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休職(精神疾患など)・復職

労働者の休職・復職の注意点などを解説

労働者の「休職」は法律上の規定がなく、会社側が任意で規定できる制度であるため、休職の取得可否や休職期間、復職をめぐって企業側とトラブルに発展するケースも少なくありません。会社に対する責任を回避するためには、休職・復職にかかわる就業規則の見直しや、適切な体制整備が求められます。自社のみの判断が難しい場合は、弁護士への相談を視野に入れましょう。

労働者の休職・復職をめぐる適切な対応と注意点とは?

労働者がケガや病気等で労務を提供できない事由が生じた場合、労働契約を維持しながら「休職」を申し入れることができます。休職は、法律で定められている制度ではありませんが、就業規則や労働協約に設けられていることが一般的です。

具体的な規定は会社によって異なるため、休職制度の採用や運用については慎重な検討が必要です。制度設計の自由度が比較的大きい反面、就業規則等への明記や休職の定義などによって、労働者とトラブルが起こることも少なくありません。

こうしたトラブルの防止に向けて、会社の休職制度が適切に運用されているか、制度設計や就業規則等の見直しを検討すべきといえます。ここでは、休職の種類や手続き、復職の判断、注意点などを解説します。

そもそも休職とは?休職の定義と7つの種類

休職とは、労働者のケガや病気(私傷病)など、何らかの都合によって会社を長期的に休む際に、労働契約を維持しながら「労働を免除する」という制度です。採用するか否かは会社側の任意となります。

休職制度がない会社は、解雇を検討することも可能です。しかし、病気等で働けなくなった場合にただちに解雇することは現実的とはいえません。自社の優秀な人材の流出につながる可能性もあるため、休職制度の採用については会社側の慎重な検討が必要です。

会社で設けられている一般的な休職制度には、下記の種類があります。

  • 私傷病休職:労働災害以外の病気や怪我による休職制度
  • 起訴休職:刑事事件で起訴された従業員に対して会社が命じる休職制度
  • 出向休職:他社へ出向する際に、現在務めている会社を長期間休む制度
  • 懲戒休職:出勤停止などの懲戒処分による休職制度
  • ボランティア休職:ボランティアをするための休職制度
  • 留学休職:留学期間中の業務を免除する休職制度
  • 公職就任休職:議員など公職に就いたために、多忙になった場合の在職期間中の休職制度

従業員が休職を申し入れてきたら

従業員から休職の申し出があった場合は、会社が就業規則に則って適切な制度を適用しなければなりません。

ただし、「休職期間をいつまでとするか」「復職が可能かどうかの判断基準」については極めて重要となります。とくにメンタルヘルス不調などの私傷病休職の場合は、健康回復の程度を判断するのが困難なケースがあります。医師作成の診断書を求めるとともに、弁護士への助言を踏まえて適切な対応を検討しましょう。

会社から従業員に休職を申し入れることもできる

従業員は働く意思があるものの、病気や怪我により本来の能力が発揮できない、業務をほとんど遂行できていないなどの状態の場合は会社から従業員に休職を打診することもできます。

うつ病などの精神疾患の場合、本人が気付かない間に症状が進行して業務が疎かになることもあります。放置しておくと従業員間のトラブルや労災に発展するおそれもありますので、早めの措置が必要です。

休職中の給与・手当などの取り扱いについて

休職制度を導入するにあたり、休職中の給与や手当などの取り扱いについて正しく理解しておきましょう。

休職期間の設定

従業員が提出した診断書をもとに休職期間を設定します。勤続年数によって休職期間を定めている会社が多く、期間については1ヶ月~半年間が一般的と言われています。就業規則には、勤続年数や症状別に休職期間を規定しておくのが望ましいでしょう。

休職期間中の給与

休職期間中の給与については、支払う義務はありません。ただし、就業規則に独自の手当を支払うと規定している場合には、適切な手当を支払う必要があります。

また、給与支払いがない場合でも、傷病手当金や休業給付、介護休業給付金などの手当の対象となる可能性があるため、従業員へ周知しておきしょう。

ボーナス・退職金

休職期間中は勤続年数として算入する必要がないため、ボーナスや退職金の算定から除外することができます。ただし、ボーナスの査定期間に勤務実績があった場合には、ボーナスを支給するケースもあります。

休職期間中の社会保険料

休職期間中であっても、健康保険や厚生年金などの社会保険料は発生します。そのため、従来通り会社と従業員がそれぞれの負担分を納付する必要があります。給与の支払がなく保険料を天引きできない場合は、直接従業員から保険料の負担分を徴収することができます。

休職・復職をめぐるトラブルと注意点

休職制度で特に問題となるのが、私傷病による休職です。特にうつ病などのメンタルヘルス不調を理由とした休職は、労使間で問題になるケースが見られます。

休職や復職をめぐるトラブル・問題点には、以下が挙げられます。

休職の開始・期間満了

休職期間については、労使協定や就業規則をもとに、勤続年数や傷病の性質に応じて定められます。しかし、従業員からの申し入れがあったにもかかわらず、休職命令(または休職許可)を出さず適切に運用しなかったり、休職事由などの適用を誤ってしまう可能性が考えられます。

「いつから休職を開始したのか」「満了するのはいつなのか」といった規定を双方が正しく把握しておらず、休職期間や復職のタイミングについてトラブルになってしまうことも少なくありません。

休職命令等の出し方や運用方法には法律の規定はありませんが、口頭だけではなく、事前に就業規則に定めることで休職制度を周知したり、手続きには文書の交付を行うなど、適切な運用体制を整備するべきといえます。

復職の判断基準

休職期間中に傷病から回復すれば「休職が終了」となり復職になりますが、もし回復せずに期間満了となれば、自然退職あるいは解雇という手続きを取ることとなります。そこで問題となり得るのが、復職の要件となる「傷病が治癒したかどうか」の判断に関してです。

特にうつ病などのメンタルヘルス不調で休職した場合、症状を客観的に判断することは困難です。医師の判断が基準となりますが、目に見えない心の病については、患者である従業員本人の主張や意向が反映されやすい性質があるため、診断書の信用性が問題とされます。

復職については、以下の条件をクリアしているかどうかで判断すべきとされています。

  • 従業員が復職の意欲を示している
  • 一人で通勤時間帯に通勤できる
  • 決まった時間、日数に就労できる
  • 作業による疲労が翌日までに回復できる
  • 睡眠サイクルが適切である
  • 昼間に眠くならない
  • 注意力や集中力が回復している

治癒していない状況で復職させてしまった場合、健康状態を悪化させる危険があるため、復職の判断基準は極めて慎重に対応すべきです。トラブルを防ぐためには、診断書の内容を鵜呑みにせず、産業医による診察を規定するなどの対策が求められます。弁護士や医師などの専門家を交えて判断しましょう。

復職にあたっての配慮

復職させるにあたり「休職前の業務が行える健康状態まで回復している」ことが判断基準となります。しかし、企業が注意しなければならないのは、以下の2つのケースの場合でも復職を認めるケースがあるということです。

  • 休職前までは回復していないが、業務を軽減する期間をしばらく設けることで、休職前の業務が通常に行える健康状態まで回復している場合
  • 休職前の業務への復帰までは困難だが、他の業務での復帰が可能で、本人が他業務での復帰を申し出ている場合

このような場合は、会社側が業務業や業務時間を減らしたり、復職希望の従業員に見合う業務に就かせるなどの一定の配慮が求められます。復職を認めず直ちに解雇すると、不当解雇として紛争に発展するケースもあるため注意しましょう。

とはいえ、企業として行うべき配慮にも限度があるため、際限なく配慮する必要はありません。復職と認めるか否か、配慮の範囲については慎重な判断が求められるため、弁護士専門家の助言を受けることをおすすめします。

復職する場合の手続き

休職期間が満了し、従業員が復職を希望した場合には、以下の手続きを行います。

復職させるかどうかの判断は会社側となるため、適切な手順を踏み、安易に判断しないように注意しましょう。

1. 復職願と診断書の提出

復職にあたり、復職願と医師が作成した診断書の提出を求めます。元通りの業務を遂行できると判断できれば復職を許可します。ただし、精神疾患や後遺障害が見られる場合は、産業医による診断を実施したうえで検討しましょう。

2. 復職面談を行う

復職にあたり、診断書だけで判断するのは危険です。とくにメンタルヘルスは客観的に判断しづらいため、産業医や管理者との面談を実施し、従業員の健康状態や精神状態を確認しましょう。

3. 業務や勤務形態の見直し

診断書や面談によって健康状態を確認したところ、従来の勤務が難しいと判断される場合には、「勤務時間を短くする」「担当業務を変更する」などの措置が求められる場合があります。部署異動や給与の減額が伴う場合は、従業員と相談して同意を得る必要があります。

4. 試し出社の実施

試し出社とは、メンタルヘルス不調などで長期休職していた従業員に対して、一定期間継続して試験的に出勤することをいいます。業務時間を短くしたり、業務の負荷を軽くするなど、段階的に通常業務に慣れてもらうことが目的です。ブランクの解消をはじめ、復職が可能か否かを見極める役割を持つため実施するのが望ましいでしょう。

休職(精神疾患など)・復職のまとめ

休職は法律で定められた制度ではないため、制度設計の自由度が大きく、就業規則等の規定の内容によっては従業員とのトラブルに発展し得る制度です。

しかし、病気や怪我などで業務の遂行が難しくなった従業員に対して、直ちに解雇するのは現実的とは言えません。貴重な人材を失わないためにも、状況に応じて休職を選択できる労働環境が必要といえるでしょう。

なかでも、精神疾患などの私傷病休職については、治癒の判断が難しいケースといえます。判断を誤ると会社の責任が問われる可能性があるため、復職については慎重な見極めが必要です。適切な休業制度を実用するためにも、労務に詳しい弁護士への相談をご検討ください。

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