企業法務に関するコラム

建設業界の抱える諸問題

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1.建設業界の抱える諸問題とは

 近年、大阪万博の工事の遅れに関するニュースで、建設業界における人手不足や資材コストの高騰、労働規制の適用のといった問題を耳にすることも多くなっています。この問題について、解説します。

2.人手不足

 建設業界では、就業者の高齢化が進んでおり、55歳以上の割合が36%(全産業31%)、29歳以下の割合が12%(全産業17%)。全産業平均と比べても高齢の就業者の割合が高く、若年層の割合が低くなっています(総務省「労働力調査」参照)。

 建設業の就業者数は、ピーク時の1997年の685万人から、492万人(2020年)まで減少しています。

 就業者人口が減少しているのは、日本の少子化という根本的な問題に加え、いわゆる3K(きつい・危険・汚い)のイメージが強く、国交省では新3K(給与・休暇・希望)の実現のための取組を行っています。

 また、建設業において、顕著なのは、外国人労働者の増加です。2011年に建設業に関わる外国人労働者の数は1万2830人から、11万0898人(2020人)と10倍に増加しています。今後も、この傾向は続くものと思われます。

 そして、人手不足が深刻な問題となっている原因は、就業者の減少だけではなく、需要の拡大も一因となっています。

 まず、1960年代からの高度経済成長期以降に建物は整備・維持が必要となっており、これらの建造物の維持・更新費は、2023年度で4.3兆円~5.1兆円と推定されており、この費用は今後も増加するものと思われます。

 また、大阪万博といった大規模イベントや、リニア新幹線プロジェクトといった大規模事業計画も進んでおり、日本国内の建設需要は拡大しています。

 これらの人手不足と建設需要拡大のダブルパンチにより、いわゆる職人と呼ばれる技術を持った技能労働者数は、2025年には90万人不足すると言われおり、人手不足は深刻な問題となっています。

3.資材コストの高騰

 

 建築に必要な建築資材のコストは、2021年から2022年までのわずかな期間で非常に高騰しています。主要な建築資材では、型枠用合板が47.4%、厚版が52.2%、H型鋼が32.2%、異形鉄棒が39.1%、ストレートアスファルトが56%、値上がりしています(国交省「主要建築資材の価格の推移」参照)。

 資材コストの高騰の原因は、様々ありますが、主要な原因は以下の3つです。

 一つ目は、建設需要の拡大です。建設需要の拡大は、日本だけではなく、世界規模のものとなっており、全世界の42%をアジアの建設需要の拡大は著しく、特に、中国、インド、インドネシアでは、大規模な開発が予定されています。また、欧米では、コロナショックにより、郊外での住宅需要が高まり、木材価格が高騰しています。

このように建築資材は世界各地で必要とされているため、コストの高騰につながっています。

 二つ目は、円安の影響です。日本は、建築資材の多くを海外からの輸入に頼っているため、円安が進めば、当然に、輸入品である建築資材の仕入れコストは上がります。

 三つめは、ウクライナとロシアの戦争です。戦争の影響は、間接的ではありますが、様々な分野に及んでいます。戦争当事国のウクライナからの建築資材の供給が不安定となることや、経済制裁により、ロシアからの天然ガスや石油等エネルギー資源の調達が輸出制限されていることから、輸送コストも高騰しており、これが建築資材コストの高騰につながっています。

 以上より、建築資材のコストの高騰は、複合的な理由があり、一時的なものではないと思われるため、建設業界は、今後も建築資材の高コストを前提とした計画が求められていると言えます。

4.労働規制の適用

 2018年に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(以下「働き方改革関連法」)により、時間外労働の上限規制が定められましたが、建設業界は、適用が猶予されており、2024年4月から適用されることになります。

 これまで、建設業界では、36協定で定める時間外労働の上限の基準は、適用除外となっていたため、時間外労働の上限がありませんでしたが、2024年4月からは、原則として月45時間・年360時間となります。

 また、災害時の復旧・復興事業については、労使間で特別協定を締結することで、上記基準を超えることが出来ますが、一定の上限は定められました。

 労働規制が適用されることにより、建設工事に必要な就業者の確保はますます困難になることが想定され、これによる人件費の高騰は避けられず、建設コスト全体の高騰につながります。

5.まとめ

これら3つの問題は、いずれも一時的・短期的なものではなく、建設業界の抱える問題をこれまでと同じような考え方で解決することは難しく、パラダイムシフトが求められていると言えます。

これらの問題に法務的にアプローチする手段としては、不利とならない内容の契約書による契約の締結や、外国人労働者の確保、適切な労務管理等が挙げられます。

弁護士法人キャストグローバルでは、建設業界が抱える問題に対する法務的アプローチについて、適切なアドバイス・対応を行います。

 上記問題に対する対応を検討されている方は、一度、弊所にご相談ください。

以上

監修者

弁護士法人キャストグローバル 建設業界担当

[相談受付]03-6273-7758

[メール]info@castglobal.biz

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