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瑕疵担保期間が過ぎてから問題が発生したときの対処法
瑕疵担保責任とは、売買した目的物の中に当事者が認識していなかった欠陥があった場合の、売主の担保責任のことを言います。瑕疵担保責任の期間は、民法の規定によると「引き渡したときから1年間」といった考え方になります。
他方で、瑕疵担保責任を超えてしまった場合にはどうすれば良いのでしょうか。その内容についてご説明いたします。なお、ここでは、主として不動産に関する瑕疵担保責任を中心に記載いたします。
目次
瑕疵担保責任の期間及び内容について
ひとくちに瑕疵担保責任といっても、その期間や内容などについては、当事者が事業者であるのか、宅建業者であるのか、または一般消費者なのかによって異なります。そのほか、契約書の内容によっても異なります。
民法に定められた瑕疵担保責任は、引き渡しを受けたものに存在している隠れた欠陥などがあった場合に、契約の解除(その契約の目的を達することができない)、減額請求、損害賠償の請求ができます。
また、その請求期間の制限(一般に除斥期間:時効期間とことなり時効の中断(更新)といったことがない)として、欠陥などの事実を知った時から1年間とされています(民法566条参照)。
中古住宅等のように、不動産会社等の宅建事業者が売主となり、買主が一般の消費者である場合には、瑕疵担保責任を2年以上としないような契約内容である場合は、そのような規定は無効と解されます。
他方で、当事者が双方とも一般消費者であり、不動産会社などの宅建業者が仲介を行うような場合には、原則的には民法の規定が適用されますが、詳細には各契約書の内容によります。
引き渡し後、数年を経過していた場合について
中古で購入したマンションにおいて、購入時には気づかなかったけれども、数年後に隠れたひび割れ等が発見された場合には、どのような請求ができるのでしょうか。
まず、民法上の規定を見ますと「買主が事実を知ったと時から1年以内」(民法566条3項)との文言から、ここに例示した場合のように、数年後に隠れた欠陥に気づいた場合であっても、「事実を知ったときから1年以内」であることから、原則的には売主に瑕疵担保責任を追及することができるものと考えます。
では、その内容はどのようなものでしょうか。
民法の規定によれば、契約の解除か損害賠償の請求ができる旨の規定があります(民法566条参照)。他方で、隠れた欠陥がある場合には、民法上の解釈としては、その補修等を請求することはできません。
法律上の責任としては、売主に対して修繕などを求めることは困難なものと考えられます。しかしながら、修繕をした上でそれを損害として賠償を求めることは可能です。
新築物件と中古物件の担保責任の期間の違い
ここまでは、不動産建物における、新築・中古を区別せずにご説明してきました。しかしながら、建売住宅の販売などのように、不動産業者が新築物件を販売する場合には、住宅瑕疵担保履行法11条などにより、基準日前10年間につき瑕疵担保責任を負担します。
基準日とは、3/31及び9/30の2つの基準日があり、この基準日より前に新築住宅を販売した場合に、その瑕疵担保責任を負担します。
しかしながら、一部の業者において、新築の販売であっても、瑕疵担保責任を逃れる目的等から、一旦、他の不動産業者に所有権を移転してから、消費者に販売するといった手法がとられる場合があります(このような手法を物件を「持ってもらう」などと不動産業界では言います)。
このような場合には、仮に、その物件に欠陥があった場合などに「新築」かどうかにつき、法的な争いが生じる可能性があります。このような場合には、弁護士にご相談ください。
瑕疵担保がある場合に修繕を請求できないのか?
それでは、隠れた欠陥(瑕疵担保)がある場合でも、売主に修繕を請求することができないのでしょうか。
こうした理解は正確ではなく、正しくは契約書の記載内容によります。一般的な契約書の様式であれば、物件の引き渡し後、何年間について欠陥があった場合には修繕を行うといった契約条項がある場合があります。
また、新築の住宅等の場合には、数年ごとに住宅の点検を行い、その時点で欠陥等が見つかった場合には、一定の条件のもと修繕を行うなどといった、「品質保証」をしている場合もあります。
すなわち、契約条項及びその他の法律の解釈上の問題であることが少なくはありません。このようなことから、疑問に感じた場合には、不確かな情報でご自身で解決されようとせず、弁護士にご相談いただくことが最良の方法です。
事業者が悪意をもって、欠陥または設計どおりの品質の住宅等を引き渡した場合
これまでは、隠れた欠陥を売主自体が知らない場合を前提にご説明してきましたが、近年生じたレオパレス21問題などのように、当初から、売買の目的物に欠陥等があるのを知った上で引き渡しを行うといった場合があります。
このような場合には、法律上の処理としては、ここまで説明してきた瑕疵担保責任の問題ではなく、主として「債務不履行責任」の問題としての扱いを受けます。
債務不履行責任とは、契約上の義務があるにもかかわらず、その義務の内容に即した債務の履行を行わないことをいいます。レオパレス21問題に当てはめてみると、本来は、一定の品質のアパートの建築の施行を約束しておきながら、故意に断熱材の量を減らしたり、防火上必要な構造に関しての重要な施行を行わない等の状態で、アパートを引き渡すような場合です。
このような場合には、債務不履行責任を追及できることが可能であることから、契約上の条項によらず、欠陥箇所の修繕などを請求することが可能であり、また、併せて損害賠償の請求等ができる可能性は高いものと思われます。
結局、瑕疵担保責任の期間を超過したらなにも請求できないのか?
レオパレス21問題のように、瑕疵担保責任の問題ではない責任を追及できる場合があります。したがいまして、一般に瑕疵担保責任の負担期間を超過する場合であっても、場合によっては補償の対象となる場合があります。
具体的には、事業者が販売したような場合においては、民法の他に、宅建業法や消費者契約法の適用があります。
例えば、消費者契約法の適用がある場合には、消費者にとって不利な条項は原則的には無効と解されることから(消費者契約法8条1項5号等)、たとえ契約条項上は、瑕疵担保責任の期間が過ぎているように考えられても、法的には異なる判断となる場合があります。
まとめ
瑕疵担保責任の問題は、専門家の間でも難しい論点を含む問題です。ここでは触れませんでしたが、コンピュータソフトの瑕疵担保責任等の場合には、ここでご紹介した内容と異なる論点があります。このほかにも、瑕疵担保責任とは、その売買の目的物や当事者、及び契約内容により種々あることから、疑問に感じた場合にはすぐに弁護士にご相談いただくことをお勧めします。