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住宅ローンを完済したら登記しないといけないのは何故か
住宅をローンで購入した場合、通常はそのローンの完済をした後のことなど考えないものです。住宅ローンは短くても10年長いばあいには35年と非常に長期にわたります。また、ローン返済中は毎月引き落としがあり気に掛けていますが、ローンを完済したあとは、毎月の引き落としがありませんから、通常関心が低くなります。
ローン完済すると、銀行などの金融機関から、完済のお知らせが来て登記についての記載があるのが普通ですが、しっかり読まないと、登記しないといけないといった発想に結びつくひとは少ないでしょう。この記事は、住宅ローンは完済するだけではいけない理由について、説明していきます。
目次
「住宅ローン×登記』ってなんでしょうか
一般に住宅を購入しようといった場合、数千万円にも及ぶ現金を保有しているひとは珍しく、銀行等の金融機関を通じて住宅ローンで購入するのが通常です。金融機関などで住宅ローンの契約を結ぶ場合、必ず結ぶ契約が2つありあます。その契約とは、「金銭消費貸借契約」と「抵当権設定契約」です。金銭消費貸借契約とは、「お金を借りたので、一定の金利を付して期間内に弁済いたします。」といった内容を約束する契約です。
一方、抵当権設定契約とは、普通、銀行等の金融機関は担保を取らずに、数千万円の貸出しを行うことはありません。住宅ローンとは、まさにその住もうとする住宅を物的担保として差し出して、金融機関から住宅購入資金を借りることとなり、その購入した住宅及びその土地、新たに建てた住宅及びその土地に、担保権を設定します。この担保権を「抵当権」と言います。この抵当権の設定のため、別途、抵当権設定契約の締結を行います。
そして、通常は、住宅ローンの実行日(=住宅の購入日)に「決済」と呼ばれる手続きを行い、購入住宅に対し、法務局において所有権移転登記と抵当権設定登記を行います。
つまり、住宅購入時に抵当権の設定登記を行うことになります。そうすると、そのローンを完済した場合、別途、抵当権の抹消登記手続きが必要だということです。
なぜ抵当権抹消登記を放置してはいけないのか
住宅ローンを完済した場合、実体的には、過去に設定した抵当権の効力は消滅しています。しかしながら、その「消滅した」という事実は、法務局側は知りません。登記手続は、原則として、申請主義であって、当事者からの申請がない登記を、法務局が職権で登記を行う、勝手にやってくれるということはありません。
つまり、本当は、既に権利としては、消滅しているのに、登記記録上はあたかも今でもその担保権が、購入した住宅に及んでいるかのように見えます。抵当権は抹消登記申請を行なわないと、ずっと、その登記簿に記載されつづけ、自動で消えることはありません。
抵当権が登記されたままだと売却できない?
抵当権が登記簿から抹消しない場合のデメリットとしては、子どもが独り立ちして、夫婦二人で小さい住宅へ移り住むから、現在の家を売却しようとおもっても、抵当権が残っている状態では買い手が付きません。
売却ができないわけではなく、抵当権が登記記録上のこっていても購入していいという方は少なく、法律に詳しい人であればその手間も踏まえて購入してくれる方はいます。実体的には、既に抵当権が消滅しているのですから、大丈夫ということです。しかし、通常は、住宅売却をする所有権移転登記を申請する前に、抵当権の抹消登記を申請することになります。
抵当権抹消登記を放置していたら書類を紛失?
めでたく、住宅ローンを返済しおわると、金融機関から住宅ローンの完済の通知とともに、抵当権抹消登記に必要な資料(登記識別情報通知や委任状)が送付されてきます。注意すべきは、長期間放置していた場合、これらの書類を紛失してしまうことです。書類の原本が必要となるため紛失すると手間です。「再発行をお願いすれば良いのではないか」と一般の方は、考えるとおもいますが、ただただ手間がかかるということ、上記書類のなかで、「登記識別情報通知」は、(原則として)絶対に再発行はされません(※)。また、放置している間に、金融機関が統廃合されて法人格が変わってしまって、手続きや問い合わせに、長い時間がかかるということもあります。銀行以外から借りた場合は、倒産廃業しているなんてこともありますから、厄介です。
不動産登記申請は、権利が抹消する登記を伴う場合には、その抹消登記義務者は(=銀行等の金融機関)抵当権設定時に通知される「登記識別情報」を提出または提供しなければなりません。
したがいまして、上記の書類のうち、とくに「登記識別情報通知」を紛失した場合、そのままでは登記申請を行うことができないので、本人確認情報を司法書士に作成してもらうか、または、事前通知制度を利用した登記となります。
この説明を見ただけで、一般の方はうんざりされるかと思いますが、うんざりするのは、気持ちだけでなく、仮に司法書士に抹消登記の依頼をした場合の費用が、数万円上がってしまいます。
※登記識別情報通知の発行段階で、その発行にかかる通知書の不具合で、目隠しシールがはがれないといったものがあり、この場合には特例として再通知してくれる場合があります。
抵当権を放置していたら金融期間がなくなった?
住宅ローンを完済したにも関わらず、長期間にわたり抵当権抹消登記を申請しないと、借入先の金融期間が合併などをして、消滅してしまう場合があります。
弁済が先で、合併が後の場合には、別途変更証明書を添付することによって、抵当権抹消登記を行うことができます。一方、抵当権の抹消登記前に合併した場合には、合併による抵当権移転登記の申請が必要となり、一般的にはこのレベルとなると、自分で登記をすることが困難となります。(通常の抵当権抹消登記は、自分で登記申請することも可能です。)
まとめ
少々専門的な説明もしてきましたので、難しい内容であったかもしれません。しかし、いずれにしても、住宅ローンを返済した場合には、なるべく早く、抵当権の抹消登記を行った方が良いということは、ご理解頂けたかと思います。本稿では扱いませんでしたが、さらに相続が絡むことも珍しくなく、関係当事者がいたずらに増えてしまい、手続きが煩雑になるだけでなく、余計な紛争が生じます。
住宅ローンを完済したらすみやかに抵当権抹消登記をしましょう。