株式引受契約書

準拠する法律
会社法
  • 契約書の内容によってはその他必要書類があります。

株式引受契約書の注意点を解説

増資を用いた資金調達の手段として「第三者割当増資」などがありますが、株式を割り当てるにあたって、「株式引受契約」を締結することになります。

すでに出資者が決まっているケースでは、通常の増資の手続きを踏まなくとも、株式引受契約による手続きを用いることで、投資を受けるまでのプロセスを簡略化することが可能です。

契約書の作成にあたっては、会社法上明確な決まりはありませんが、引受人と合意できる内容を検討しなければなりません。スムーズに契約を進めるためにも、重要事項を漏れなく記載することが大切です。契約書作成にお困りの担当者様は、弁護士へご相談ください。

ここでは、株式引受契約書が用いられる目的や、契約書作成の記載事項を分かりやすくまとめ、契約書の雛形もご紹介します。

投資、VCに関する契約の株式引受契約書のポイント

  1. 第三者に対し、募集株式の割り当て及び引き受けをする際に締結する契約
  2. 株式引受契約により、通常の募集株式の発行をする場合のプロセスを簡略化することが可能
  3. 契約締結後、出資金の払い込みがなされ、登記申請まで行って手続き終了となります
投資、VCに関する契約の株式引受契約書の注意点

  1. 株式発行することになるので、会社法上の必要な手続きについて注意
  2. 募集事項の決定をする手続は公開会社と非公開会社で異なることに注意
  3. 有利発行の場合は、公開会社であっても株主総会の特別決議が必要

株式引受契約とは

株式引受契約とは、企業が新たに株式を発行して、特定の引受人にその株式を取得させる等するときに締結する契約です。発行会社と買い手との間で、割り当てる株式の種類や払込金額などに関する事項を取り決めることが目的です。

株式会社が資金調達を行う手法のひとつに「第三者割当増資(新株発行)」がありますが、株式引受契約は、この第三者割当増資の手続きをする際に、会社と新たな株式を受け取る側が契約するものです。

増資の方法には第三者割当増資とは別に「株主割当」もありますが、その違いは「新規発行株式を割り当てる対象」です。

  • 株式割当:既存の株主が対象
  • 第三者割当増資:取締役会で決定した特定の第三者が対象(既存株主以外の第三者)

新たに買い手を募る場合、募集株式の買い手がすでに決定している場合でも、第三者割当増資が行われます。株式引受契約を締結することで、申請から出資を受けるまでの一連の流れを簡略化できるというメリットがあります。

また、上記の2つの増資のほかに「公募増資」という手法もありますが、公募増資は「不特定多数の投資家に出資を勧誘する」もののため、手続きの簡略化は認められていません。

株式引受契約締結の流れ

株式引受契約では、以下の4つの流れで手続きが行われます。

  1. 募集事項の決定(取締役会、株主総会の特別決議)
  2. 株式引受契約の締結
  3. 引受人による出資金の払込み
  4. 登記申請

契約締結にあたっては、事前に取締役会や株主総会の特別決議によって引受人などの募集事項を決定し、株主から承認を得てからとなります。募集事項を決定する機関については、非公開会社の場合は株主総会の特別決議、公開会社の場合には取締役会で実施されます。企業によって決定機関が異なることを理解しておかなけれななりません。

契約を締結した後は、定めた期間内で株式引受人による出資金の払込みが行われます。その後登記申請を行いますが、契約に応じて株式引受契約書や払込証明書、取締役会議事録などの書類を提出する必要があります。契約内容によって必要になる書類が異なるため注意しましょう。

株式引受契約の目的と必要性

ベンチャー企業などが第三者割当増資によって資金を集めるケースでは、なぜ株式引受契約が必要なのでしょうか。その理由には、「投資を受けるまでの期間を短縮する」という目的もあります。

第三者割当増資の募集方法には、すでに決定している特定の引受人に割り当てる方式のほかに、引受人を特定せずに募集を行う申込割当方式があります。しかし、申込割当では、新規発行株式の申込や割当など、手続き完了までにさまざまな工程が必要となるため、投資を受けるまでに時間がかかります。

そのため、募集株式発行を株主総会で決議する前から、割当先を検討し、条件等をさめだておくき株式引受契約を締結することで、「すでに引受先が決まっている」状態から手続きを始められるため、株式発行会社と引受先との間で手続きのプロセスを簡略化できるという利点があります。申込割当方式とは違い、申込者を選別したり、株式の割当てについて決定する必要がないため、簡単かつスピーディに投資を受けるために必要な契約といえるのです。

というのも、非上場のベンチャー・中小企業では、募集株式の発行に関して「公募」の割当てが難しいのが現状です。増資には「第三者割当」が用いられることが一般的であるため、あらかじめ引受先を決めてから第三者割当増資を決議するのが一般的となります。問題なく手続きが進めば、およそ2~3日ほどで出資が受けられる事例もあります。

株式引受契約の記載事項のポイント

株式引受契約を円滑に進めるためには、契約書に記載する重要事項を十分に理解しておかなければなりません。明記するべき一般的な条項は、以下の5つの項目です。

募集株式の種類・株式数

株式会社が募集株式の発行を行う際、権利の内容が異なる「種類株式」を発行することがあります。契約書には、株式の種類をはじめ「いくら株式を発行するのか」など、引受に関する概要を明確に記載する必要があります。

ただし、発行する株式が譲渡制限株式(非公開会社)の場合は、募集株式の発行数に関わらず株主総会の特別決議によって承認を得なければなりません。

募集株式の割当て方法

募集株式の引受人が一人ではなく、複数人いるケースがあります。契約書には、募集株式の引受人の氏名や、それぞれに割り当てる株式の種類・株式数などの詳細を明記します。

ただし、公開会社が募集株式を発行するにあたり、引受人となる株主の議決権が2分の1を超える場合は、当契約で定めた払込期日の2週間前までに、株主に対して特定引受人に関する通知・広告をしなければなりません(非公開会社の場合は不要)。通知する内容には、特定引受人の名前と住所、議決権数などが含まれます。

募集株式の払込金額

募集株式の1株に対する払込金額、あるいは金銭以外の財産の額を規定する必要があります。契約書には、払込金額とその算出する明記します。

現金以外の現物出資の場合は、一定の要件に当てはまるケースを除き、募集株式を発行する会社に対して「対価の調査」が必要になります。

増加する資本金と資本準備金に関する事項

資本金と資本準備金に関する条項は必須ではありませんが、登記申請の際に提出が必要になります。契約書には、増加する資本金と、資本準備金に関する事項を盛り込んでおくことが望ましいといえます。

払込期日と取り扱う場所

募集株式の引受人による払込期日を明記します。指定日の場合には該当日を、期間をしている場合には最終日を契約書に記載します。また、払込期日だけでなく、実施に払込みを行う金融機関も指定します。

契約締結後には登記申請を行いますが、払込日または払込期日の末日から2週間以内に行わなければならないと定められています。

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