- 最終更新:
賃貸人がいろいろ理由をつけて、敷金の返還をしてくれない場合の対処方法
賃貸アパートなどを借りて利用している場合、契約当初に貸主に対して敷金を差し入れていることが多いです。敷金は、基本的には契約終了時に返還すべきものですが、賃貸借契約で、「敷引き特約」をつけられていたり、契約終了時に賃貸人からさまざまなことを言われたりして返還してもらえないケースがあります。
今回は、賃貸借契約終了時、賃貸人が敷金の返還に応じない場合の対処方法について、解説します。
目次
1.敷金は、返還しなければならない
賃貸借契約を締結するときに差し入れることの多い「敷金」とは、どのような意味合いを持つものなのでしょうか?まずは、敷金の法的性質を確認しましょう。
敷金は、賃貸借契約における賃借人の債務を担保するために差し入れるお金です。
たとえば、賃借人が賃料を支払わなかったり、契約終了時に原状回復が必要になったりすると、賃貸人は、敷金から差し引くことができます。
このように、賃借人の債務を担保するためのものですから、契約が終了して担保の必要がなくなったら、賃貸人は賃借人に対して敷金を返還しなければなりません。
2.敷引き特約の有効性
ところが賃貸借契約においては、賃貸借契約終了時に、敷金から一定額を差し引くことを内容としている「敷引き特約」がついていることがあります。
敷引き特約とは、実際に敷金から差し引くべき賃借人の債務がなくても、当然に敷金から一定額を差し引くという特約です。全部差し引くことになっている敷引き特約もあります。
そこで、敷引き特約がついていると、契約終了時において、賃貸人から強制的に一定金額を差し引かれてしまいます。
このような敷引き特約は、有効なのでしょうか?
この点については、多数の裁判例が出ており、判断が割れていましたが、最終的に最高裁による判決が出ています。
平成23年3月24日、最高裁は、「賃貸借契約における敷引き特約も一応有効であるが、建物の通常損耗の補修費用として一般的に想定される額や賃料の額、礼金授受の有無や金額等に照らして、敷引き額が高額過ぎる場合には、基本的に消費者契約法10条によって無効になる」と判断しています。
この判例からすると、敷引き特約により、一方的に敷金を(ほとんど)全部返還しない、などとすることは、認められないことになります。
3.原状回復義務の範囲
また、敷引き特約がついていないにもかかわらず、賃貸人が「原状回復義務」を盾にして、敷金を返さないことがあります。
原状回復義務とは、賃借人が物件を元の状態に戻して返還しなければならない義務です。
しかし、原状回復義務の内容には「通常の経年劣化による損耗」分は含まないと考えられています。
つまり、通常の年月の経過や使用による傷みなどについてまで補修する必要はなく、賃借人が特に傷めた部分だけ直して返せば良い、ということです。
そこで、大家が「物件の状態を完全に元に戻す」ことまで要求してきているならば、法的な理由が存在せず、必要な範囲を超える敷金からの差引はできません。必要な範囲を超える部分については、賃借人は賃貸人に対し、返還請求できます。
4.敷金を返してもらえない場合の対処方法
以上のように、敷引き特約があってもなくても、賃借人は賃貸人から敷金を返してもらうことができます。
賃貸人が敷金返還に応じないならば、まずは内容証明郵便を使って、敷金返還請求をしましょう。
それでも返還に応じない場合、返還請求すべき敷金の金額が60万円以下ならば、簡易裁判所で「少額訴訟」をすることをお勧めします。少額訴訟であれば、通常訴訟と比べて迅速かつ簡単に判断が出て、効率的に敷金を返してもらうことができるからです。1日で判決まで出してもらうことができますし、相手が従わない場合には、強制執行(差押え)も可能です。ただし、少額訴訟をするためには、請求金額が60万円以下である必要があります。
敷金の金額が60万円を超える場合には、通常訴訟が必要となります。
通常訴訟をするときには、専門的な対応が必要となり、素人の方が自分で対応しようとしても、不利になるので、法律の専門家である弁護士によるサポートが必須となるでしょう。
キャストグローバルでは、弁護士による電話相談を無料で受け付けております。安心して、ご相談下さい。