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賃貸借契約が終了しているのに、賃借人が出ていってくれない場合の対処方法
賃貸物件を貸している場合、契約が終了したにもかかわらず、賃借人が出て行ってくれないことがあります。
この場合、賃借人は賃料も支払わないことが多く、立退きが遅れれば遅れるほど、どんどん損失がかさんでしまいます。
このような場合、どうやって賃借人を退去させれば良いのでしょうか?
今回は、賃貸借契約が終了しているにもかかわらず、賃借人が出て行ってくれない場合の対処方法を解説します。
目次
1.内容証明郵便で明け渡しの催告をする
賃借人による賃料不払いで、大家の側からやむなく賃貸借契約を解除した場合などには、賃借人が、賃料も支払わないのに、自主的に立ち退かないケースが多いです。
このような場合、放置しておくと、新たな賃借人に貸すこともできませんし、賃料は全く入ってきませんから、大家にとっては大きな不利益となります。
無権利の元借主が物件内に居座ってしまったら、まずは内容証明郵便を使って、明け渡しの催告を行いましょう。
内容証明郵便自身に明け渡しの効力などはありませんが、この郵便は、通常の手紙の書式とは異なりますし、各種の請求書や裁判の予告などに使われることも多く、相手にプレッシャーを与えることができます。
「本書到着後10日以内」など期限を切って、立ち退きを求めましょう。「万一自主的に立ち退かない場合には、訴訟提起を検討しています」ということも書いておくと良いです。
それにより、相手が自主的に出ていく可能性があります。
2.訴訟を起こす
内容証明郵便によって契約の解除通知を送っても相手が立ち退かない場合には、裁判所の「強制執行」の手続を使って退去させなければなりません。
ただ、強制執行をするためには、裁判所から賃借人に対する「明け渡し命令の判決」が必要です。
既に賃借人の賃料不払いによって、契約解除と明け渡し訴訟を終えているケースでは、賃貸人が手元に明け渡し命令の判決書を持っているでしょうけれど、合意解約で(裁判外で)契約終了を確認しただけのケースでは、手元に判決書がありません。
このように、法的に「契約終了」と「退去命令」が法的に有効になっていない場合には、まずは相手に契約解除と立退き請求訴訟を起こして、裁判所による明け渡し命令の判決を出してもらう必要があります。
事前に話し合いをしたときには賃借人が明け渡しに合意していても、裁判を起こすと、解除の有効性を争って、契約の継続を主張してくることなどもあるので、注意が必要です。
賃貸借契約では、賃借人が強く保護されるので、契約の解除や更新拒絶の有効性は認められにくくなっています。契約を解除するためには、事前にしっかり証拠を準備して、慎重に裁判を進めていかなければなりません。
3.強制執行を申し立てる
3-1.明け渡し断行の強制執行とは
明け渡し請求訴訟によって相手に対する退去命令の判決が出たら、その判決書を使って、強制執行を申し立てることができます。
この場合の強制執行は「明け渡し断行の強制執行」です。明け渡しの断行の強制執行を申し立てると、裁判所の「執行官」の助力を得て、法的なお墨付きのもと、強制的に賃借人を退去させることができます。
3-2.明け渡し断行の強制執行の申し立て方法、流れ
明け渡し断行の強制執行を行うときには、まずは判決書と送達証明書、執行文を入手して、執行官宛に、明け渡し断行の強制執行の申立書を提出します。
そして、執行官と打ち合わせをして、日時を調整して、現地に行き、相手方への立ち退きの催告を行います。実際に賃借人が現地にいないことも多いですが、その場合には、明け渡し断行を行う予定日と、明け渡しの期限を書いた貼り紙を物件内に貼り付けます。
また、執行補助者を雇う必要もあります。執行補助者とは、物件のカギを開けたり荷物を運び出したりなどの作業を行う業者です。
そして、明け渡し断行日までに、賃借人が明け渡しをしない場合には、当日、執行官と現地に行って、荷物などを運び出し、強制的に賃借人を退去させることになります。
以上のように、大家の側が「賃貸借契約は終了している」と思っていても、賃借人が自主的に退去しなければ、実際に退去させるために、訴訟や強制執行の手続が必要になります。
こういった手続きは非常に専門的であり、素人の方には難しいものです。
繰り返しになりますが、賃料の未回収は、大家さんにとって、利回りを下げる、大きな要因になります。ローンの返済が残っていれば、それ以上の問題となります。大切なことは、迅速に対応することです。賃料不払い等によって賃貸借契約が終了する等、すみやかな退去が見込まれない場合は、出来る限り早くご相談いただくことをお勧めします。