マタハラ(マタニティ・ハラスメント)
マタハラとは?
マタハラ防止のための対策を解説
マタハラとは?マタハラの定義を具体例で解説
マタハラは、妊娠出産などを理由に嫌がらせや不当な配置転換、減給などを行うことをいいます。妊娠を理由に退職を迫ることもマタハラの一種です。
具体的には「妊娠を機に正社員からパート勤務に転換する」、「不当に評価をさげる」、「育児休暇制度はあるものの、従業員の取得を渋る」、などの行為がマタハラと言えます。また、「時短勤務は気楽でいいよね」、「男性で育児休業を取得するなんてありえない」などの発言もマタハラと言えます。
男女雇用機会均等法では、妊娠出産等を理由として不利益な取り扱いをすることを禁じています。不利益な取り扱いとは以下のような行為を言います。
- ●解雇すること
- ●契約更新回数の上限が決まっているにもかかわらず引き下げること
- ●降格させること
- ●不利益な自宅待機を命じること
- ●賞与で不利益な算定をすること
- ●不利益な配置転換を行うこと
- ●契約の更新をしないこと
- ●正社員からアルバイトなどの非正規雇用社員にしようと労働契約内容の変更を強要すること
- ●就業環境を害すること
- ●減給すること
- ●人事考課で不利益な評価を行うこと
ただし、業務上で必要な事柄の確認などはマタニティハラスメントには該当しません。例えば、「シフトを組まなければならないから妊婦健診の日を教えてほしい」、「育児休業の取得時期を教えてほしい」、「妊娠中は身体的な負担が大きい作業は難しいから軽作業に配置転換をしよう」などの発言や提案は、業務上必要なものですので、マタニティハラスメントトは言えません。
マタニティハラスメントが起きる原因とは
マタニティハラスメントが起きる原因は、経験や世代の差、業務の負担のしわ寄せなど様々です。対策を講じる前に、マタニティハラスメントが発生する背景も理解しておきましょう。
子育て世代と独身者の認識の差
妊娠や出産、育児などは経験しなければその大変さや必要な措置がわからないものです。例えば、妊娠期間中の妊婦健診にしても、独身者の多くは妊婦健診は必ず受けなければならないことを理解できません。産休や育休の取得についても、「出産すればすぐ働けるのでは」と考えて、過剰な措置ではと考える独身者もいます。誰しも自分が経験していないことについては、理解が及ばず不用意な発言や行動をしてしまう傾向にあります。
専業主婦が当たり前だった時代の管理職が多い
30年程前までは、「女性は結婚したら退職して専業主婦になり、家族の世話をすること」が当たり前とされていた世代でした。その世代が現在の管理職に就いており彼らからすれば、産後も働く女性や、育児休暇を取得する男性社員が理解できません。その意識が強いため、様々なマタニティハラスメントを悪意なく行ってしまうことが少なくありません。
産休や育休によって他社員の業務が増える
産休や育休を取得する社員の代わりの社員がいればいいのですが、増員せずに産休や育休を取得する場合、残された社員たちが1人分の業務を穴埋めしなければなりません。その不公平さからマタハラ言動が生まれてしまうのです。
マタハラを発生させないために企業ができる対策とは
マタハラを防止するためには、企業側が率先してマタハラが発生しない体制を構築しなければなりません。
マタニティハラスメントの禁止を就業規則に盛り込む
妊娠や出産等を理由に嫌がらせや、不当な取り扱いを行ってはならないことを就業規則に明記しておきましょう。繰り返しマタハラを行う行為は懲戒処分に該当することも併せて記載しておくとマタハラの抑止力となります。
マタニティハラスメントに関する周知徹底を行う
マタニティハラスメントは、管理職だけでなくすべての従業員がそれが違法であることを周知しておく必要があります。ポスターの掲示などで啓発するだけでなく、定期的に研修を行うことも有効です。
相談窓口を設置する
マタニティハラスメントの被害者が気軽に相談できる窓口も必要です。被害者だけでなく、第三者の通報も受け付けられるようにしておきましょう。妊娠、出産をした社員だけでなくすべての社員に相談窓口の連絡先や連絡方法を周知しておいてください。連絡方法は、電話だけでなくメールやチャット、文書など多様な方法を用意しておくとよいでしょう。相談窓口は、管理職や人事総務担当者が担当することが多いですが、相談対応は慎重かつ適切に行わなければならないので、彼らに対する研修も必要です。
企業側の方針を決めておく
大前提ですが、企業としてのマタニティハラスメントのガイドラインや、マタニティハラスメントの定義を決めておき方針を発表しておきましょう。企業側が、マタニティハラスメントに対して断固として対応する意思を表示しておくことが大切です。
マタニティハラスメントが発生したらどうすれば?
マタニティハラスメントが起きてしまったらどうすればいいのでしょうか。対応を確認しておきましょう。
被害者にヒアリング
まずは、マタハラの被害者に事情を聞きます。嫌がらせの言動や取り扱いを詳しく聞き、加害者についても確認しておきます。
加害者にヒアリングなどの調査
マタハラの被害者からの証言だけでなく、加害者や第三者にも状況を確認しておく必要があります。しかし、被害者がマタハラの事実を知られたくない、加害者に相談窓口に相談したことをしられたくないなどのケースがありますので、前もってどのような解決を望んでいるのかも確認しておくとよいでしょう。
マタハラが事実であれば加害者と被害者に対処を
マタハラが事実であった場合は、加害者と被害者に対してそれぞれ必要な措置を講じます。マタハラ行為の頻度や回数、悪質性にもよりますが、加害者に対しては懲戒処分や配置転換、研修などの措置が必要です。被害者に対しては、加害者から隔離するための配置転換などの適切な措置を行いましょう。被害者への対応を誤ると、加害者だけでなく企業の責任も問われるおそれがあります。また、加害者に対しても不当な配置転換や懲戒処分を行うと労働問題に発展するリスクがありますので、慎重な判断が求められます。
再発防止策の策定と周知
マタニティハラスメントにおいては、再発を防止するための対策が重要です。どうしてマタニティハラスメントが起きたかを検証した上で、再発しないような仕組み作りおよび従業員への周知徹底を行いましょう。
マタハラのまとめ
マタニティハラスメントは、立場の違いや世代の違いなどから引き起こされます。企業側はマタニティハラスメントが起きない仕組みを構築するとともに、発生した場合には適切な対処が必要です。就業規則の改定や、研修の実施など様々な専門的な知識が必要ですので、マタハラ対策を確実に行いたい場合は、弁護士等に相談しておくとよいでしょう。