無料求人広告のトラブル事例|詐欺的な掲載料請求への対処法を弁護士が解説

「2週間無料」と言われて求人広告を申し込んだのに、後日になって高額な掲載料を請求された——。当事務所には、こうしたご相談が数多く寄せられています。本記事では、実際の相談事例をもとに、業者のよくある手口と、請求を受けたときの対処法を、弁護士がわかりやすく解説します。
1.ご相談の内容|「2週間無料」のはずが高額請求された
ご相談者は、求人を行っていた会社経営者の方です。ある日、見ず知らずの求人サイト運営会社から電話営業があり、「2週間無料で求人広告を掲載できる」「無料期間が終われば契約は終了し、費用は一切かからない」と持ちかけられました。
最初は不審に思ったものの、「費用は一切かからない」と約束されたため申し込むことにし、「絶対に契約延長はしない」と担当者にはっきり伝えました。その後、運営会社からFAXで申込書が届き、記載方法を担当者に確認し、無料期間だけの掲載であると念押ししたうえで、署名・押印して契約しました。
ところが後日、運営会社から「契約は自動更新になった」として、法外な金額の委託料を請求されました。電話営業のときの説明を伝えても聞き入れてもらえなかったため、当事務所にご相談いただきました。
2.弁護士の対応と解決までの流れ
まず、電話営業でのやり取りや、申込書に署名した経緯を詳しくお伺いしました。すると、ご相談者は申込書の「自動更新する」という欄に、最初はチェックを入れていませんでした。しかし担当者から「チェックを入れないと契約できない、入れても自動更新にはならず費用もかからない」と言われ、やむなくチェックを入れて再送していたことが分かりました。
この経緯からすれば、詐欺的な勧誘によって契約させられたことは明らかでした。委託料も法外で、契約期間中は途中解約できないなど、ご相談者に著しく不利な内容でした。
そこで当事務所は、この契約が民法90条(公序良俗違反)・95条(錯誤)・96条(詐欺)に当たるとして、契約を取り消す(無効である)と主張しました。あわせて、仮に契約が有効だとしても、提供された役務に比べて委託料が法外であることなどから債務不履行による解除ができ、請求には応じられないことを、内容証明郵便で通知しました。その結果、運営会社からの請求は止まり、解決に至りました。
こうした求人広告掲載料の請求は、裁判でも認められなかった例があります。詳しくは求人広告掲載料の請求が否定された裁判例をご覧ください。
3.よくある手口
ここまでご紹介した事例は、特別なケースというわけではありません。求人広告掲載料をめぐるトラブルには、いくつか共通した手口が見られます。ここでは、当事務所に寄せられるご相談をもとに、業者によくある手口を「自動更新」と「請求」の2つの面から整理します。ご自身の状況に当てはまる点がないか、確認してみてください。
3-1.自動更新の手口
本件のように申込書のチェック欄でやり取りがある例のほか、はじめからレ点が入っている、そもそもチェック項目がない、という例もあります。また、「解約確認の書類を送るので返送してほしい」と言われたのに書類が届かず、いつの間にか自動更新されていた、という相談も多く確認されています。
「書類は届いていない」と伝えると、「配達証明で送った」と言われることがあります。しかし配達証明は“何かを送った”ことを示すだけで、解約確認の書類を送ったことまで証明するものではありません。追跡番号が伝えられた例もあり、確かに何らかの書類は届いていましたが、何が送られてきたのか不明、または営業チラシのようなものが入っていた気がする、とのことでした。そもそも送付の事実自体が不確かなこともあります。
3-2.請求の手口
請求額は1件あたり20〜30万円が多く、10万円前後のこともあります。「契約書に自動更新と有料の定めがあるから支払え」の一点張りで、何度も請求が来ます。「弁護士を入れると費用がかかるから支払った方がよい」「すぐ支払えば減額する」などと、弁護士に相談される前に支払わせようとする例も見られます。実際に業者側が訴訟を起こした事案も確認されています。
3-3.怪しい業者を見分ける6つのポイント
「この会社は大丈夫だろうか」「詐欺業者の社名を知りたい」とお考えの方も多いと思います。特定の社名を一覧で挙げることは差し控えますが、トラブルになりやすい業者には共通した特徴があります。次のような点に心当たりがある場合は、契約の前に慎重な確認をおすすめします。
- 1.見ず知らずの相手から、電話やFAXで突然「無料」での掲載を持ちかけてくる。
- 2.「今だけ」「無料期間中だけ」などと、契約を急がせる。
- 3.申込書に「自動更新」の記載やチェック欄があるのに、口頭では「更新も費用もない」と説明する。
- 4.解約方法が「解約用紙の郵送のみ」など、わかりにくく限定されている。
- 5.会社の所在地・連絡先・掲載実績がはっきりせず、検索しても情報が乏しい。
- 6.契約書や申込書の控えを、なかなか渡してくれない。
ひとつでも当てはまる場合は、その場で署名・押印せず、契約内容をいったん持ち帰って確認することが大切です。判断に迷うときは、弁護士にご相談ください。
4.請求が届いたときの対処法とポイント
無料求人広告サービスの利用後に高額な請求が届いた場合、慌てて対応すると不利益を被ることがあります。まずは以下のポイントを押さえたうえで、落ち着いて対応することが大切です。
4-1.消費者契約法は適用されない(事業者間契約であることに注意)
求人広告の掲載契約は、会社(事業者)と広告会社(事業者)との間の契約、すなわち「事業者間契約」にあたります。そのため、個人の消費者を保護するための消費者契約法は適用されず、民法などの一般的な契約ルールに基づいて対応を検討することになります。「消費者だから守られる」という前提は通用しないため、契約書や申込内容そのものを精査する必要があります。
4-2.安易に支払わない・すぐに和解しない
「今なら減額します」「今日中に支払えば安くします」といった連絡を受けても、その場で支払いや和解に応じるのは避けてください。相手の言い分をそのまま受け入れて支払ってしまうと、たとえその請求に法的な問題があったとしても、後から取り戻すのは非常に困難です。減額提案自体が、支払いを急がせるための交渉テクニックであるケースも少なくありません。
4-3.請求を無視するとどうなるか
「無料お試し」などをうたう悪質な業者は、費用や手間を理由に訴訟まで踏み切らないケースが比較的多いといわれています。しかし、これは「絶対に訴えられない」ことを意味するものではなく、実際に提訴された事例も確認されています。
特に注意が必要なのは、裁判所から書類(訴状や支払督促など)が届いたにもかかわらず、それを放置してしまった場合です。決められた期間内に答弁書を提出したり、異議を申し立てたりしなければ、相手の請求内容をそのまま認めたとみなされ(欠席判決・擬制自白)、法的に支払い義務があるという判決や決定が確定してしまうおそれがあります。こうなると、財産の差押えなど強制的な回収手続きに進まれるリスクも生じます。
つまり、「業者からの督促」自体を無視するのは一つの対応策としてあり得ても、「裁判所からの正式な書類」を無視するのは絶対に避けるべきです。督促と訴訟提起は別物であり、届いた書類が何なのかを正しく見極めることが重要です。
4-4.一度支払うと、業者間の名簿に載るおそれがある
一度でも請求に応じて支払ってしまうと、「交渉すれば支払う相手」として業者間で情報が共有され、いわゆる名簿に登録されてしまう可能性が指摘されています。その結果、同種の別業者からも次々と営業や請求の連絡が来るようになり、標的にされ続けるリスクが高まります。目先の請求を止めるために支払ったつもりが、かえって長期的なトラブルの火種になりかねません。
4-5.そもそも「無料」をうたう電話営業には安易に乗らない
見ず知らずの業者から「求人広告を無料で掲載できます」といった電話営業があった場合、その時点で慎重に対応することが最善のトラブル予防策です。契約の詳細(無料期間はいつまでか、自動更新の有無、解約方法、違約金の定めなど)を書面やメールで確認しないまま口頭だけで契約を進めてしまうと、後になって「言った・言わない」のトラブルに発展しやすくなります。
請求が届いても、すぐに支払うのではなく、その請求が契約上・法律上ほんとうに有効といえるのかを、弁護士に確認することをおすすめします。
5.よくあるご質問
求人広告掲載料の請求を受けた方から、よくいただくご質問をまとめました。対応に迷ったときの参考にしていただき、判断がつかない場合は弁護士にご相談ください。
Q. 請求を無視してもよいですか?
A. すぐに支払う必要はありませんが、「無視」はおすすめしません。放置したまま訴訟を起こされると、相手の主張がそのまま認められてしまうおそれがあります。請求が届いたら、支払う前に弁護士にご相談ください。
Q. すでに支払ってしまいました。取り戻せますか?
A. 一度支払ったお金を取り戻すのは、一般に容易ではありません。ただし、事情によっては交渉の余地がある場合もあります。あきらめる前に、早めにご相談ください。
Q. 訴えられることはありますか?
A. 「訴える」と告げて支払いを迫りながら、実際には訴訟をしない業者もいますが、実際に提訴された事案も確認されています。訴状など裁判所からの書類が届いた場合は、放置せず必ず対応してください。
Q. 相談費用はどのくらいかかりますか?
A. 当事務所では初回のご相談を無料で承っております。
求人広告掲載料の請求が届いてお困りの際は、支払う前に、弁護士法人キャストグローバルへお気軽にご相談ください。
以上