株主間契約書

準拠する法律
会社法
  • 契約書の内容によってはその他必要書類があります。

株主間契約書について弁護士が解説

株式投資やM&Aなどにおいて、会社と株主間が円滑かつ有効に経営を行い、株主間におけるコンセンサスを取るためにも欠かせないのが「株主間契約」です。株式会社に関わるベンチャー企業や投資家、オーナー企業にとっては馴染みの深い契約のひとつといえるでしょう。しかし、株主間契約は、会社法の規定にとらわれることなく(強行法規に反しない限り)、自由に内容を定めることが出来、株主の間で合意があれば自由に設定できるため、柔軟性が高い反面、内容が適切具体的でないと法的拘束力が曖昧になりやすいという点に気を付けなければなりません。

株主間契約の締結にあたり、「契約書にどのような事項を記載すればよいか」「株主間契約を結ぶ利点はあるのか」など、正しく理解できていない企業も多いのではないでしょうか。ここでは、株主間契約におけるメリット・デメリットをはじめ、契約書の作成内容やタイミング、雛形や作成ポイントを分かりやすくお伝えします。

株主間契約書とは

ある会社に対して特定あるいは複数の株主が、会社の運営・株式の売却等について合意をすることを「株主間契約」といい、締結時に用いられるものが「株主間契約書」です。

ベンチャーやスタートアップ企業がVC(ベンチャーキャピタル)の株式投資によって資金調達を行うケースでは、投資契約に加えてVCから「株主間契約」の締結を要求されるケースが多くあります。

外部株主が1人であれば「投資契約」のみで株主間の合意事項を定める必要がないのですが、株式上場を目指すために、多額の資金を集めるため、複数の株主が出てくるのことが多く、いわゆる「共同出資」の状態になりますので、「株主間契約」によって各株主と重要事項について合意しておくのが賢明といえます。会社の運営や株式の取り扱いなどのルールを定めることは、経営を有効かつスムーズに行い、当事者間トラブルを防止する役割も備えています。

また、株主総会の決議では、議決権の過半数(50%以上)ある多数派株主の意思によって決定されるのが会社法上のルールとなっています。経営において重要な「取締役の選任・解任」などの重要事項の決定についても、多数派株主となる会社に決定権を渡すことになります。

とはいえ、持株割合が50%に満たない少数派株主であっても、リスクを負って投資する以上、経営意思決定に介入したいと考えるのが当然でしょう。また、事業が初期段階で成功するかしないかが全く見えないときから出資する場合は、比較的少額になる場合が多いですが、大きなリスクをとっています。にもかかわらず、事業が順調に拡大し、成功可能性が高まってから、多額の出資をして経営権を握ることになるとなると、リスクを取った少数株主はたまったものではありません。そのような場合に、少数株主が議決権を行使できるよう、株主間契約によって議決権行使の方法を合意することが可能です。

ただし、ここで注意しておきたいのは、株主間契約には債務不履行におけるデメリットを明確に定め間接強制になるようにしておかなければ、法的拘束力がよわくなってしまうということです。契約書の作成にあたっては、民法等の強行法規に反しない限り、会社と株主間で契約条件を自由に設定できます。柔軟に条項を盛り込めるといった利点もありますが、その反面、法的効力が曖昧になりやすいといったデメリットもあるため、契約書作成時にはそのリスクを十分に考慮しておかなければなりません。

株主間契約書のタイミングと内容

株主間契約はどのような場面で締結されるのでしょうか。
一般的な締結タイミングは以下が挙げられます。

  • 複数の企業が新たに合弁会社を設立して、その合弁会社の運営等について株主間で取り決めを行う場合
  • 第三者が株主となり既存の株式会社に資本参加する際に、その既存会社との間で運営等について取り決めを行う場合
  • 経営者が少数割合の株式を保有している場合に、多数派株主による株式買取や譲渡などの取り扱いについて必要な取り決めを行う場合

このように、会社の合併・分割に関する決定をはじめ、取締役や監査役の選任・解任、余剰金の配当など、経営判断が必要な決議において締結されることが一般的です。

なお、株主間契約書で定められるが多い事項には、以下があります。

機関設計に関する事項

取締役会や監査役会の有無などに関する条項です。合弁会社を設立する場合などは、株主間で機関設計について合意しておくケースも見受けられます。また、株式会社の任意機関として運営委員会を発足させるなど、意思決定の対象や構成員などを株主間で定めることもあります。

役員の選任、解任に関する事項

各株主が、取締役・監査役を何名ずつ指名し、解任できるかを定める条項です。会社法では、議決権の過半数を有する多数派株主の同意がなければ取締役や監査役の選任・解任ができないルールですが、株主ごとに関与する力が偏るのを防ぐために、「取締役は5名として、うちの2人をA社に、3人をB社に」といったように、株主間契約で定めておく必要があります。

投資家の事前承認(拒否権)

株主総会の普通決議事項では、「議決権割合が過半数の多数派株主の意向のみで可決できる」と定められています。しかし、少数派株主も重要な決議事項に関与したいと考えることから、「一定の重要事項を行う際は、少数派株主の同意が必要」と条項を盛り込むことが可能です。これにより、少数派株主であっても会社の意思決定に意向を反映できるようになります。

資金調達に関する事項

合弁会社の設立等によって新事業を立ち上げる際などは、資金調達が必要になるケースがあります。こうした場合に、各株主に対して資金調達の協力を得る旨の条項を記載することができます。出資額や出資額の割合、手続き方法などを明記します。

余剰金の配当に関する事項

会社法では、株主の持株比率に応じて余剰金の配当を行うことが認められていますが、株主間契約では、「企業が出す利益のうち、どの割合まで配当するか」といった詳細まで規定するケースがあります。

契約書に盛り込む内容は、株主間の状況や関係性よって異なるため、当事者間だけで定めるのが困難なケースもあります。どちらかの利益に偏った内容では公正性に欠けるほか、経営側に有利な契約は株主にもハイリスクといえます。株主間トラブルを防ぎ、円滑に経営を進めるためには、双方が納得できる条件を見出し、実行可能な内容を取り決めることが重要といえるでしょう。契約書の作成・チェックが難しい場合には、弁護士への相談も視野に入れるべきといえます。

株主間契約のメリット・デメリット

株主間契約を締結するにあたり、メリット・デメリットを把握しておきましょう。

メリット

  • 複数の株主がいる場合に、円滑な経営を実行できる(定款変更などの手続きが不要)
  • 重要事項の決定において、少数派株主の意向が反映されやすくなる
  • 会社と株主の間で自由に契約条件を決められる

株主間契約では、強行法規に抵触しない範囲であれば、株主間で自由に条件を定めることができます。経営において意向を反映しづらい少数派株主であっても、議決権を行使できる内容・範囲について株主間で合意することで、「少数派株主が意思決定に参加できる」というのが大きなメリットといえます。

また、経営側の視点からは、各株主に対して経営に関する重要事項を合意しておくことで、その都度協議をする必要がなくなり、円滑かつ有効的に経営を進められる利点があります。

適切な内容を定めない場合のデメリット

  • 法的な位置づけや法的効力が曖昧な点がある
  • 株主間契約に違反した場合に、明確な拘束力を期待できない
  • 定款ではないため、第三者に対抗できない

心得ておきたいのは、株主間契約は法的拘束力がよわくなってしまう可能性があるということです。契約を違反した場合に損害賠償請求は可能ですが、相手がその請求に応じない、損害の立証が出来ないリスクも考えられます。不明確な内容を定めてしまうと、契約における実効性が欠けてしまうことが大きなデメリットといえるでしょう。また、契約書を詳細に記載してしまうと経営の「乗っ取り」のような悪影響が生じる可能性があることも留意しておきましょう。

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