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 借主様向け 不動産トラブルお役立ちコラム
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賃貸でも立ち退き拒否はできる?権利があるケースと交渉の方法を解説

大家(貸主)から立ち退いて欲しいという連絡が来た。
皆さん立ち退きたくないですよね。
結論として、立ち退かないでよい可能性はあります。
ですが、貸主の事情、あなたの事情などによる「正当事由」によって異なります。
この正当事由が「強いか弱いか」によって、立ち退かなければならないかどうかが変わってきます。
どのような場合には、立ち退かなくてよいのかということを解説します。
ただし、正当事由が強い場合は、立ち退かないといけません。
そこで、本記事では、立ち退きを拒否できる場合とは、立ち退きを拒否するためにはどのようにすればいいのか、そのリスクと注意点、裁判例や立ち退き拒否の流れを解説します。

【この記事でわかること】

  • 立ち退きを拒否することはできる可能性があること
  • 立ち退き拒否ができる条件は、正当事由が弱いこと
    • 貸主の正当事由が弱いケース
    • あなたの正当事由が強いケース
  • 立ち退き拒否をするためにできることは、正当事由を確認して、しっかり理由を訴え、合意をえること
  • 立ち退き拒否した場合は訴訟等のリスク、注意点があること
  • 立ち退き拒否の裁判例
  • 立ち退き拒否の流れ
  • 立ち退きに強い弁護士に依頼するメリット3つとデメリット1つ
    • 立ち退きを拒否できる可能性があがる
    • 交渉から裁判まですべてを任せられる
    • ストレスのかかる交渉から解放される
    • デメリットは弁護士費用

なお、立ち退き料の正当事由について詳しく知りたい方は、「立ち退き・退去の正当事由!借地借家法と貸主都合の判例をもとに解説」をご覧ください。

目次

1.賃貸でも立ち退きを拒否することは可能か?基本知識を解説

結論として、賃貸でも立ち退きを拒否できる可能性はあります。
ですが、必ず拒否できるということではなく、あなたと貸主の事情などによって異なります。
では、どのような場合に拒否できるのかを順を追って解説していきます。

1)貸主が立ち退きを要求する理由

まず、貸主はどのような場合に立ち退きを要求するのかというと、次のような理由です。

  • 建物が老朽化していて建て替え、耐震補強工事をしたい
  • 建物を建て替えて投資物件として魅力のあるものにしたい
  • 周辺地域で都市を整備したい(再開発)
  • 貸主自身がそこに住むことになった
  • 貸主の親族がそこにすむことになった
  • 借主と馬が合わない(出て行って欲しい)

貸主は、何かしらその不動産を使用する理由があるか、あなたとの折り合いが悪く出て行ってもらいたいと思っているかいずれかでしょう。
ですが、賃貸借契約の期間が終了するタイミングで、貸主が立ち退いて欲しいと思えば、立ち退かないといけないということではありません。

2)貸主が立ち退きを要求する理由が「正当事由」にあたるか

貸主が自己都合で借主を立ち退かせることが出来るとなると、借主は不安定な地位におかれることになります。
そこで、借地借家法28条は、借主に一定の保護を与えています。
立ち退きが認められるには、賃貸借契約を解除して借主に立ち退いてもらうことに「正当事由があると認められる」場合でないといけません。
正当事由とは、借地借家法28条に次のように定められています。
「建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合」でなければ解約の申し入れはできない。
引用元:借地借家法28条

つまり、貸主が建物を使用する理由、借主が建物を使用する理由などによって、立ち退いてもらうことが仕方ないと思える場合ということです。

2.立ち退きを拒否できる条件と具体例

具体的にどのような場合に立ち退きを拒否できるのかを解説します。
結論、立ち退きを拒否できるのは、貸主の建物を使用する理由などと借主の建物を使用する理由などを比較したときに、借主の理由の方が強い場合です。
貸主の建物を使用する理由など<借主の建物を使用する理由など
この関係にある場合に立ち退きを拒否することが出来ます。
この関係になるためには、貸主の建物を使用する理由などが弱いか、借主の建物を使用する理由などが強いかのいずれか、またはその両方であることが必要です。

1)貸主側の理由(正当事由)が弱いケース

貸主側の正当事由が弱い場合とは、具体的に次のようなケースです。

  • 家賃を上げるため新築に建て替えたい
  • 木造2階建のアパートをRCのマンションに建て替えたい
  • 設備が古いためフルリフォームしたい
  • 借主を変更して家賃を上げたい
  • 特に危険がないが老朽化しているから建て替えたい

これらは主に貸主側の一方的な都合であり、借主を追い出してまですることではないと判断されることが多いものです。

2)借主側の「正当事由」が強いケース

他方で、借主側の正当事由が強い場合とは、具体的に次のような場合です。

  • 借主が病気を患っていて専門病院が近くにあり転居が病状を悪化させかねない場合
  • 借主が資力がなく勤務地などの関係で遠くへの引越しが難しい中、同程度の物件を同程度の家賃で探すことが出来ない
  • 借主がその不動産で事業をして生計を立てていて、移転しては事業が成り立たない場合

これらの事情は、借主がその不動産を使用することに強い理由があり、貸主側の一方的な事情で立ち退かせるのは相当ではないと判断されることが多いものです。
立ち退き料の正当事由について詳しく知りたい方は、「立ち退き・退去の正当事由!借地借家法と貸主都合の判例をもとに解説」をご覧ください。

3.立ち退きを拒否するためにできること

立ち退きを拒否するための手順を解説します。

1)貸主の「正当事由」の有無を確認する

まず、貸主が立ち退きを求める理由が正当事由あたるのかを確認します。
相手の正当事由が弱くないかを確認しましょう。
例えば、貸主が、建物が老朽化しており建て替えが必要であるから立ち退いて欲しいといわれた場合です。
貸主に対して老朽化の程度、その修繕方法を確認してください。
違法建築であったり、震度6程度で倒壊するほどのものでなければ、建て替えは必要がなく、立ち退きまでは不要といえます。
また、老朽化が進んでいて修繕が必要であっても、建て替えまで必要ない、借主が住んだままでも施工可能、一定期間家を空けてもらえば施工可能という場合は、立ち退きまで不要となります。
貸主が主張する理由とその根拠をしっかりと確認します。

2)立ち退きたくない・立ち退きできない理由を訴える

次に、あなたの事情をしっかりと正当事由が強いということを絡めて伝えます。
あなたやその家族が病気をもっている、転居しては子どもの学区が変わってしまう、資力がなく転居ができないなどその不動産に住む必要が強くあることを伝えます
利用が住居であって、その場所に住むことに強い理由があることを訴えます。
または、その不動産で事業をして生計を立てていて、転居しては収入に大きな影響を与えて生活が成り立たなくなるかもしれないことを訴えましょう。
あなたがその不動産を使用する理由を正当事由に当たるように訴えます。

3)立ち退きを回避するための合意形成

そして、相手の事情を考慮した代替案を提案しましょう。
例えば、老朽化で修繕が必要であれば、その老朽化の修繕の期間のみ出て行く提案です。
または、あと4年で子どもが中学校を卒業するのでそのタイミングまで待ってほしいとか、あと数年で家業をたたんで隠居するのでそのタイミングまで待ってほしいなどです。
貸主とあなたの双方が納得できる解決策を見つけるアプローチです。
相手の目的を立ち退くという手段以外で実現できないかを検討してください。

4.立ち退きを拒否する場合のリスクと注意点

立ち退きを拒否する場合のリスクと注意点をお伝えします。

1)貸主や管理会社との関係が悪化する

賃貸借契約は継続的な契約であり、貸主(管理会社)とのお付き合いも継続的に発生します。
相手の要望を拒否することで、一定の関係悪化は避けられません。
ですが、必要以上に関係が悪化することは避けましょう。
例えば、高圧的に対応する、感情的になって冷静さを欠いた対応をするなどです。
相手は、交渉を打ち切って裁判をしてくることもあり、結果のコントロールが難しくなります。
また、その程度によっては、賃貸借に関する従前の経過の内容として、貸主の正当事由の一部となり、貸主の正当事由を強くしてしまう可能性があります。

2)強制執行や裁判に発展する

貸主が立ち退きを求めて調停・訴訟を申し立てる可能性があります。
これが必ずあなたにとってマイナスになるとは限りません。
ですが、まず交渉してあなたにとってメリットがある方向を模索してみるのが良いでしょう。
したがって、立ち退きを拒否するとしても、断固立ち退きを拒否し、いかなる交渉も受け入れられないというような言い方をするのは避けましょう。
相手は裁判を提起するか立ち退きを諦めるかの二択しかなくなってしまい、裁判に発展する可能性が高くなります。

5.立ち退き拒否の裁判例

1)成功事例:立ち退きを拒否して権利を守ったケース

事案の概要:東京地方裁判所(令和6年1月31日)

マンションに、単身で居住しており、家賃は7万2,000円でした。
貸主は、本マンションは法令違反があること、老朽化で安全性が欠如しているため、建て替えが必要であるとして、立ち退き料250万円を支払うとして立ち退きを求めた。
借主は立ち退きに応じなかったため、貸主は訴えを提起した。

結果:

貸主に取り壊し後の具体的な計画がない。一方で、借主は、離婚後不安障害の治療をしており相談先が近隣にある。
また、法令違反、老朽化ともに建て替えまでは必要がない。
立ち退き料250万円を提示しているとしても、正当事由があるということはできない。
したがって、立ち退く必要はない。

コメント

貸主が建物を使用する理由等がかなり小さいと評価されました。
一方で借主は、資力に乏しく病気もあったことで、建物を使用する必要があるとされました。
立ち退き料は、それらを補填するには足りないということです。

2)失敗事例:立ち退きを拒否した結果、立ち退きが認められたケース

事案の概要:東京地方裁判所(令和5年8月28日)

マンションに、単身で居住しており、家賃は5万3,700円でした。
貸主は、借主は用法順守義務に違反し(ごみの放置、漏水の放置)、合計18万8,700円の賃料の滞納があったことから立ち退きを求めた。
借主は立ち退きに応じなかったため、貸主は訴えを提起した。

結果:

借主は、ごみの放置、漏水の放置など適切な利用を行っていないし、賃料の滞納もあることから信頼関係が破壊されているとして、賃貸借契約書の解除を認め、立ち退きを容認した。
これに加えて、滞納の家賃、解除日以降から明け渡しまでの倍額の家賃の支払いも認容した。

コメント

賃貸借契約書で定めた互いの義務を怠ることは大きなリスクを伴います。
建物の使用方法に定めがあればそれを遵守し、どうしても他の用法で使いたいのであれば、あらかじめ貸主からOKをもらわないといけません。
家賃の滞納も大きな問題です。

6.立ち退きを拒否の流れ

立ち退きを拒否する場合の流れは次の通りです。

まず、貸主から契約更新はしない旨の連絡が届きます。
これは、契約期間満了の1年前から半年前までの間に届くことになります。
それに対して、あなたから立ち退きたくない旨の連絡をします。
ここから、貸主と立ち退きについて交渉を開始します。
立ち退きたくないということで合意できた場合は目的達成です。
ですが、交渉が決裂した場合は、貸主が立ち退きを諦めるか貸主が調停・訴訟等をしてくる
かいずれかになります。
あなたが勝訴したら、立ち退き拒否成功です。
ですが、あなたが敗訴した場合は、立ち退かなければなりません。

7.立ち退きに強い弁護士への相談も検討しよう

立ち退きを拒否するのはそう簡単ではありません。
そこで、立ち退きに強い弁護士に相談・依頼することも検討して下さい。
依頼するメリットは3つ、デメリットは1つあります。

1)立ち退きを拒否できる可能性があがる

立ち退きを拒否できるかどうかは、正当事由の判断がメインとなります。
正当事由の判断はとても専門的です。
この点、弁護士に任せることで、あなたにとってメリットがあるように評価をします。
そして相手に対して正当事由が不足している旨をしっかり伝えることができます。

2)交渉から裁判まですべてを任せられる

立ち退きの連絡を受けてから貸主さんと話が始まります。
そして、結論が出るまで交渉から訴訟まで様々な対応が必要となります。
この点をすべて弁護士に依頼して任せることが出来ます。

3)ストレスのかかる交渉から解放される

貸主との交渉が一つの大きな仕事となります。
自分のことを交渉することはとてつもないストレスです。
相手と直接話すということだけでも、大きなストレスとなります。
これに加えて、自分の住まいが変わってしまうという大きな話となります。
そこで、弁護士に依頼することで、相手と直接やり取りする必要性がなくなります。
ストレスから大きく解放されます。

4)デメリットは弁護士費用

デメリットとなるのは、弁護士に支払う費用です。
立ち退かなくてすめば、大きな利益とはいえるのですが、お金が入るわけではないですから、弁護士費用を払ってもメリットがあるのかを考えないといけません。
まずは、立ち退きに強い弁護士に相談されて、費用を含めて検討されることをお勧めします。

まとめ

これまで解説してきた立ち退き拒否はできるのか、できる場合、そのリスクなどをまとめます。
まず、立ち退きは拒否できる可能性がありますが、それは正当事由によります。
貸主の正当事由の強弱、あなたの正当事由の強弱を確認してください。
具体例や裁判例を示していますから、それに当てはめてみてください。
立ち退きを拒否することにリスクや注意点があります。
感情的に対応して断固立ち退きを拒否することはあまり適切な方法ではありません。
立ち退きの流れを説明しています。
すこしでも不安があれば、立ち退きに強い弁護士に相談してください。
弁護士に依頼するメリット・デメリットがありますが、まずは相談してしっかり検討してベストな選択をしましょう。

監修者

飛渡 貴之

資格:弁護士/司法書士、土地家屋調査士有資格
所属:弁護士法人キャストグローバル

〒105-0001 東京都港区虎ノ門3丁目4-10 虎ノ門35森ビル1階
相談受付:03-6273-7758
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