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企業法務に関するコラム

医療機関におけるカスタマーハラスメント

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はじめに

 病院で働く方やこうした経営をする方の中で患者さんや利用者さんから理不尽なクレームを言われて対応に困った経験がある方はいらっしゃいませんか?

今般、従業員が顧客から嫌がらせをされる、いわゆるカスタマーハラスメントが問題になっています。

 弊所の顧問先の施設からもこうした相談を受けることがあります。そこで、今回は病院や福祉施設でのクレーム対応について、ご紹介します。

カスタマーハラスメントとは

 そもそも、カスタマーハラスメントとは、顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって当該手段態様により、労働者の就業環境が害されるものをいいます。(厚生労働省カスタマーハラスメント対策企業マニュアル)

 カスタマーハラスメントの例としては長時間にわたり従業員を拘束する、正当な理由のない過度な要求、頻繁に来店しクレームを言う、大声や暴言で責める、脅迫をする、特定の従業員に対してセクハラをするといったものが挙げられます。また、近年は新型コロナウイルスに関連してマスクや消毒に関する強い要望や、逆に顧客のマスク拒否等があります。

 

病院におけるカスタマーハラスメント

 病院や福祉施設は、患者やその家族は病気への不安から神経質になり、また、医療に対する高すぎる期待を持っている方もおり、カスタマーハラスメントを起こしやすい環境です。厚生労働省のハラスメント調査「令和2年度 厚生労働省委託事業職場のハラスメントに関する実態調査」においても、過去 3 年間にパワハラを経験した者の割合の業種別では、「電気・ガス・熱供給・水道業」(41.1%)、「建設業」(36.2%)に次いで、「医療、福祉」(35.5%)等が相対的に高い割合となっており、カスタマーハラスメントを経験したことがあると回答した人の割合も「医療、福祉」は18.9%と全体の割合である15%よりも高くなっています。

 もちろん病院として誠実に対応すべきクレームもあると思いますが、病院はクレーム対応には他の業種に比べ特に注意が必要と言えます。

病院におけるカスタマーハラスメントによくあるものとしては以下のようなものがあります。

① 患者から医療行為や病院の対応に対する執拗なクレーム

 患者が診察や手術の結果に納得しなかったり、待ち時間が長かったり、特定のスタッフの対応が気に入らないなどして、病院にクレームを入れるケースがあります。

 実際にあったケースでは、手術の内容に納得しなかった患者が被告が再三にわたり原告の開設する病院に来院して長時間居座り,原告から受けた手術等の医療行為に関し,大声で不満を述べたり,暴言を吐いたり,同手術の説明や謝罪を要求するなどしたとして、業務執行権ないし人格権及び施設管理権に基づき、同病院の敷地への立ち入り及び原告に対する業務妨害行為の禁止を求めるとともに、診療契約上の債務及び損害賠償義務を負っていないことの確認を求めた事案で、業務妨害行為や立ち入り禁止までは認められなかったものの、病院側の債務不存在が認められた事例があります。 

② インターネット上の書き込み

 患者が病院に対して病院に直接クレームをいうほか、インターネット上に病院を侮辱したり、病院の信用を低下させるような書き込みをする場合もあります。

 この場合には病院側からプロバイダーや書き込まれたSNS事業者に対して投稿者の開示請求をすることができます。

 実際にあった例として、動物病院の事例ですが、事実と異なる診察内容をツイッターにハッシュタグをつけて挙げた患者についてプロバイダーに開示請求が認められました。

③ 患者からのセクハラ

 医療現場では患者と触れ合う場面が多く、身体接触に伴うセクハラや、性的な言動によるセクハラが横行しやすい環境といえます。

 よくあるセクハラの例としては、車いすへの移乗の際に臀部を触れる、入浴介助中、排泄介助中、検温中に体を触る、自分の局部などに触れさせようとする、性的な発言をする、容姿や見た目について発言される、等です。

 

④院内暴力

 医療現場では、時として激高した患者が暴力をふるうことがあります。上述の通り、患者は病気への不安から神経質になっており、激高しやすい状況ではあります。とはいえ、暴力が許される理由にはなりません。暴力を振るわれた場合にはもはやハラスメントというよりは犯罪行為ですので、毅然と犯罪であることを指摘し、警察に届け出るなどの対応をして従業員を守ることが必要です。

カスタマーハラスメントへの対応

ハラスメント行為が発生した場合には以下のような対応を取ることが有効です。

①最初に対応した医師や看護師、職員以外のハラスメント担当者が対応する。

 すでに最初に対応済みの医師や看護師、職員はすでにその患者に対して疲弊していますし、別の担当者に変わることで場面を変え、クールダウンさせることができます。

また、ハラスメント研修を受けた職員が対応することで、相手をヒートアップさせることなく、迅速な解決にもつながります。

 複雑な事案や深刻な事案では、より客観的かつ詳細な調査をするべき場合もあるため、場合によっては、調査委員会を立ち上げ、担当の部署や弁護士等の外部の人間に調査を委託することも考えられます。

②言われた内容、患者とのやりとり、日時を記録しておく。

 ハラスメント行為が過激になれば法的紛争に発展する可能性がありますので、日頃からきちんとエビデンスを残しておくことが大事です。いつ、どこで、誰が、何を言ったか、それに対してどういう対応をしたのか、手書きでも構いませんので残しておくのがベストです。

またこうした記録を残しておくことで、客観的な視点を持つことができ、内部で検討をする際にも冷静な対応がしやすくなります。

③クレームにあった職員のケア

 カスタマーハラスメントにあった職員は精神的に疲弊し、メンタルに不調をきたすことがある場合があります。

 企業は従業員の安全と健康に配慮する安全配慮義務を負っており(労働契約法5条)、その一環として従業員の労働環境を整備する義務があります。

カスタマーハラスメントが原因で職員にメンタル不調が生じた時には、産業医やカウンセラーへ相談できる体制を整えておきましょう。

 

事前のカスハラ対策

 カスタマーハラスメントにあった時、被害を拡大させないためにも、日頃から対策をしておくことが望ましいです。

 カスタマーハラスメント対策として①カスハラにあった際のフロー・マニュアルを決めておき、従業員へ教育、周知徹底する②カスハラが発生した場合の対応する担当部署を設置する③従業員がカスタマーハラスメントにあった時のための相談窓口を設置しておく、などの対策が有効とされています。

 カスタマーハラスメントへの対策について詳細は厚生労働省が「カスタマーハラスメント企業対策マニュアル」を作成していますので、そちらもご確認ください。

厚生労働省「カスタマーハラスメント企業対策マニュアル」https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf

おわりに

今回のコラムでは、カスタマーハラスメント対策を取り上げましたが、対策してもなお、患者やその家族とトラブルになる場合もあります。その場合は弁護士など法律の専門家の介入が必要です。

弊所ではハラスメント対応についても相談を受け付けております。また、従業員からの相談を受け付ける内部相談窓口にも対応していますので、カスタマーハラスメントでお困りの方は是非弊所にご相談ください。

監修者

弁護士法人キャストグローバル 企業法務医療業界担当

[相談受付]03-6273-7758

[メール]info@castglobal.biz

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