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労働災害

労働災害の防止対策等について解説

労働災害による死亡数は、毎年1,000人近くにものぼります。仮に自社で労働災害が発生した場合、刑事責任や民事責任に問われる可能性があります。では、これらのリスクに対してどのように備えるべきなのでしょうか。ここでは、労働災害の防止対策等について解説します。

企業が取り組むべき「労働災害リスク」への備えとは?

労働災害(労災)が発生すると、企業側に責任があるとして罪に問われることがあり、場合によっては労働基準監督署による行政指導が行われます。また、労災保険がおりる場合であっても、企業に対して業務上の責任が問われるケースがあり、社会的・経済的どちらからも打撃を受けるおそれがあります。

しかし、労働災害においては事前に対策を講じておくことで、こうしたリスクを減少させることが可能です。ここでは、企業における労働災害の責任やリスクを下げるための対策等について解説します。

労働災害とは

労働災害とは、労働者が業務または通勤の最中に負った怪我や障害、疾病、死亡のことをいいます。近年社会問題になっている「過労死」や「過労自殺」等も、労働災害に含まれます。厚生労働省によると、労働災害は長い目でみると減少傾向にあるとしていますが、それでも毎年1,000人近くの労働者が亡くなっているのが現状です。

労働災害が発生した場合、企業側に責任が求められることとなり、ケースによっては刑事責任を問われて罰則を受けることがあります。したがって、企業は労働災害におけるリスクに備えておくことが重要です。

労働災害が起きたときに企業に求められる責任

刑事責任

労働安全衛生法や労働基準法に違反する場合、もしくは使用者責任等が認められる場合、刑事責任を問われる可能性があります。また、企業が危険防止措置を怠ったことにより、労働者が死亡・ケガをした場合は「業務上過失致死傷罪」にあたるとして、罰則を受けることがあります。

行政責任

労働安全衛生法や労働基準法等の違反が原因で労働災害が発生した場合には、労働基準監督署から指導を受けることになります。ケースによっては、使用停止命令や作業中止命令等が命じられることもあります。命令に従わない場合は、書類送検される等して刑事責任を問われるほか、企業名の公表によって取引先や顧客からの信用を失う可能性があります。

民事責任

労働災害の発生原因が企業の安全配慮義務違反にある場合、企業は労働者に対して損害賠償義務を負うことになります。治療費のほか休業損害、後遺障害慰謝料等は労災保険から支払われますが、傷害慰謝料や後遺障害が残った場合の逸失利益等については支払われないので、企業に支払が求められるケースがあります。場合によっては多額の賠償義務を負うことになるため、注意が必要です。

社会的責任

労働災害によって死亡事故が起こり、その事実が大きく報道されてしまった場合、企業の社会的評価が失墜してしまう可能性があります。たとえ企業側が労働災害の発生に対して十分な慰謝料を支払っていたとしても、重大な労働災害が発生したことで「取引先から契約を打ち切られる」「イメージダウンによって売上げが減少する」等、企業存続の危機にさらされることが考えられます。

労働災害リスクに備えて企業がやっておくべきこと

そもそも企業には、労働者の安全と健康を確保するという責務があります。そのため、労働安全衛生法等の法令を遵守したうえで、労働災害を防止するための対策を講じなければなりません。厚生労働省では、企業に対して以下の措置を義務付けています。

危険防止の措置

機械設備を使用する、火災・爆発のリスクがある物を扱うの事業場等においては、労働者に危険や健康障害が及ばないよう、あらゆる対策を講じる必要があります。例えば、機械を使用する事業場では「機械の動作範囲に労働者の体が入らないよう、柵や覆いを設置する」、また火災や爆発の危険性がある物を扱う事業場では「時間を決めて定期的に換気する」「火気の使用を禁止する」等のルールを設けておかなければなりません。

健康管理の措置

労働災害は、労働者のメンタルや身体的不調がきっかけで発生するケースがあります。したがって、企業は1年に1回定期健康診断を実施し、労働者の健康管理に務めましょう。なお、労働者がガスや粉じん等にさらされる有害な場所で作業を行う場合は、「特殊健康診断」を半年に1回実施する必要があります。

安全衛生管理体制の整備

労働者が10人以上50人未満である場合は、安全衛生における業務を担当する「安全衛生推進者」もしくは「衛生推進者」を選任する必要があります。選任した者には、職場における危険防止対策や健康診断、労働者への教育等の業務を任せることとなります。

また、プレス機械や木材加工機械等を使用するなどの労働安全衛生法等に定める事業場においては「作業主任者」を選任してください。危険かつ有害な作業を行う場合は作業主任者に指揮を取らせ、機械設備の点検等を進める必要があります。安全衛生管理体制の整備は企業の上層部だけで進めるのではなく、実際に現場で働く労働者からの意見を取り入れながら進めることが重要です。

安全衛生教育の実施

労働者を新たに雇い入れた際には、必ず安全衛生に関する教育を実施しましょう。作業手順をはじめ、労働災害が発生しやすい状況、実際に事故が起きた場合の対応、機械や材料の取り扱い方法等の内容を労働者に伝えましょう。なお、危険または有害な業務に就く労働者に対しては、当該業務に関する特別な教育を実施する必要があります。

これらを漏れなく行っており、企業側に問題がなければ民事責任や刑事責任に問われる可能性は低くなります。しかしながら、どれほど安全管理に気を配っていても労働災害の発生を完全に抑えることが困難なため、以下のような“企業側を保護”するための対策も講じておきましょう。

労災保険以外の保険にも加入しておく

傷病年金や遺族年金、療養費、休業(補償)給付等は補償対象となりますが、慰謝料や逸失利益を対象外となります。したがって、これらの名目で労働者から損害賠償を請求された場合に備えて、民間の損害保険会社が販売する「労働災害総合保険」等に加入しておくと安心です。

労災保険ではカバーしきれなかった部分を補うことができるため、万が一、損害賠償請求をされた場合に備えて加入しておくことが望ましいといえます。

弁護士を利用する

労働災害リスクへ備えるためには、安全衛生義務違反や労働基準法、労働安全衛生法等に留意せねばなりません。これらの法律における情報を網羅し、それに沿った対策を講じるためには、労災問題を得意とする弁護士へアドバイスを求めることが重要です。リスクとなりえる箇所をあらかじめ潰しておくことにより、労働災害の発生はもちろん、企業における責任も軽減します。

また、日頃から企業の実情や労災対策などを熟知した顧問弁護士契約を結んでおくことで、労働災害が発生した場合の対応や解決までの手続きを迅速に行えるため、労働災害による社会的な影響を最小限に抑えることが可能です。

労働災害のまとめ

労働災害は被災者やその家族に大きなダメージを与えるだけでなく、企業も経済的・社会的に大きな損失を被るリスクがあります。したがって、労働災害を発生させないための対策や、企業側の責任を軽減させるための対策を検討し、実行することが大切です。労働災害リスクへ備えるためには、労働安全衛生法等の法律に関する知識が必須となるため、弁護士と提携することが有効と考えられます。労働災害発生のリスクに備えたいという方は、キャストグローバルまでご相談ください。

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