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再開発で立ち退き拒否はできる?迫られた時の対処法を弁護士が解説

貸主から立ち退いてほしいとの連絡が来たが、立ち退きたくない。
どうやら再開発が理由のようだ。
再開発だと立ち退かないといけないのか。
原則として、立ち退かないといけません。
ですが、再開発の種類によって結論が異なります。
そこで、本記事では、立ち退きを拒否できる場合、立ち退きを拒否するためにはどのようにすればいいのか、そのリスクと注意点、立ち退き拒否が難しい場合の対処法、弁護士に相談するメリットを解説します。
【この記事でわかること】
- 法定再開発の場合は立ち退立ち拒否は難しいこと
- 法定再開発出ない場合は立ち退きの拒否できる場合があること
- 法定再開発の立ち退きのを拒否するには、再開発計画そのものを争わないといけないこと
- 法定再開発でない場合は正当事由の問題となること
- 再開発で立ち退き拒否すると行政代執行によって強制的に立ち退かされる可能性があること
- 再開発で立ち退き拒否が難しい場合は立ち退き料をしっかりもらうか適切な権利変換をうけることが最善策であること
- 再開発の立ち退き交渉を弁護士に依頼すると、交渉が任せられて、立ち退き料が増額できるメリットがあること
なお、再開発による立ち退き料の相場について詳しく知りたい方は、「再開発による立ち退き料の相場は?店舗・一軒家別に増額方法も解説!」をご覧ください。
目次
1.再開発による立ち退きを拒否できるのか?基本知識を解説
結論、再開発が(ⅰ)法定再開発なのか、(ⅱ)そうでない再開発なのか確認してください。
(ⅰ)(ⅱ)のどちらかによって、立ち退き拒否のハードルは大きく異なるためです。
- 法的再開発の場合:立ち退き拒否は非常に難しい
- 法的再開発でない(任意再開発等)の場合:立ち退き拒否できる可能性がある
(ⅰ)再開発が法定再開発であれば、立ち退きを拒否することは難しいです。
法定再開発とは、都市再開発法という法律に基づいて、法的な手続きに則って行われる再開発です。
「市街地再開発事業」などといった場合はこの法的再開発に当てはまりますから、立ち退き拒否は難しいと考えましょう。
(ⅱ)一方、国等が一部負担して民間がする優良建築物等整備事業、ある特定の企業や個人が、自分の不動産を開発しなおすという意味で再開発という言い方をする場合があります。
この場合は、法定再開発ではありませんから、立ち退き拒否できる可能性があります。
ただし、再開発の主体が、特定の企業だったら、法定再開発ではなく任意再開発であるから立ち退き拒否ができるということではありません。
民間企業が主体となって法定再開発をすることができますし、多くの事例で民間企業が主体となっているからです。
1)法定再開発での立ち退き拒否は難しい
法定再開発は、都市再開発法という法律に基づいて、法的な手続きに則って行われる再開発です。
イメージで言えば国が後ろ盾になっているようなものなので、立ち退き拒否は非常に難しいです。
目的としても、以下のように「公共のため」という側面があるため、ため、あなたがいくら「ここに済む権利がある」といっても認められにくいのです。
- 地域を活性化させる
- 道路、公園を整備する
- 区画を整理する
- 公共施設を建設する
- 建物の密集を改善し、防災機能を改善する
2)法定再開発でなければ立ち退き拒否できる可能性あり
法定再開発の場合は、国が後ろ盾になって法律で強制的に立ち退かされてしまいます。
ですが、任意の場合は、強制的な立ち退きはできませんから、立ち退き拒否ができる可能性があります。
ですが、どれくらいの割合といわれると、立ち退きが認められる割合の方が高いです。
というのも、優良建築物整備事業であれば、市街地環境の向上や優良な住宅の供給を促進することが目的で、立ち退き料をしっかり払うというスタンスとなるからです。
立ち退きの目的、双方の事情と立ち退き料の額で結果が変わることになります。
2.【パターン別】再開発で立ち退き拒否できるケースと条件
先述のように、再開発は「法定再開発」にあたるのか、そうでないかによって立ち退き拒否のハードルが大きく異なります。
そこで、それぞれのパターン別に立ち退き拒否できる基本条件と、立ち退き拒否できる具体的なケース・事例を解説します。
1)法定再開発による立ち退きを拒否できる条件
法定再開発の場合、立ち退きはかなり難しいと述べてきました。
この場合立ち退きを拒否するためには、その再開発事業計画じたいを争わないといけません。
個々がここから立ち退きたくないという思いは理解できますが、周辺の都市機能改善のために立ち退いてくださいということですから、私だけ(この部分だけ)立ち退かないと計画が進まないため、そのようなことはできません。
事業計画じたいを争うとは、事業計画決定に対して取消訴訟を提起するということです。
計画決定の取消が認められるためには、手続きが法令に違反している、事業決定やその過程における裁量権の逸脱、濫用があった場合です。
現実的に、相手に裁量権がある中でその裁量から逸脱、濫用しているということを立証することは相当難しいです。
ですから、立ち退きを拒否するのではなく、立ち退く条件をなるべくあなたにとって有利にする最大化することに力を注ぐ方が現実的です。
①【立ち退き拒否できるケース①】手続きが法令に違反している場合
再開発の決定を取り消せる1つ目のケースは、手続きが法令に違反しているケースです。
手続きが法令に違反とは、再開発の決定は法律に定められた手続きに則ってされなければならないところ、その手続きに則ってない場合です。
ですが、手続きに則ってない場合は、必ず再開発の決定が取り消されるということではなく、正しい手続きを踏んだとしても結果が変わらなかったのであれば取り消されない可能性が高いです。
②【立ち退き拒否できるケース②】裁量権の逸脱・濫用があった場合
再開発の決定を取り消せる2つ目のケースは、事業決定やその過程における裁量権の逸脱、濫用があったケースです。
裁量権の逸脱とは、客観的に裁量権の範囲を超えること、裁量権の濫用とは、法律の趣旨・目的に合致しないことです。
公園と道路を整備しする再開発において、公園を作る業者に利益を供与したい目的があるなどの目的がおかしい場合、現在その公園を使う人の人数が間違っている、将来の人口予測がまちがいっているなどの事実誤認があるなどの場合です。
2)法定再開発ではない場合に立ち退きを拒否できる条件
国等が一部負担して民間がする優良建築物等整備事業などの任意再開発は立ち退きを拒否できる可能性があります。
これ以外にも、自己の不動産を開発しなおすという意味で再開発で立ち退いて欲しいと言う方もおられるようです。
一般的には、ここで再開発というのは適切ではないのですが、「再開発」というワードを使って言いくるめようとしてくる事業者がいるのも事実です。。
この場合は、一般の立ち退きと同様となり、借主を保護している借地借家法28条による解約の申し出が認められるかということが問題となります。
一般の立ち退きを拒否するためにどうするのかについて詳しく知りたい方は、「賃貸でも立ち退き拒否はできる?権利があるケースと交渉の方法を解説」をご覧ください。
①【立ち退き拒否できるケース①】企業の立ち退き要求の正当事由が弱い
正当事由の強弱で重要な要素は、不動産を使用する理由です。
再開発が目的ですから、貸主、地主が、その不動産に住まなければいけない理由はありません。
個人の利益を目的とした開発であれば、正当事由は弱いといえます。
なお、優良建築物等整備事業など周辺一帯の地主が協力して、地域の競争力を上げようとしている場合は、それよりは正当事由が強くなるでしょう。
②【立ち退き拒否できるケース②】あなたの立ち退き拒否の正当事由が強い
あなたの建物を使用する理由が強い場合は、正当事由が強いといえます。
家族が重病で移動が困難である、最寄りに専門病院があり通院のため離れられない、引越しによって病気が悪化する可能性があるなどです。
3.再開発で立ち退き拒否する場合のリスクと注意点
法定再開発において、立ち退きを拒否していると、最終的に強制的に立ち退かされてしまいます。
組合から「協議に応じないと、行政代執行による強制的な明け渡しの手続きがされる」と言われた方もおられるようです。
協議に応じず立ち退きを拒否したからといって、ただちに強制的に立ち退かされることはありません。
相当長期にわたって協議に応じず、協議に応じない合理的な理由がない場合には、行政代執行による強制的な立ち退きとなります。
・相手主導の期日で立ち退かされてしまう
・行政代執行にかかった費用は払わないといけない
・立ち退き料は受け取れますが増額交渉の余地はありません。
いずれにしても合理的理由がなく頑なに交渉のテーブルにもつかないのは避けてください。
4.再開発立ち退き拒否が難しい場合の2つの対処法
立ち退き拒否が難しいとなった場合には、立ち退きを前提として最善策を考えるのが賢明です。
立ち退きをする場合、再開発の種類にもよりますが、以下の2つの選択肢があります。
- 立ち退き料を受とって立ち退く(用地買収方式)
- 再開発後のビルなどの権利を受けとる(権利変換方式)
それぞれの立ち退き方について解説します。
1)立ち退き料を受け取って立ち退く(用地買収)
従前不動産から立ち退くとすると、用地買収方式で組合に売却して立ち退き料を受け取るか、組合等へ買収する前に第三者に売却してしまうという方法になります。
いずれであっても、従前不動産を現金化するということになりますから、その現金(立ち退き料)を最大化するのが最善策となります。
なお、次に解説する「権利変換」方式よりも、こちらの方法で立ち退く方が無難で、事例としても多いです。
2)「権利変換」をする
その場所から離れたくないという場合は「権利変換」を受けることになります。
権利変換とは、再開発で新たに建てられた建物や土地の権利をもらう方法です。
ですが、元の場所と全く同じところではなく、元の不動産と同じものであることもありません。
従前不動産の評価額と同評価額の評価となる再開発後の不動産を受け取るということになります。
権利変換計画案の確認後、従前不動産の評価が低い、受け取る再開発後の不動産が適切でないと意義を述べ、すみやかに交渉を始めましょう。
権利変換が決まってから変えるというのは相当困難です。
また、再開発は、多数の利害関係人がいて、組合は多数の利害を調整をしなければなりません。
あなたはその多数にうもれることなく、あなたの優先度を高めてもらわないといけません。
なお、従前不動産の評価も重要ですが、受け取る不動産は将来にわたって使用するもので、事業をするとなるとさらに大切です。
ですから、従前不動産の評価にフォーカスしすぎず、受け取る不動産によりフォーカスする方が望ましいでしょう。
店舗と住戸の組み合わせはとても重要です。
5.立ち退き料の相場と交渉ポイント
先述の通り、再開発で立ち退き拒否が困難な場合は、なるべく立ち退き料を多くもらいつつ立ち退くのが得策です。
そこで以下では、立ち退き料の相場と立ち退き料を増額するための交渉ポイントを順に解説していきます。
なお、再開発による立ち退き料の相場について詳しく知りたい方は、「再開発による立ち退き料の相場は?店舗・一軒家別に増額方法も解説!」をご覧ください。
1)再開発による立ち退き料の相場とは?
物件の種類 | 立ち退き料の相場 |
一軒家(持ち家) | 6,000万円程度 |
賃貸(マンション・アパート、一軒家) | 150万円程度 |
店舗兼住宅(持ち家) | 8,000万円程度 |
※1 80㎡の土地(千葉県市川市)、公示地価等を用いて概算にて計算
※2 月額賃料10万円として
※営業所得1,000万円/年として、2年分
再開発時による立ち退き料の相場は、一軒家(持ち家)は6,000万円、賃貸は150万円、店舗兼住宅(持ち家)は8,000万円です。
ですが、具体的な事情によって、立ち退き料は大きく異なります。
法定再開発において、組合等が提示する額は、いわゆる用対連基準に基づいて算出されます。
公共のために多数の方に立ち退き等をお願いするものですから、公平性が重要であるためけっこう細かい基準が存在しています。
2)立ち退き料を最大化するための交渉術
法定再開発の場合、公共の観点が大きく多数の利害関係人がいますから、一人だけ特別扱いを堂々とすることはできません。
一定の幅の中で不公平といわれない増額を目指します。
基準、ロジックはすでにあるので、それに合わせた有利な事実を述べてしっかり交渉しましょう。
相手がこちらの事情をすべて知っていることはありません。
ですから、相手が見落としている事実を主張し、この事実があるから用対連基準に則るとこれぐらいの額になるということです。
特に、事業をされている場合は、組合はその事業の詳細を知っていることはありません。
しっかりと事業にかかる事実を主張し、増額を交渉しましょう。
特に、営業補償において増額が望めるでしょう。
多数の利害関係人がいますから、あなたの優先度を上げてもらうことが大切です。
ですから、放置、無視はしてはいけません。
6.再開発の立ち退き交渉を弁護士に相談するメリット
1)タフな交渉を任せられる
法定再開発において、組合等の交渉はとても大変です。
相手はその専門でありかつ多数です。
こちらは初めてのことであたふたしている中、組合等との交渉は、そうとう精神的な負担が大きいです。
専門的な弁護士に任せることで手ごわい相手に立ち向かうことが出来ます。
精神的な負担もなくなります。
2)立ち退き料の増額できる可能性がある
組合等が提示してきた立ち退き料は増額可能です。
相手の評価を確認し、評価漏れ、評価不足の事実を適切に主張しましょう。
特に事業をされているのであれば、相手はこちらの事業をよくわかっていませんから、適切な事実を述べ、それに関わる補償を求めます。
まとめ
法定再開発の場合は立ち退きを拒否することは難しいです。
法廷再開発でない場合は立ち退きを拒否することができる可能性があります。
この場合は賃貸借契約書の解除が認められるのかという問題であり、借地借家法28条の正当事由があるのかという点です。
立ち退きを拒否が難しいとなれば、立ち退いて立ち退き料を受け取るか再開発後の不動産を受け取るかの2つの方法があります。
立ち退き料を受け取る場合は、出来る限り立ち退き料を増額しましょう。
再開発後の不動産を受け取る場合は、適切な不動産を受け取れるように交渉しましょう。
自分で出来るか不安な方は弁護士に依頼することをお勧めします。
自分の持っている(借りている)不動産が再開発の対象となることはあまりないことかと思いますが、焦らず対応してください。