無料と謳う求人広告に関する詐欺トラブル
相談内容
依頼者は、会社経営者で、日常的に求人を行っていたところ、ある時、見ず知らずの求人サイト運営会社からの電話営業がありました。当該求人サイト運営会社の営業担当者は、二週間無料で依頼者の会社の求人広告を自社の求人サイトに掲載できると持ち掛けてきました。依頼者は、最初は不審に思ったものの、営業担当者が費用は一切かからないと約束したため、それに応じてしまいました。
その際、営業担当者からは、無料掲載期間が終了したなら、契約は終了できるし費用は一切かからないと言われ、依頼者は、絶対に契約延長はしないとも営業担当者に伝えました。そして、当該求人サイト運営会社からFAXで申込書が送られてきて、その際にも記載方法について営業担当者に確認し、無料掲載期間だけしか掲載しないと念押しした上で、署名・押印をし、本契約を締結しました。
しかし、その後、当該求人サイト運営会社より、本契約は自動更新になったので、決められた委託料を支払えと、法外な金額を請求されました。依頼者は当該求人サイト運営会社の担当者に対し、電話営業の際の話もしましたが、全く聞く耳を持ってもらえなかったため、弊所に相談をしました。弊所は、直ちに受任し、代理人として、相手方に対する対応を開始しました。
解決までの道筋
まずは、依頼者に、電話営業の際の話の具体的な内容、申込書に署名・押印した経緯について、詳しく伺いました。話を聞けば聞くほど、当該求人サイト運営会社は悪質で、依頼者は、申込書の自動更新する旨の記載を見て、自動更新はしないということを明確に営業担当者に伝え、最初に申込書をFAXで送った際には、その箇所には、チェックを入れませんでした。しかし、その後すぐに、営業担当者より連絡があり、自動更新をしない場合でも、チェックを入れないと契約できない、チェックを入れたとしても自動更新にならないし、費用はかからないなどと言われたため、依頼者はチェックを入れたものを改めてFAXしました。
このような経緯からすれば、本件は明らかに詐欺的な勧誘により、依頼者を騙して本契約が締結されたものであることは明らかでした。また、無料掲載期間から本契約に移行した場合の委託料についても、法外な金額であり、契約期間中は、途中解約できない等の記載があり、依頼者にとって極めて不利な内容となっておりました。
そこで、弊所としては、本契約が民法第90条(公序良俗違反)、同法第95条(錯誤)、同法第96条(詐欺)に該当し、本契約は取り消す旨を主張しました。また、仮に、本契約が有効だとしても、債務不履行により、本契約は解除し、当該求人サイト運営会社の役務に比して委託金額が法外であることから、請求には一切応じられないとの主張を内容証明郵便にて通知しました。
その後、当該求人サイト運営会社からの依頼者への請求は止み、本件は、解決となりました。
悪徳業者に騙されないためのポイント
近年、インターネット上の求人サイトに無料で求人広告の掲載が出来ると言って、事業者を勧誘し、実際に契約をしてしまうと、一定期間経過後に、法外な委託料を請求されるといったトラブルが日本各地で増えております。その内容は、本件の相談と同じように、費用は一切かからないと偽って、契約を締結し、その契約の中に、連絡がなければ自動更新とか、中途解約不可といった内容が含まれており、それを根拠として法外な委託料の支払いを求めてくるといったものです。
このような詐欺的商法に対し、一般消費者であれば、消費者契約法によって守られておりますが、本件では、契約の当事者は事業者であるので、消費者契約法の適用はないので、民法により解決が図られることとなります。被害者となった事業者の中には、言われるがままに支払ってしまったり、当初の請求額よりは減額した金額を支払えば、和解するなどと言われて、一定額を支払ってしまう事業者もいるようです。
しかしながら、本件のように、民法の規定によっても取り消しうる事案においては、全く支払う必要がない場合もありますし、事業者の方も、裁判になれば、裁判所で自らの詐欺的商法が明らかになることを恐れて、訴訟をすると云うのはあくまで脅し文句で実際には訴訟をしてこないケースもあります。かと言って、求人サイト運営会社側から訴訟を提起してきた場合には、それを無視してしまうと、求人サイト運営会社側の主張が認められてしまうので、適切に対応しないと取り返しのつかないこととなります。
このような請求をされた場合には、すぐに相手の言うがままに支払ってしまうのではなく、その請求が、契約上有効で、法律上も適法と言えるかについて、弁護士に相談することをお薦めします。一度支払ってしまうと、詐欺グループの中に流通する所謂「鴨リスト」に載ってしまい、さらに詐欺グループからのターゲットにされてしまうことも懸念されます。
また、詐欺グループは巧妙に勧誘をしてきますが、そもそも、無料掲載といった甘い話には、必ず毒がありますので、電話営業のような形で全く見ず知らずの業者からうまい話の誘いがあっても、安易に乗らないことが重要と言えます。
悪徳業者の詐欺によくある手口
自動更新について
前述のご相談においては、自動更新のチェックについて、担当者とのやり取りがあった事案でした。しかし、チェックにすでにレ点が入っている、チェック項目がないなど、自動更新についてなんらのやり取りがないこともあります。他には、自動更新について説明があり、自動更新前に解約確認の書類を送るからそれを返送してほしいと言われているが届くことはなく、いつのまにか自動更新されていたという事案も多数確認されています。解約確認するような書類は届いていないと相手に告げると、配達証明で送っており到達を確認していると言われる場合もあります。配達証明は、何らかの書類を送り配達したという事実を証明するのみで、どのような書類を送ったのかは証明するものではありませんから、解約確認書類を送ったのかまでは確認できません。また、相手は配達証明で送ったと言っていますが追跡番号を伝えられたケースは確認できておらず、そもそも配達証明で送ったということすら虚偽の可能性があります。そういえばアンケートみたいなものが届いていたかもとおっしゃっていた相談者の方もおられましたので、解約書類とは一見思えないような書類を送っている会社もあるようです。
請求について
1求人当たり20万円~30万円の請求が多いように思いますが、10万円前後の請求もありいます。基本的には、契約書に自動更新の記載があり、更新後は有料の定めがあるから支払えの1点張りで何度も請求があります。弁護士を入れると費用がかかるから支払った方がいいということも言われるようです。また、すぐに支払ってくれるのであれば、減額するなどといわれることもあります。弁護士等に相談される前に早く支払わせようと必死になって請求してきます。なお、実際に弁護士を入れてきた事案も確認されています。
求人広告詐欺に騙されてしまったときの対処法
支払わないということが大切です。契約書には、自動更新の記載があり、その確認不足であるから自分が悪いと考えたり、相手が減額してきて、それほど高額ではないからなどの理由で、支払ってしまう方も多いようです。しかし、支払わないで頂きたいです。支払わないことは難しくないですが、支払ったものを取り返すのは相当困難です。
本記事にあるような求人広告に関する請求について支払いはせずに、弁護士法人キャストグローバルにご相談ください。
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