OEM契約書について
企業が自社商品の開発・製造を他の企業に委託して、供給を受ける契約のことを「OEM(Original Equipment Manufacturing)契約」といいます。企業がメーカーに対して自社製品の開発・製造を委託する場合や、メーカーが依頼主の注文に応じて依頼主のブランド製品を受託製造する場合などがOEM契約にあたります。完成した製品は、依頼主の商標やロゴをつけて販売することが特徴です。
OEM契約では、完成した製品を依頼主のブランド製品として販売することが目的となるため、他社とのアライアンス範囲や知的財産権の取り扱いなどでトラブルに発展するケースも少なくありません。当事者のトラブルを防ぎ、円滑な取引を継続できるよう、OEM契約書に重要事項を詳しく明記しておくべきといえるでしょう。
こちらでは、OEM契約書の仕様や作成する際のポイント、参考となる契約書のひな形についてまとめています。
- 自社ブランドの製品の製造を他社に委託することをOEM契約といいます
- 受託者は、委託者の指示する仕様に従って製造しますが、企画・設計も受託者が行う場合もあります
- 製造を委託する製品の仕様については、仕様書等を添付する等して明確に定めることがポイント
- 大量生産を行う場合は、最低購入数量を規定する場合もあります
- 受託者は自社ブランドを守るために秘密保持について規定することが重要
- 納入時の検査の方法・不合格だった場合の取扱い等についても規定しておくことが必要
OEM契約書(生産提携契約書)とは
OEM契約の締結に用いられるものを「OEM契約書」といいます。
OEM契約は、自社のブランド製品の開発・製造を他社に委託する契約のことを指しますが、具体的には以下の2つのケースがあります。
- 依頼主(委託者)に製品開発の技術や設備がない場合に、設計図面や金型等を製造業者(受託者)に渡して、その通りに製造・供給してもらう
- 製造業者(受託者)がすでに製造・販売している製品を、依頼主(委託者)が自社の商標やロゴ等を付けて販売する
どちらのケースにおいても、委託者は自社のブランド製品として販売し、受託者は自社の設備や技術などを使用することになるため、「どのような製品を製造するのか」「商標をどの範囲で使用するか」「いつまで瑕疵担保期間を設けるか」などといった詳細を契約書にて規定することが重要です。
こうした重要事項を詳しく規定しないまま契約をすると、「依頼主が希望する製品と一部機能が異なっている」「市場に流通した商品にリコールが発生した」などのトラブルが起きた際に、どちらに責任があるかを判断することが難しくなります。
OEM契約書を交わす際には、事前に製品に関する仕様や設計図に加えて、商標を使用できる範囲や発注保証、製造上の機密保持等に関する詳細を取り決めておくべきといえるでしょう。
OEM契約書の作成ポイントを解説
OEM契約書の作成にあたり、一般的に記載する重要な条項があります。どこまで詳細を取り決めるかは製品や当事者間の取引内容によって異なりますが、とくに検討したいポイントは次のとおりです。
生産する製品の仕様を詳しく規定する
OEM契約書の作成でまず規定しておきたいことは、「どのような製品を開発・製造するか」という点です。というのも、委託側と受託側が持つ認識の違いによってトラブルに発展する可能性があるためです。契約書には、製造する製品の仕様書や設計図面、使用する材料、製造器具や金型をどちらが調達するかなどを規定することが一般的です。
なお、製品の仕様書等の契約書については、OEM契約書と別紙で添付することによって、生産する製品や数個等に変更があったときに別紙の差し替えのみで対応できるため、効率的といえます。
知的財産権の帰属について規定する
OEM契約では、製造にあたり必要な技術やノウハウを、委託者から受託者(製造者)に対して提供する場合があります。受託者がOEM契約で作られた製品を第三者に販売しない、知的財産権(特許や商標等)の帰属について規定しておかなければなりません。
また、特許や商標について第三者との紛争が生じた場合の措置についても規定する必要があります。製造に関して受託者が有する技術やノウハウを使用する場合には、これらの技術が第三者の知的財産権を侵害していないことを証明する必要があります。第三者からの訴えが委託者の指示(仕様書等)やブランドに対する商標等に関するものでなければ、受託者の責任と規定するケースが一般的です。
商標の表示方法を特定する
製品や包装等に付けられる委託者の商標(ブランド名)は、その表示方法や態様を明確に特定しておく必要があります。特定が甘くなると委託者が想定していた製品と完成品が異なる場合があるためです。また、製品は委託者のブランドとして販売するため、類似製品に製造販売を制限するかどうかも検討するべきでしょう。
瑕疵担保責任と補償について規定する
OEM契約において、製品に何らかの瑕疵があった場合に第三者からクレームを受けるのは委託者となります。ブランドの信頼性にも大きく関わるため、製品完成後の検査で合格した後も、一定期間はその品質を保証する瑕疵担保期間を設ける必要があります。
製造担当者や品質管理者などと話し合い、瑕疵担保責任を追求できる事由や期間、補償について明確に規定しましょう。受託者による補償には「代替品の納入」「減額」「修理」などが一般的ですが、製品の仕様や瑕疵の度合いによって適切な対応が異なるため、当事者間の話し合いが不可欠です。
一方、受託者は瑕疵担保責任をできる限り軽減したいため、受託者に帰責事由がある場合に限り責任を負う旨や、その瑕疵が重要でなく、修補に過分の費用を要する場合には修正責任がない旨を規定することも検討したいところです。
秘密保持の義務を規定する
OEM契約を結ぶうえで、企業が自社の機密情報(技術情報や財務情報など)を他社に開示することがあります。OEM契約中に知った機密情報が第三者へ流出してしまうリスクを防ぐために、秘密保持に関する義務を規定し、企業秘密を保護することが重要です。
秘密保持に関する規定を定める際は、機密情報とはどのような情報に当たるのか「定義」を明確にしたうえで、「機密情報はOEM契約以外の目的で使用しない」「契約終了後や従業員の退職後も機密保持義務を遵守する」などといった、当事者間や従業員に対してどのような義務が課せられるのかを明確に規定する必要があります。