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 地主様向け / 貸主様向け 不動産トラブルお役立ちコラム
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借主に貸した不動産を利用する必要が生じたため、立ち退きを求めたい

不動産賃貸借においてもっとも困難な問題の一つとして「立ち退き」の問題があります。この問題は、かつてバブル期に地上げ屋とからみ、社会的にも大きな関心を集めましたが、近年の都市部での不動産価格の上昇などから、再び注目を浴びつつあります。借地借家法によれば、「正当な理由」が認められれば、解約が認められるなどの規定がありますが、その内容については理解が難しいものがあります。ここでは、立ち退きの問題について、解説をします。

目次

契約期間内に立ち退きを求めることは可能か?

不動産を賃貸借する場合の大前提として、契約期間中は、賃借人はその不動産の使用・収益の権利は賃借人に属します。原則的には、賃貸借契約期間中に貸主側からの一方的な解約の意思表示によって、賃貸借等契約を解約することはできません。

契約期間中であったとしても、代わりの物件の手配をすることや、一定の金銭を支払うといった申し出を貸主側が行うことで、借主が立ち退きに合意するといったことはあり得ます。

法的には、双方の不利益がなく合意により解約を行う場合には、原則的には特段の制限がないものと考えられます。ただし、形式的には合意による解約とみられる場合であっても、その手段や方法によっては、有効と判断される場合があります。詳しくは弁護士にご相談ください。

契約期間満了時に解約できるか

契約の中途解約を一方的に行うことができない点については、前項で説明いたしました。それでは、契約期間が満了した場合には、絶対的に契約の終了(解約)をすることが可能なのでしょうか。

この点については、一般的に土地であっても建物(借家、マンション、アパート)のいずれであっても「正当な理由」なしに、たとえ従前の契約期間が満了する場合でも、解約することはできません(借地:借地借家法5、6条 借家:同法26、28条)。

その理由は、契約の目的物である不動産に居住している場合には、政策的に保護を厚くする必要があることや、地上げ等を目的とした強引な契約解約等を防ぐためです。

一方で、商業利用などの事業用の目的で借地契約を行う場合などでは、人が居住する場合よりも、保護の規制を緩めても問題がない場合等があります。現行法の借地借家法には、定期借地権等(更新等がない、期間を定めた借地権)や定期建物新貸借等(更新がない)などの特則が定められています。

借地権を設定している場合に正当な理由が認められる場合とは

原則として借地権を設定した場合であって、借地上に建物がある場合には、貸主は更新拒絶理由がない限り借地契約の更新を拒絶することはできません(法定更新:借地借家法5条等)。ただし、このような場合であっても「正当な理由」が認められる場合には、契約の更新を拒絶すること(解約)ができます。

この正当な理由とは、賃貸人等の自己使用の必要を主たる考慮要素としながらも、借地の利用状況や借地権者等の事情、及び土地の明け渡しと引き換えに借地権者に対して引き渡される財産等を総合的に判断して、その「正当な理由」の有無について判断されます。

実務一般論としては、結局は代理人同士(主として弁護士)の話し合いにより、解決を図り、この段階で合意が得られない場合に、法廷の場(調停・訴訟等)へ至ります。

事業用借地権を設定している場合

事業用借地権を設定している場合(定期借地権等)は、前項に説明したような借地権の場合(普通借地権)とは、事情が異なります。

このように借地借家法23法に規定される事業借地権を設定している場合には、それぞれの契約期間に応じた期間終了後には、契約関係が終了するため、原則的には貸主は立ち退きを請求することができます。

仮に、借地権者が事業用借地権の存続期間が満了した後、その借地の利用を継続した場合は、不法占有となるため、所有権等の物件に認められる一般的な権能により、妨害排除請求権等の行使を行うことが可能です。

事業用借地権の締結は、原則としては書面で行う必要があり、その契約内容を借地権者に説明の上、書面にてその内容を交付する必要があります。このような一定の様式を備えない場合には、事業用借地権の設定を争われる可能性があります。詳細は法的に込み入った内容となるため、弁護士に相談すると良いでしょう。

借家、マンション、アパート等を賃貸している場合の正当な理由とは?

ここまで説明してきたのは、土地(借地)についてですが、その内容は、建物を賃貸している場合も原則的には異なりません。

このようなことから、借家、マンション、アパート等を賃貸している場合に、その賃貸借契約の更新を拒む(法定更新の拒絶)には、正当な理由がない場合には、することができません。この「正当な理由」の判断基準は借地の場合と同様です。

ただし、「建物の賃貸借について期間の定めがある場合において」は、解約の申し入れを行うためには「当事者が期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知」を行う必要があります。

したがいまして、うっかり忘れていて、上記の期間を徒過しているような場合にあっては、借地借家法26条の解約は認められず、賃借人との合意による解約を行うこととなります(違いは、賃貸人側に「正当な理由」がある場合に法的に契約関係の終了をさせることができる場合の有無という点です。)。

定期建物賃貸借等の契約を行っている場合

定期建物賃貸借とは、契約時にあらかじめ期限付きで賃貸借契約を締結する旨の合意をすることであって、通常の賃貸借契約とは異なり法定更新はありません。法定更新とは、賃貸借契約の期間終了前の一定期間内に解約の申し込みをしない場合、自動的に従前と同一内容の条件で契約を更新したものとみなす制度をいいます(借地借家法26条)。なお、法定更新がされたあとは、法的には期間の定めがない賃貸借契約となります。

一方で、定期建物賃貸借の場合には、上記のような法定更新は認められず、原則として、契約に定められた期間が終了することにより、賃貸借契約は終了します。したがいまして、契約期間が終了したにもかからず賃借人が居座るような場合には、不法占有となるため法的な強制措置が可能となります。

所有不動産に使用貸借を認めていた場合

例えば、親族などに建物などを無償で利用することを認めるような場合があります(使用貸借)。このような場合の多くは、特段期間の定めを行うことや、そもそも書面でその内容を定めるような場合は稀といえるでしょう。

したがって、貸主(土地・建物の所有者)は使用貸借の相手方に対して、期間の定めのない場合には、原則的にはいつでも解約を申し入れることができ、引き渡しを請求することができます。また、使用貸借契約は、当事者間の特殊な人的関係等を重視しているといった性質から、借主が死亡した場合には当然に使用貸借も終了となります。

しかしながら、当初は「使用貸借」の形式で利用させていた場合であっても、途中から借主が「無償では心苦しい」といったことから、些少な金銭を支払う旨を申し入れ、貸主がこれを受諾するといった場合があります。

このような場合には、この時点をもって、賃貸借契約の成立と考える余地があり、立ち退きを求める場合に、借主側から争われるポイントとなり得ます。このように、仮に貸主側が使用貸借のつもりであっても、相手側から反論される場合もあるため、弁護士に相談してみると良いでしょう。

まとめ

立ち退き問題とみると、契約期間途中の賃貸借契約を前提としつつも、賃料の不払い等から立ち退きを請求したいといった場合があります。この他にも、商業的にはテナントを入れ替えたい等の要望があることなどがあります。このように、問題は多岐にわたり、非常に難しい論点をはらむため、弁護士にご相談ください。

監修者

飛渡 貴之

資格:弁護士/司法書士、土地家屋調査士有資格
所属:弁護士法人キャストグローバル

〒105-0001 東京都港区虎ノ門3丁目4-10 虎ノ門35森ビル1階
相談受付:03-6273-7758
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