労働審判の対策

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労働審判

労働審判とは?労働者が労働審判を申し立てた場合の対処法

未払い残業代請求や解雇などをめぐる労働トラブルで、労働者から「労働審判」を申し立てられることがあります。労働審判には社内の代表権を持つ者が出頭することも可能ですが、権利義務などの法的知識や実務経験が求められます。会社側に有利な解決を図るためにも、弁護士の存在が不可欠といえるでしょう。労働審判をめぐる対応は、労働審判に豊富な経験・実績を持つキャストグローバルにお任せください。

労働審判とは?制度の仕組みや弁護士の必要性について

企業と労働者の間で生じやすいトラブルには、賃金の支払いや解雇、残業代請求などさまざまなものがあります。紛争の解決手段として「裁判」がありますが、通常1年以上の長期戦になるため、労力や費用の負担も大きいものといえます。

そこで始まったのが「労働審判制度」です。労働審判では、労使間で起こった民事上の労働トラブルに対して、通常の裁判よりも迅速かつ簡易的に解決を図ります。労働審判は2006年に新設された制度ですが、2009年以降は年間3,000件以上の労働審判が行われており、企業にとって決して遠い存在ではありません。

対応が遅れて適切な準備ができていないと、会社側に不利な条件で進められる可能性も高いため、労働者から申し立てがあった際には、早期に弁護士に依頼して効率的に準備を進めることが重要です。本ページでは、労働審判の仕組みや具体的な流れ、弁護士の必要性について解説します。

労働審判制度とは?制度の仕組みと留意点

労働審判制度とは、労働契約の存否やその他の労働関係に関する事項について、個々の労働者と企業との間に生じた民事に関する紛争を裁判所にて解決する手続きのことをいいます。一般的な民事訴訟では、解決までに約1年かそれ以上の期間を要することも珍しくありませんが、労働審判では原則3回以内の期日で審理するため、早期解決が目指せます。なお、労働者の主張に対して反論するためには、早期に弁護士に対応を依頼し、短い期間で主張・立証の準備を充実させることが重要です。

労働審判で解決できるトラブル

労働審判制度は、すべての労働問題に対応しているわけではありません。扱えるトラブルは「個別労働紛争」に限られており、民事上における企業と個々の労働者との間で起こった紛争が対象となります。したがって、企業と労働組合との紛争や、上司や管理者などの個人を相手方とする紛争、公務員を当事者とする紛争などは、労働審判の対象とはなりません。

労働審判委員会による審理

労働審判では審判官(裁判官)1名と、労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名により組織する労働審判委員会が審理・判断を行います。この審判官および労働審判員が双方の事実関係や争点を整理しながら、「調停」という形式を用いて、話し合いによる解決を図ります。

このとき、当事者に対して直接質問をする「口頭主義」で進められるため、労働審判委員会に説得力のある意見を述べる必要があります。企業は弁護士を付けずに審判に臨むことも可能ですが、会社側の不利にならないよう方向付けるためには、弁護士による有効かつ適切な主張・立証が不可欠といえるでしょう。

話し合いによる解決が見込まれない場合には、当事者間の権利義務関係を踏まえつつ、実効性のある解決策が「労働審判」として下されます。労働審判の内容に異議があれば、異議申し立てを行うことにより、労働審判の効力は失われ、訴訟へと移行します。

労働審判の流れ

労働審判では、3回以内の審理で迅速な解決を図るため、短期間で企業の主張や証拠をまとめる必要があります。労働者側に有利な審判が行われないよう、弁護士と打ち合わせのもと効率的に準備を行いましょう。ここでは、労働者から労働審判の申し立てがあった場合の対応の流れを解説します。

1.審理期日の指定・裁判所からの呼出

労働審判の申し立てが裁判所によって受理されると、裁判所が労働審判委員会を結成します。さらに、裁判所から企業に対して、申立人が用意した申立書や呼出状、証拠書類が送付されます。

このとき、第1回目期日については、申し立てから「原則40日以内」に指定されることになります。約1ヶ月という短い期間で法的反論を組み立てる必要があるため、専門知識を有する弁護士へ速やかに依頼することが望ましいでしょう。

2.答弁書の作成・提出

労働審判の申し立てを受けた企業は、第1回期日までに「答弁書」を提出する必要があります。答弁書には、申立書の事実に対する認否や、答弁を裏付ける資料証拠などを記載する必要があります。なるべく早い段階で会社側に有利な証拠を集めなければなりません。期日が遅れてしまったり、答弁書が不十分なまま提出をしてしまうと、納得のいかない調停案が提示される可能性があるため注意しましょう。

3.第1回労働審判期日

第1回期日では、事前に提出した申立書や答弁書、証拠書類の内容をもとに、事実関係や争点の整理、事情聴取が行われます。このとき、労働審判委員会が直接当事者に質問する形式によって話し合いが行われるため、労働審判期日に出頭する者はあらかじめ起こりうる質問を想定し、回答できるよう準備しておく必要があります。

また、労働審判では、第1回期日にすべての主張・証拠を提出してから裁判所の心証形成が始まります。つまり「第1回期日で、いかに説得力のある主張できるか」が、労働審判を有利に進める重要なポイントとなります。

話し合いの結果、労働審判委員会が提示した調停案に双方が納得すれば「調停成立」となり、1回目の審理で解決に至るケースもあります。調停案は、訴訟による判決とは異なり、損害賠償・解決金の支払といった解決のための事項は、柔軟に決めることも可能です。お互いが納得して調停が成立すれば、訴訟によって和解した場合と同じ効力が発生することとなります。

4.第2回労働審判期日

第1回期日で話がまとまらなかった場合は、第2回期日で調停による解決を図ります。ただし、労働審判では、第1回期日までに当事者の主張・証拠などの提出を終えているほか、すでに労働審判委員会の心証に基づいて話し合いが行われているため、第2回期日は補充的な意味合いが強くなります。あくまで、調停をまとめるための時間として充てられていることが一般的なため、話し合いで解決の見込みがある場合は、事案の実情に即した柔軟な解決が求められます。

5.第3回労働審判期日

第1回、第2回と同様に調停が試みられますが、労働審判では、原則3回以内の期日で審理を終えなければならないと定められています。第3回期日で調停がまとまらない場合は、当事者間の権利関係を踏まえつつ、労働審判委員会が「労働審判」を行うことになります。

なお、事前に調停案を出している場合は、当該調停案と同様の内容で労働審判が出される場合も多くあります。

6.異議申し立て

労働審判の内容に不服や異議がある場合は、裁判所に対して異議を申し立てることができます。異議申し立てを行うと、その時点で労働審判の効力は失われ、訴訟へと移行することになります。ただし、訴訟となると解決までに労力・費用がかかるため、慎重な判断が求められます。裁判所が合理的な調停案を提示し、労働者側もそれに同意している場合は、調停によって解決することが合理的と言えます。

労働審判における弁護士の必要性

労働審判は、当事者が弁護士を付けずに対応することも可能です。しかし、事前準備や審理には専門的な法的知識が求められるほか、論理的かつ説得力のある主張を述べる必要があるため、労働審判の実務経験がない企業が容易に対応できるものとはいえません。スピーディに準備を進めることも重要なため、代理人として弁護士をつけることをおすすめします。

短期間でスピーディに事前準備ができる

労働審判では、申し立てから第1回期日までの準備期間が約1ヵ月と短いため、有力な答弁書を短期間で作成しなければなりません。十分検討せず、説得力に欠ける答弁書を提出してしまえば、労働者側に有利な調停案を提示される可能性もあります。

労働審判の実務に精通した弁護士に依頼すれば、各事案の状況や過去の労働審判に基づき、有効な主張・立証を答弁書にまとめることが可能です。答弁書や証拠書類は、第1回期日の事実確認において重要な判断材料となるため、事前準備こそが結果を左右するといっても過言ではありません。

質疑応答に関するリスクを回避できる

労働審判では、労働審判委員会が申立人(労働者)と企業それぞれに質疑応答を行い、その内容をもとに審理が行われます。たとえ弁護士を付けている場合であっても、質問への回答は出頭した当事者に求められるケースもあるため、予想できる質問については回答できるよう準備しておかなければなりません。

とはいえ、労働審判に経験がない企業担当者が、複雑な事実関係や法的観点から主張を述べることは困難といえます。「うまく答えられなかった」となれば、労働者の主張どおりに審理が進められるケースも少なくありません。こうした事態を回避するためにも、質問が予想される内容については答弁書に回答を記載し、不十分な箇所がないように記載しておくのが得策です。

弁護士に相談することで、主張・立証すべき内容を答弁書に漏れなく盛り込めるほか、企業担当者との綿密な打ち合わせによって、予想できる質問への回答方法をアドバイスすることが可能です。説得力のある事前書類を準備し、審理で有効な主張をするためには、弁護士のサポートが不可欠といえるでしょう。

労働審判委員会の心証を有利に導く

労働審判の多くのケースでは「調停」による解決が進められますが、「解決金をいくら支払うか」などといった調停条項は、労働審判委員会による心証が大きく影響します。会社側に有利な心証を得るためには、期日において(とくに第1回期日)、いかに労働審判委員会を説得できるプレゼンテーションができるが重要といえます。

しかし、労働審判の実務経験がなければ、労働審判委員会を説得させるプレゼンテーションを行うことは、決して容易ではありません。労働審判の主張・立証方法を理解している弁護士に依頼することで、労働審判委員会の心証をより会社側に有利に導くことが可能です。

妥当な調停条項を検討できる

期日における主張・立証や事情聴取が終わったあとは、労働審判委員会の心証に従って調停が進められます。このとき、労働審判委員会から心証を伝えられたうえで、当事者は調停成立のための条件を検討する必要があります。

弁護士が労働審判に同席することで、労働審判から提示された調停条項が合理的であるか、適切な判断が可能になります。また、解決金の支払額だけでなく、訴訟に移行した場合の労力・費用、他の労働者への波及効果などを考慮したうえで、妥当な調停案を提示することもできます。双方が納得できる形で円滑に解決を図るためにも、弁護士の必要性は高いといえます。

労働審判のまとめ

労働審判は、訴訟に比べて短時間で解決に図れる手段ですが、申し立てがあってから第1回期日までに時間が余裕がないため、迅速な対応が求められます。答弁書の作成や提出などの準備ができていなければ、会社側が不利な状況で調停に応じる結果になるケースもあるため、速やかに弁護士に相談しましょう。また、キャストグローバルでは、労働審判の対応だけでなく、労働問題を未然に防ぐための制度設計、管理体制の見直しもサポートさせていだきます。法務に強い企業を目指したい方は、ぜひ当事務所までご相談ください。

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