役員の不正行為・解任・報酬

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役員(取締役)の不正行為

役員(取締役)の不正行為の対処法

企業の役員が、関与したとする事件は日々発生しています。報酬の水増しや、不正な支出、不正な商品の販売など、様々な役員による不祥事が報道されています。
では、役員が不正行為・違法行為を行った場合、どのように対応すればよいのでしょうか。ここでは、役員の不正行為に対する対処法を解説します。

事実関係の調査を行う

役員が不正を働いていた場合、それが事実かどうか、そしてどのような被害が発生しているのかを詳細に調査する必要があります。調査は自社で行う社内調査と、第三者に依頼する第三者調査の2種類です。社内調査は、会社組織から独立していないことや、役員という権力を有した相手に関する調査であることなどから、適正に調査が完遂できるかどうかが危ぶまれます。費用はかかりませんが、最適な調査方法とは言えません。
第三者調査は、費用がかかるものの、独立性が保たれているため公平に調査が行われます。事実関係を正確に知ることができますし、報道機関や取引先にも「適切に対応していること」をアピールできますので、できれば第三者による調査を選択しましょう。調査の委託先は企業法務を専門とする弁護士が一般的です。弁護士会に第三者委員会を委託する弁護士の紹介を求めることもできますし、日頃から付き合いがある弁護士に依頼することもできます。いずれにしても、企業法務に注力している弁護士が望ましいです。

事件の公表

不正の種類によっては、不正の事実を公表するとともに処分を発表することが求められます。
自社製品に関する不正の場合は、不正に関する製品の回収や代替え品の納品など、大がかりな対策が必要です。報道や世間の批判に対応するため、報道機関に報じられる前に記者会見を開き、事実と処分の公表が求められるケースもあります。
役員の不正の公表や報道については、状況によって最適な対応が異なりますので、ケースバイケースでの対応が必要です。

役員の違法な業務の差し止め請求

役員が不正発覚後も違法な行為を辞めない場合は、裁判所に対して「職務執行停止の仮処分」を申し立てることを検討します。訴訟と比較すると短時間で判断がくだされるのがメリットです。職務執行停止の仮処分を行うためには、会社に著しい損害が生じるおそれがあることや、法律や定款に違反している行為があること、株式会社の目的外の行為があることなどを立証する証拠が必要となります。

損害賠償請求を行う

会社に損害を生じさせた役員に対しては、損害賠償を求めることができます。

役員の不正に関する損害賠償請求は認められやすい

会社法では、役員は会社のために最善を尽くす義務があるとされています。したがって、役員の不正行為は、この義務を果たしていないことになり、役員には過失があるということになります。役員に過失がある場合は、その行為によって生じた損害賠償を求めることができます。損害賠償にあたっては、損害を立証する資料を元に実際の損害を算定して請求します。一般的には、まず内容証明郵便で請求書類を送付し、それでも支払いに応じなければ訴訟などの法的措置を検討することになります。役員が、損害賠償金の支払いに応じる場合は、示談書を取り交わしましょう。

株主代表訴訟を提起されるおそれもある

会社側が役員の損害賠償請求を求めない場合は、株主が株主代表訴訟を提起する可能性もあります。株主代表訴訟とは、役員や取締役などの過失によって企業が損失を被った場合に、株主がその損害を賠償するようにと求める訴訟です。株主代表訴訟で、不正行為をはたらいた役員に対する損害賠償請求が認められると、役員は会社に賠償金を支払うことになります。また、会社は訴訟を提起した株主に対して、弁護士費用等の一部を支払うことになります。

役員を解任する

役員の不正が著しく、解任が適当と判断される場合は、役員の解任を求めます。役員を解任するためには、株主総会の決議が必要です。通常の株主総会でも臨時株主総会でも構いません。オーナー一族が株を保有している場合や、株主がごく少数の場合は、比較的容易に株主総会を開催できますので、解任手続もスムーズに進みます。代表取締役を解任する場合は取締役会の決議のみで問題ありません。

役員を解任する場合は、その理由が不正に基づくものであることを示しておきましょう。解任された役員が、役員を解任されたことで生じた損害の賠償を求めて、損害賠償請求を提起するおそれがあります。それに対抗するためには、正当な解任であったことが客観的に分かる証拠等が必要となります。

役員を解任したら、役員の変更があったことを登記しておかなければなりません。役員の変更を登記しなければ、役員を解任したとみなされず、対外的には役員として活動していることになってしまいます。

刑事告発を検討する

役員の不正行為が悪質である場合や損害賠償請求に応じない場合は、刑事告訴を検討します。役員が会社のお金を横領していた場合は、業務上横領罪が成立する可能性があります。役員が自分や第三者の利益のために会社の損害を与える目的で、行った不正については特別背任罪が成立する可能性があります。
業務上横領罪で有罪になった場合の刑罰は「10年以下の懲役刑」のみです。罰金刑が存在しませんので、施行猶予付き判決が言い渡されなければ刑務所に服役することになります。
特別背任罪の刑罰は「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金」です。

不正をはたらいた役員をこれらの罪に問うためには、警察への被害届の提出、もしくは告訴状の提出が必要です。警察に被害届を提出した場合、警察は捜査をする義務はありません。しかし、告訴状であれば必ず捜査をしなければならないとされていますので、告訴状の提出を検討しましょう。

ただし、刑事事件として捜査が行われることになると、広く報道される可能性もあり、企業のイメージ悪化を招くリスクもあります。刑事告訴を検討している場合は、企業への影響を踏まえた上で慎重に検討しましょう。

役員の不正の再発防止策を講じる

役員の不正は企業の大小に関わらず発生しますが、その都度再発防止策を講じる必要があります。
例えば、金銭の横領の場合は、横領ができないように一定の金額以上の入出金に関してはダブルチェックを必須とする、監視カメラを設置する、などのルールを設けることである程度再発を防止できます。
また、業務が不透明になりやすく不正が見つかりにくいのであれば、定期的に第三者機関による監査を行うことも有効です。これらの再発防止策は、自社内だけで検討するのではなく、企業法務を専門とする弁護士の助言を受けましょう。

役員(取締役)の不正行為のまとめ

役員が不正を行った場合は、事実関係を調査した上で、役員の違法行為を差し止めるだけでなく、役員の解任や損害賠償請求、刑事告訴など様々な対応が必要となります。違法行為の差し止めや、役員の解任や損害賠償請求などの手続は高度な法的知識が求められますので、弁護士に対応を一任しましょう。役員の不正問題は社内だけでなく対外的な信用を失墜させる問題でもありますので、企業の迅速かつ適切な対応が重要です。最適な再発防止策を講じて、問題の再発を防ぐことも非常に重要ですので、すべての手続を同時並行で速やかに進めておきましょう。

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