理費用が妥当であったかがわかる資料を残しておかないといけません。
妥当でなかったとすると、費用が自己負担になってしまうリスクがあります。

6.雨漏りと立ち退きのトラブルを相談する方法

国民生活センターに相談するというのも方法です。
平日だけでなく土日祝日も相談する窓口が用意されています。
雨漏りの対応に関して大家ともめた場合も、裁判外紛争解決手続(ADR)が用意されています。
詳しくは、独立行政法人国民生活センターのホームページをご確認ください。
弁護士に相談するというのも一案です。
ですが、弁護士費用とのバランスを確認ください。
雨漏りによって、

  • 高額な設備が壊れた
  • 事業を行っていて事業の運営ができなくなりその損害が多額に及ぶといった

このような場合でないと弁護士費用の方が高くなってしまいかねません。

7.【要チェック】アパートで雨漏りが起きた場合によくある質問

よくある質問に対する回答です。

1)雨漏りが原因でダメになった家財・家具・家電の弁償はしてもらえる?

原則として、弁償してもらえます。
ただしその額は、その家財道具の時価になり、新品を買える金額とは異なります。
大家は建物の火災保険に入っていて、その附帯として家財などの賠償もできることがおおく、保険対応で払ってくれるでしょう。
雨漏りの責任があなたにある場合は、ご自身の入っている保険が使えるかもしれず、ご加入の保険会社に確認してください。

2)雨漏りが原因の健康被害(アレルギー・喘息悪化)の補償は受けられる?

雨漏りによってカビが生えて健康被害が出た場合、結論としてその補償を受けることができます。
ですが、雨漏りと健康被害の相当因果関係、その損害について、立証責任はこちら側にあります。
この立証が相当困難であるということをご認識ください。

3)雨漏りの修理をしてもらう場合にかかる期間は?

雨漏り修理の期間は、修理する場所によって異なります。
業者さんが来てくれて修理してくれる期間は、アパートの屋根を修理するなら10日ほどかかります。
外壁であれば、足場を組む必要があり、もう少しかかります。
これ以外に、あなた→管理会社→大家→管理会社→業者という連絡の流れになるため、どうしても連絡に期間を要してしまいます。

4)雨漏りが原因で引っ越す場合、違約金は払わなきゃいけない?

「入居1年未満」などの理由で違約金が設定されている場合があります。
雨漏りが原因で引っ越しが避けられない場合は支払う必要はありません。
しかし、そうではない場合は、支払うことになります。
ですが、このような状況であれば、大家と交渉して払わないと交渉してみましょう。
また、敷引きなどの定めがあっても、全額の敷金返金を求めることもありです。

まとめ

アパートで雨漏りした場合に立ち退き料がもらえるかについてまとめます。
原則として、雨漏りが原因で引っ越すことについて、立ち退き料はもらえません。
しかし、アパートの雨漏りは大家が修繕する義務があるところ、その修繕対応が不十分である場合に、立ち退き料(損害賠償)がもらえる可能性はあります。
それは、大家に何度もお願いしているにもかかわらず修繕してもらえない場合、対応しているが雨漏りが治らない場合です。
いずれもかなり例外的な場合になります。
アパートに雨漏りがあった場合は、まず雨漏りの状況を記録します。
次に大家または管理会社に修繕を依頼します。
通常は、修繕してくれてそれで終わりとなります。
なお、修繕に取り掛かるまでに一定の期間が必要です。
その間は、あなたが最低限度で結構ですから、バケツをおく、換気をするなど雨漏り被害が拡大しないようにしてください。

監修者

飛渡 貴之

資格:弁護士/司法書士、土地家屋調査士有資格
所属:弁護士法人キャストグローバル

〒105-0001 東京都港区虎ノ門3丁目4-10 虎ノ門35森ビル1階
相談受付:03-6273-7758
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