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定年・再雇用

定年・再雇用

日本では、2011年から人口減が始まり少子高齢化が顕著になっています。高齢化が進み、働き手が減り社会保障費の担い手が少なくなる社会保障費の問題が深刻です。そこで、打ち出されたのが高齢者の定年制度の撤廃や再雇用です。現在は、3種類の高齢者雇用確保措置が義務化されています。そこで今回は定年後の再雇用や高齢者の雇用に際して、制度の概要や注意すべき点を解説します。

高齢者の雇用ルール

日本では、高齢者の雇用に関してはいくつかのルールが定められています。まずは雇用する上のルールを確認しておきましょう。

定年は60才以上にすること

高齢者を雇用する場合は、定年は60才以上にすることが、高年齢者雇用安定法第8条に規定されています。55才や58才などの定年は認められていません。

3つの高年齢者雇用確保措置の義務化

定年を65歳未満に設定している企業は、高年齢者の65歳までの雇用を確保するため、下記のいずれかの措置をとらなければならないとされています。

  • ・65歳までの定年の引き上げ
  • ・65歳までの継続雇用制度の導入
  • ・定年の廃止

65歳までの継続雇用制度とは、「再雇用制度」のことをいいます。正社員ではなく嘱託社員で再雇用する場合もこちらに該当します。

高齢者雇用に関する届出

高齢者を雇用している場合、毎年6月1日現在の「高年齢者雇用状況」をハローワークに報告しなければなりません。報告時期にハローワークから、報告要旨が送付されます。

中高年離職者には再就職のサポートを

中高年齢者が退職する場合は、本人が希望すれば求人の紹介などのサポートをする必要があります。中高年齢者とは45才以上65歳未満です。

継続される有期雇用労働者の無期転換申込権

高齢者を雇用する場合や再雇用する場合、嘱託契約などの有期雇用となる場合が多い傾向です。高齢者だけでなくすべての労働者には「継続される有期雇用労働者の無期転換申込権」という権利が認められています。これは、有期労働契約が複数回繰り返されて通算5年を超えた場合は、労働者が申告することで無期労働契約に転換できるという権利です。ただ継続雇用の労働者で、企業側が適切な雇用管理の計画を作成して、都道府県労働局の認定を受けている場合は無期転換申込権は発生しません。

定年後の再雇用・勤務延長制度とは

定年後の従業員を雇用する方法は、「再雇用」と「勤務延長」の2種類です。それぞれを正しく理解しておきましょう。

定年後の再雇用制度

定年後再雇用制度とは、定年を迎えた社員を退職扱いとした後に、再度雇用することをいいます。再雇用後の雇用形態は、嘱託社員、契約社員、パートやアルバイトなどの非正規雇用の形で雇用することが多いです。多くの企業は、こちらの定年後の再雇用制度を導入します。

勤務延長制度

定年で雇用を終了させずに、そのまま雇用を継続することを勤務延長といいます。雇用形態はそのままで給与体系や業務なども定年前と変わりません。

定年後の再雇用・継続雇用制度の退職金

定年後の再雇用制度は、一度退職するため退職金は退職時に支給します。勤務延長制度は退職ではないため、退職する際に退職金を支給します。

雇用契約や定年後再雇用について企業が把握しておくべき事項とは

従業員(労働者)が労働を提供し、企業(使用者)がその対価として報酬を支払う契約を「雇用契約」といいます。雇用契約は、民法や労働基準法に基づいて締結しなければならず、雇用条件や待遇などのさまざまな条件については、企業と従業員との間で合意を得る必要があります。

人手不足が深刻化するなか、従業員が安心して長く働ける職場づくりは企業の課題といえます。「知らなかった」「聞いていた話しと違う」といった主張によって無用なトラブルが起きることがないよう、雇用契約について理解を深め、合意が必要な事項やルールを書面に残しておくことが重要です。

また、定年後の働き方として「再雇用制度」が多く企業で進められています。新たな雇用形態で契約を交わすことになるため、円滑に運用するために制度内容を正しく理解しておく必要があるでしょう。労使間トラブルの防止、人材の有効活用の観点からも、雇用契約の記載内容や制度設計について把握しておきましょう。

雇用契約書・労働条件通知書について

労働条件を入社前に明示することが必須

企業が従業員を雇用する際、労働条件を明示する義務があります。従業員に労働条件を明示する手段には、「労働条件通知書」「雇用契約書」「労働契約書」が用いられることが一般的です。

働き方が多様化する現代においては、あらゆる雇用形態に適用した様式になっているか確認が必要です。とくに給与・昇給などの待遇面、人事異動、退職などに関する事項は、企業側と従業員との認識にズレが生じ、トラブルへ発展するケースも少なくありません。

労働基準法を遵守した内容になっているか、雇用形態の違いなどで起こり得る問題をカバーできているかなど、自社での修正やチェックが難しい場合は、労務に詳しい弁護士へご相談ください。

雇用契約書の作成は義務ではない?

雇用契約書(労働契約書)とは、勤務時間や給与、休日などの労働条件について合意がなされたことを証明する書面です。企業と従業員の双方で署名捺印をして、2通をそれぞれ保管するのが一般的です。

しかし、雇用契約書の作成は、法律上で義務付けられていません。口頭での契約でも効力が発生するため、書面で締結しなくても罰則規定がないのも特徴です。とはいえ、口頭のみの契約では、後日「言った・言わない」といった争いに発展する可能性もあります。トラブルを防ぐためにも、証拠として雇用契約書を双方で確認し、締結しておくことが望ましいでしょう。

労働条件通知書の交付は労働基準法で定められている

雇用契約書と混同しやすい書面に「労働条件通知書」があります。労働基準法では、労働時間などの労働条件を従業員に明示しなければならないと義務づけています。雇用契約書とは異なり、双方の署名捺印が必要なく、一方的に通知することが特徴です。

労働条件通知書を交付しない、あるいは記載内容に不備があった場合は、企業側に罰金が科されるため注意しましょう。

労働条件通知書の記載事項には、労働時間や業務内容、賃金の支払についてなど、労働基準法で書面による交付が必須と定められている「絶対的明示事項」と、口頭の明示でもよい「相対的明示事項」があります。書面による交付が義務でない事項であっても、相互の認識のズレを回避するためには、休職や退職手当などの詳細についても労働条件通知書には記載しておくべきといえます。

定年後再雇用について

定年後再雇用には人事・年金・報酬を踏まえた制度設計が必要

年金受給年齢の引き上げや人手不足問題などにより、定年後再雇用が注目されています。労使ともにメリットのある定年後再雇用制度ですが、法律の解釈が複雑でわかりにくい性質があるため、再雇用制度の計画が不十分という企業も少なくありません。

再雇用について十分な制度設計がなされていないと、定年を迎える従業員と裁判トラブルに発展したり、知らぬうちに企業が法的リスクにさらされている可能性があります。

また、定年後の再雇用によって、報酬を減額したり、やりがいのある職務を用意できなかった場合は、従業員のモチベーション低下を招きかねません。再雇用した従業員の活躍や貢献を考慮せず、「軽負荷な業務で、賃金を安くする」という措置だけでは、本質的な意味での「シニア人材の活用」とは言えないでしょう。

従業員一人ひとりが、能力や意欲に応じて最適な職務に就き、それに応じた報酬を得られる体制を目指すためには、報酬や年金制度、人事制度などの包括的な制度設計の見直しが求められます。

労使間トラブルを回避し、従業員が目標を持って能力を発揮できるよう、最適な再雇用制度の整備を行いましょう。再雇用に伴う就業規則や雇用契約の見直しには、実績と経験のある弁護士までご相談ください。

定年後再雇用に向けた措置

少子高齢化や人手不足が進むなか、シニア世代をいかに活用していくかが企業の人材確保の課題といえます。そんななか、厚生年金保険法の改正によって、年金の受給開始年齢が65歳まで引き上げられています。シニア世代の人材活用や、年金受給までの収入確保の観点から、高齢者の雇用制度が見直されました。

2013年に改正された「高年齢者雇用安定法」では、65歳までの収入確保の観点から、以下を企業に義務付けています。

60歳未満の定年禁止(高年齢者雇用安定法8条)

事業主が定年を定める場合、60歳以上としなければなりません。

65歳までの雇用確保措置(高年齢者雇用安定法9条)

定年を65歳未満に定めている事業主は、以下のいずれかの措置が講じなければなりません。

  • 1. 定年年齢を65歳まで引き上げ
  • 2. 65歳までの継続雇用制度を導入(再雇用制度・勤務延長制度など)
  • 3. 定年制の廃止

厚生労働省の発表では、上記の3つの雇用確保措置のうち、定年後再雇用などの継続雇用制度を導入している企業が約8割を占めています。

定年後再雇用制度の導入に向けた取組

定年後再雇用制度を導入するにあたり、いくつか留意すべきポイントがあります。これらを経ずに導入すると、社内に混乱を招くため必ず行いましょう。

支給する賃金の見直し

定年後再雇用であっても、同一賃金同一労働の原則を守らなければなりません。雇用形態による不合理な待遇差を設けることは禁止されています。再雇用後も同じ職務に就いているにもかかわらず、再雇用を理由に賃金を下げる行為は、法律に抵触する可能性があるほか、従業員のモチベーション低下につながることがあるため注意しましょう。

年齢や成果だけでなく、能力や業務内容に応じた給与制度を導入するなど、再雇用に適した給与制度に見直す必要があります。業務内容や責任などを定義したうえで、労使合意の上で決定するようにしましょう。

高年齢者の健康管理

再雇用にあたり、従業員の健康管理が必要です。能力や経験に長けたシニア人材でも、体力面の不安は無視できません。個々の体力に応じた職務を用意したり、勤務日数や勤務時間の見直しすなど、健康を維持できる勤務形態の導入を考えることも企業の責任のひとつといえます。

健康状態の悪化や労災が起きないよう、日頃から健康チェックを実施したり、体調面に応じて作業量や業務時間を調整するなど、柔軟な対応が必要です。勤務形態の多様化に応じて、自社の就業規則等の改正も忘れずに行いましょう。

モチベーションを高く保つ労働環境の整備

定年後再雇用を行うにあたり、再雇用者のモチベーション管理も重要です。賃金ダウンによるもの以外にも、役職の変更による部下とのコミュニケーションなどで、モチベーションが下がる可能性があります。

意欲的に業務に取り組み、能力を最大限に発揮するためには、高年齢者に適した作業施設の導入やスキルに応じた業務の提供などを整備することが重要です。また、他の社員からの不満が発生しないよう、社内研修やコミュニケーションの場を設けることも大切です。

就業規則の変更と届出

定年後再雇用を導入にあたって、就業規則の変更があった場合は、所轄の労働基準監督署に届出する必要があります(常時10人以上の労働者を使用している企業)。労務管理を適切に行うためだけでなく、再雇用時に従業員との紛争を防止するためにも重要となるため、労務に詳しい弁護士にご相談のもと、就業規則や雇用契約書などの見直しを実施しましょう。

高齢者を再雇用する場合に注意すべきポイント

高齢者を再雇用する場合は、以下の点に注意する必要があります。

有期雇用とする場合は無期転換ルールに注意

嘱託社員や契約社員として高齢者を再雇用する場合は、「無期転換ルール」の適用に注意が必要です。先述した「無期転換申込権」は高齢者の場合、企業が適切な計画を策定して、都道府県労働局長の認定を受けていれば適用されません。この手続を怠ってしまうと、有期雇用として高齢者が、無期労働契約を申し込み認めざるを得ない可能性があります。

同一労働同一賃金の原則

同じ業務に就いているのであれば、雇用形態を問わず同じ賃金を支払わなければならないという法律が、2020年4月1日に施行されます。中小企業は2021年からです。したがって、高齢者が正社員からパート従業員になり、業務内容や業務時間が変わらなければ給与の減額が認められない可能性があります。

雇用形態や賃金を変更する場合は説明を

雇用形態や賃金など業務や待遇に大きな変化がある場合は、事前に通知して納得してもらう必要があります。一方的に待遇を変更するとトラブルに発展するリスクがありますので、必ず雇用形態や賃金、業務内容や勤務時間、勤務地などの条件を説明しておきましょう。

定年後の再雇用する場合の労働条件通知書と雇用契約書

定年後に従業員を再雇用するにあたって、忘れてはならないのが労働条件通知書の交付、もしくは労働条件が記載された雇用契約書の取り交わしです。それまで雇用していた社員ですので、新入社員という感覚がなく、これらの手続を見落としがちです。しかし、労働条件を文書もしくは電子記録で交付することは、労働基準法で定められています。また、労働条件を明確に書面にしておかなければ、「退職前よりも給与が低くなった、聞いていない」などとトラブルに発展しかねませんので必ず労働条件通知書を作成して交付しましょう。

定年後再雇用する場合の労働条件通知書の作成方法

定年後に再雇用する場合の労働条件通知書の作成方法は、新入社員の労働条件通知書の作成方法と変わりません。基本的には以下の項目をすべて盛り込む必要があります。

  • ●労働契約の期間
  • ●就業場所
  • ●就業する業務
  • ●始業と終業の時刻
  • ●所定労働時間を超える労働の有無
  • ●休憩時間
  • ●休日
  • ●交替制勤務の有無
  • ●賃金の決定、賃金の計算方法、支払い方法、締め日と支払時期
  • ●賃金の昇給に関する事項
  • ●退職に関する事項
  • ●退職手当が支給される労働者の範囲や退職手当の決定、支払い方法、支払時期について
  • ●臨時に支払われる賃金、賞与や最低賃金額に関する事項
  • ●労働者が負担する食費や作業用品について
  • ●安全衛生に関する事項
  • ●職業訓練に関する事項
  • ●災害補償及び業務外疾病扶助に関する事項
  • ●表彰及び制裁に関する事項
  • ●休職に関する事項

この中で特に重要なのは、退職前と変わる部分です。有期雇用契約となる場合、賃金が下がる場合、労働時間が短くなる場合など、退職前と待遇等が変わる部分は変更が正しく反映されていることを確認してください。

また、文書で通知するだけでなく、口頭でも十分に説明を尽くしておきましょう。

有期雇用契約なら、雇用契約書の取り交わしも

契約社員や嘱託社員で、契約期間の定めがある場合は雇用契約書も取り交わしておくと安心です。雇用契約書は労働条件通知書とは異なり、双方が署名捺印しますので、労働期間等でトラブルがあった場合に、「了承済みだ」という確かな証拠になります。労働条件通知書に雇用契約書が付属したものを使用してもよいでしょう。雇用契約書と就業規則の交付でも問題ありませんが、雇用形態が大きく変わる場合は労働条件通知書も一緒に交付しておくと安心です。

定年・再雇用のまとめ

定年した高齢者を再雇用する場合、様々な法律知識を基にした計画が必要です。無計画に再雇用してしまうと、有期雇用契約だったはずが無期雇用契約になってしまうなどの問題が発生してしまいます。労働条件通知書や雇用契約書などで、労働条件の提示も必須です。就業規則の見直しが必要になる場合もありますので、定年再雇用を検討している場合は、再雇用を行う前に様々な制度やルールの整備が必要です。定年後再雇用を行う場合は、人事労務を専門とする弁護士にご相談ください。

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