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 売買・建築 解決事例

不動産の買主側仲介業者と売主側仲介業者との間のトラブル

事例

売主側の仲介業者ですが、買主さんから売買の目的物である不動産に関して、買主側仲介業者に対してクレームが入ったようで、買主側仲介業者と買主さんとの間で和解をしたらしい。買主側仲介業者から、和解にかかった費用の2/3を負担せよとの訴訟が提起された。

売主側仲介業者はどこまで負担すべきなのか。業務と並行しての訴訟対応も大変なため、訴訟対応を依頼したい。

解決までの道筋

【仲介業者の責任】
不動産売買において、後になって瑕疵が発見された場合など、仲介を行った仲介業者にも責任が発生するケースがあります。また、仲介業者の責任は、仲介契約を依頼した顧客ではない第三者に対しても発生する場合があります(最高裁S36.5.26判決)。

今回のケースでは、依頼者企業は売主側の仲介業者であって、買主さんから仲介契約の依頼を受けたわけではありませんが、だからといって、ただちに売主側の仲介業者が買主さんに対する責任を一切負わないということにはなりません。

仲介業者の責任が問われるケースとしては、調査・説明義務違反が多いのではないかと思われます。

仲介業者は仲介しようとする売買契約に関して、宅建業法35条に明示されている重要事項以外の事項についても、売買当事者の意思決定に際して重要な事実については説明・告知を行わなければなりません。

しかしながら、仲介業者も物件の性状について専門的な調査能力を有しているわけではありませんので、物的な性状については、通常の注意を持って現状を確認し、その状態を説明をすれば足りるものとされています(大阪高判H7.11.21等)。

今回のケースでは、原告としては仲介業者としての調査・説明義務に反していたと考え、買主さんとの和解を急いだという事例で、当然に売主側の仲介業者にも同様に調査・説明義務違反があるという主張でした。

【本件の問題点】
本件においては、調査・説明義務違反がなかったことについても主張をしていましたが、この点については明示的な判断はなされませんでした。

本件で大きな問題点だったのは、買主側仲介業者が、買主さんからのクレームに対応するのに解決を急ぎ、買主さんに過大に有利な和解条件で、買主側仲介業者と買主間での和解をしてしまったため、当該和解にかかる費用が過大になってしまった点がありました。

また、買主側仲介業者としても、和解してしまうまで全く売主側仲介業者と連絡を取っていなかったわけではありませんでしたが、現地不動産の所在地と売主側仲介業者の所在地も離れており、具体的な買主さんのクレーム内容や解決方法について売主側仲介業者の方できちんと確認・検討が出来る前に、買主側仲介業者が買主さんとの和解を進めてしまったこともトラブルの一因となっていました。

ですので、訴訟上で大きな争点となったのは、①買主さんと買主側仲介業者との間でなされた買主さんに過大に有利な和解について、②買主側仲介業者・売主側仲介業者・売主の三者の間で解決方法や費用負担について合意があったといえるか、という点でした。

売主側仲介業者としても、同業者ともめたくない思いや、買主側仲介業者が早期解決のために早急に動いたこと、解決方法や費用負担について十分な説明や検討の機会があったとまでは言えないが、断片的な報告は受けていたこと等から、当初から和解で解決する意向もあり、裁判所提示の和解案も承諾の意向を示していたのですが、買主側仲介業者と折り合いがつかず、最終的には判決での解決になってしまいました。

判決としては、解決方法や費用負担について合意があったとは認められない、という趣旨の判決で、請求棄却となり、最終的には売主側仲介業者の費用負担の責任は認められななかったということになります。

【まとめ】
依頼者である売主側仲介業者にとっては、全面勝訴判決という解決になり、喜んでいただけました。

今回は、買主さんが法的に得られるべき利益以上の利益を得る結果になった半面、買主側仲介業者が損失を被る結果になってしまったわけですが、買主さんからクレームが入った時点で、どちらかが適切に弁護士に相談していれば、買主さんとの間で不当に過大な和解をしてしまうこともなく、仲介業者同士で訴訟にまで発展してしまうこともなかったのではないかと思われます。早い段階でのご相談が未然のトラブルを防止できることや、生じてしまったトラブル拡大を防止できるケースは多々あります。

気軽にご相談頂けるよう、顧問サービスのご利用を是非ご検討下さい。

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