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企業法務に関するコラム

中小企業の賢い事業承継の方法とは

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事業承継についての対策が必要なことは、わかっているけれどもどうしても後回しになってしまっている。そんなことはございませんか。日本の企業のうち、90%以上が中小企業です。また、近年は、親族などの後継者が不足し、親族外承継が65%以上になっているといった調査結果などもあります。後回しになりがちだけど、出来るだけ早期に準備を進めるべき事業承継。その方法についてご説明いたします。

賢い事業承継とは

せっかく、事業を継続してきたのですから、なるべく良いカタチで、次代へ事業を承継したいものです。「賢い事業承継」とは、換言すると「次代への良いバトンの渡し方」と捉えることができます。 事業承継の方法論としては、正解はありません。いずれにしても、(外部から招聘するなどの場合であっても)出来るだけ早期に準備を始めて、事業承継を進めていくことが大切です。また、「賢い」と耳にすると、ついぞ短絡的に「節税」とか「費用」などといった言葉に踊らされますが、事業承継の最終目標は言うまでもなく「円滑な事業承継」です。逆を言えば、たとえどんなに入念に節税対策を行ったとしても、結果的に承継すべき後継者がおらず、廃業となるのでしたら、まったくの失敗と言えるでしょう。

主な事業承継対策の内容

事業承継対策としてメニューを考えますと、主なものとしては、下記の5項目が考えられます。

  1. 後継者対策
  2. 信用対策
  3. 従業員対策
  4. 株式譲渡・納税の資金対策
  5. 相続対策

上記の内容を簡単に説明をしていきますと、まず、後継者対策の前提として、事業承継計画の策定を行う必要があります。計画を立案せずに、対策を行おうとすることは、羅針盤を搭載せずに、大海原へ航海に出るのと等しい程度に無謀な行為と言えます。後継者を親族から選出するのか、あるいは、外部から連れてくるのかは、どのように事業を承継していきたいのかといった、オーナー経営者の「思い」に由来します。また、事業承継は経営者の独断のみで完了するわけでなく、健全な承継を考えるならば、従業員との調和も思案にいれるべき事項でしょう。 また、良好な経営状態である中小企業であるほど聞こえてくる不安要素としては、後継者に代替わりした場合のその企業の「信用力」です。取引先をはじめ、とりわけ資金融資などをおこなっている金融機関にとっては、次代の経営者がどんな人物であるかは大きな関心事です。したがって、金融機関と全くコミュニケーションをとらずに事業承継をしてしまうと、その後の信用不安へといたる可能性が大きくなります。 事業承継の形式的な部分としては、会社法上の役員に入れるほか、実質的には株式の譲渡によって経営権を以降させるのが通常ですが、この場合の後継者側の資金の問題もなお残ります。 最後に、事業承継にかかる「株式」などの資産は、相続の際には相続財産と判断される場合があります。このような場合、せっかく、事業承継を行った経営者から後継者へ経営権が移行したとしても、その者が死亡後になって、遺留分などの問題で法廷問題まで発展することは珍しくはありません。

事業承継計画の策定の方法とは

上記のとおり事業承継対策の主たるものは例示しました。ところで、それら個別の対策をおこなう以前にまず策定すべきは、事業承継計画です。 事業承継にあたり、どのような内容で承継を行うかについては、「経営政策上」の問題でもあります。このことは、別の表現を用いますと、「企業の将来像のイメージ をどのように考えるかといったことになります。この将来イメージは、経営者個人の主観的なものから、専門家の意見を交えた客観的なもの、あるいは、従業員を含んだ複合的なものまでさまざまあります。 事業承継とは、どれほど小規模な企業であっても、経営者以外の第三者に影響をあたえるものです。したがいまして、事業承継計画を策定する上では、このような関わりのある第三者への一定の配慮を行っていく必要があります。 将来の事業承継に関する経営上の政策の決定は、できる限り早期のほうが望ましく、理想としては、実際に事業承継を行う5~10年程度以前から立案するのが望ましいでしょう。 近年は、事業承継税制とよばれるものや、国の政策としての承継資金融資のための保証制度や、あるいは、地元の信用金庫などが専門家を派遣するサポートを行うなど、さまざまなチャンネルが用意されています。 事業承継計画は、「調子の良いとき」こそスタートさせないといけません。悪い時には、事業承継計画よりも経営の立て直しの方が優先し、なかなか進みません。 大企業において、内部昇格で経営者の後継を定める場合には、早ければその者が30代後半から40代前半の時期より、選定および準備を進めていきます。人的資源などあらゆる経営資源が不足している中小企業においては、なおのこと、早期に計画の立案を行い、またこうした計画を立案する心理的な余裕のある、「調子の良いとき」こそ、事業承継計画立案の最良のときといえるでしょう。

事業承継に相続対策とは

上記に例示した事業承継対策のうち相続対策について、もう少し説明を加えます。なお、ここでの「相続対策」とは、「相続税対策」のみを表すだけではありません。 相続発生時における大きな問題としては、2つのお金に関する問題があります。1つは、相続税の問題です。もう1つは、「遺留分」に関する問題です。 こうした問題に対しては。中小企業経営承継円滑化法による支援策が図られています。 相続税に関しては、租税特別措置法により、取引相場のない株式等の相続税・贈与税の納税猶予制度があります。また、金融支援措置としては、経営の円滑な承継のための資金融資制度があり、中小企業信用保険法の特例、日本政策金融公庫法の特例があります。 また、遺留分に関しては、2018年の民法改正により、遺留分権の保護の強化が図られているところ、適切な対策が望まれます。遺留分とは、相続人のうち兄弟姉妹を除いた者に確保されるべき法的な権利であり、強行規定であるため、仮に遺言でこれに反する文言があったとしても、遺留分を除外することはできません(民法1028、1031)。この点、遺留分に関する民法の特例として、推定相続人全員の書面による合意などの一定の要件のもと、ⅰ贈与株式等を遺留分算定基礎財産から除外、ⅱ贈与株式等の評価額をあらかじめ固定化などが認められています(中小企業経営承継円滑化法3~9条参照)。

まとめ

現役の中小企業の経営者にとって、事業承継はまだまだ先と考える傾向が一般にあります。しかしながら、上記で説明をしてきたとおり、将来的に廃業を望む場合は別として、事業承継を考える場合には、早期の対策を含めた準備が必要です。 とはいえ、その内容は複雑多岐にわたり、どこから始めるべきか、考えあぐねることもおおいでしょう。そのような場合には、弁護士などの専門家に相談するのが良いでしょう。

以上

監修者
弁護士法人キャストグローバル 企業法務担当
〒101-0054 東京都千代田神田錦町2-11-7小川ビル6階
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