- 採用
アルバイト採用時のトラブル
相談内容
依頼者は、雑貨店を経営する会社です。新規店舗をオープンするに際して、新たにアルバイト店員を募集したところ、複数名の応募がありました。採用予定の人数よりも応募が多数であったため、第一次面接を行い、さらに続いて、第二次面接を行いました。そして、社内の採用基準に基づき選考を行い、最終的に1名を採用しました。
採用者が決定した後、第二次面接に来ていただいたものの不採用となった応募者の方(以下「相手方」といいます。)に対し、不採用となった旨の通知を送ったところ、相手方から、不採用処分はおかしいとのクレームがあったため、依頼者は弊所にご相談されました。
相手方は、依頼者に対し、不採用のご連絡をした当初から、弁護士に相談すると話をしていたとのことでしたので、弊所としてもすぐに受任し、代理人として、相手方との対応を開始しました。
解決までの道筋
弊所が依頼者の代理人として、本件トラブルに関する事件を受任した旨を相手方に通知すると、相手方も弁護士を代理人としましたので、その弁護士から受任通知が届きましたので、交渉の最初から弁護士間の交渉となりました。
主な争点は、第二次面接の時点で既に依頼者と相手方との間で雇用関係が開始されていたと認められるかどうかでした。依頼者の担当者と相手方とは、メッセージアプリを利用して面接等に関する連絡事項のやり取りを行っておりました。その内容を確認すると、依頼者から相手方に送られたメッセージの中には、相手方を採用したと明確にお伝えこそしておりませんでしたが、確かに相手方に雇用関係が開始されたと誤解を招きかねない表現もありました。
そこで、弊所としては、依頼者が相手方に対し、誤解を招くような対応をしたことについては、真摯にお詫びをした上で、雇用関係は開始していないことを前提として、解決金を支払うことにより解決を図るという方針をとることとしました。そして、相手方の弁護士との間で複数回の交渉の結果、適正な解決金を支払うことで合意し、労働審判や訴訟等の手続に入ることなく、短期間のうちに交渉のみで解決することが出来ました。
解決のポイント
本件では、採用時の手続について、依頼者側に慎重さに欠ける対応があり、その結果として、このようなトラブルにまで発展した事案でした。たとえアルバイトであっても、募集から応募手続きを経て、面接、内定、試用期間といった本採用に至るまでの採用手続きの過程においても、応募者の権利は保護されており、会社としてその権利を侵害すれば、思わぬトラブルを招くことになりますし、場合によっては、採用するつもりのなかった応募者との間で雇用関係が成立していると認定されることもあり得ます。
採用手続きにおける応募者の保護について、会社にこのような認識がなく、強硬な態度を取り続ければ、相手方が弁護士や労基署に相談したり、訴訟になるなどして紛争は長期化し、会社の損害が拡大するケースも少なくありません。本件のように相手方に弁護士が付いたような場合には、会社の判断のみで対応するのではなく、すぐに弁護士に相談して、相手方との交渉を任せた方が安心です。
特に、労働問題においては、初動の対応が非常に重要となりますので、採用時のトラブルに限らず、トラブルが発生したら、すぐに弁護士に相談することをお薦めします。また、そもそもこのようなトラブルを起こさないためにも、自社の採用手続きに不備がないかについても、日頃から弁護士に相談できる体制を取っておくことが、紛争を未然に防ぐためには必要となります。
最後に
代理人間の交渉により、相手方に一定の解決金を支払うことで解決しました。