介護や福祉施設におけるクレームトラブルの対処方法
高齢化社会を迎え、家族を介護施設や福祉施設などに預けることが多くなってきています。こうした施設を利用する場合、高齢による認識能力の低下などにより、利用者自身が意思を表明することが難しく、また、閉鎖的な空間でのサービスの提供となるため、問題が生じた場合に、対応が難しくなりがちです。こうした施設おいてクレームが発生した場合の、トラブルの対処方法について説明いたします。
クレーム対応は初動が肝心
介護施設や福祉施設などで、職員が誤って利用者に怪我をさせてしまった場合や、利用者が不穏となる場合などの事故によって、怪我をさせてしまったような際に、まず大事なのは初期対応となります。 例えば、利用者が帰宅後、家族が利用者の身体などにあざなどを発見して、介護施設などにクレームをいれた場合、どのように対処すべきでしょうか。 一般的には、謝意を示して安易に謝罪をしてしまいがちですが、事実確認が不十分な状態での、不十分な対応は、不信感を増大させたり、または、施設側に過失がない場合でも、責任を追及される原因となり危険な行為です。 まずは、現状把握できている内容のみ、説明を行い、場合によっては、説明を行う担当者を限定するといった方法も考えられます。複数の職員が対応などをしてしまうと、内容に齟齬が生じ、後にリスクとなる場合が考えられます。
クレームが入った場合には事実確認を行うための時間を稼ぐ
2019年はインフルエンザが大流行し、不幸にも介護施設などで集団感染などしてしまい、亡くなられるといったことがありました。こうした事件が発生した場合、遺族としては、大切な家族への感情的な問題により、状況などに納得がい介護施設などにクレームを入れるといった場合があります。 こうした場合には、まずは、事実確認をきちんと行う必要があるため、すべての従業員に対して、真摯に応対するように指導するとともに、「現在は急ぎ、事実確認を行っている」などと、共通の説明をするように徹底する必要があります。 クレーム対応の場合には、初動が重要だと説明いたしましたが、それ以前に、まずは遺族などに冷静になるように促したり、介護施設職員などに不用意な発言をしないようにすることで、調査の時間をできる限り長く稼ぐことが重要となります。 また、可能であれば、出来る限り早期に弁護士に相談するなどして、事実関係調査後などの補償などの対応面を含めて、十分に準備を整えておくと良いでしょう。
クレームが大きくなる原因
例え事故であって、介護施設や福祉施設に過失がないような場合であっても、説明が一貫していない場合や、説明が不足するなどしていて、家族の不信感を増大させたりすると、クレームとしての規模が大きくなる可能性があります。 例えば、老人性痴ほう症などの進行などにより、日常的に不穏となる(暴れたりする)場合、職員が十分に注意を払っていた場合でも、誤って、利用者が転倒するなどして、骨折や死亡してしまうことがあります。 介護施設職員も人間ですので、事故直後は気が動転してしまい、明確に事故当時のことを話すことができない場合や、思い出すことができないといった状況が考えられます。このように、事故の当事者自身も、その当時のことを明確にできていない段階で、利用者の家族に説明しようとすると、先に説明した内容と、後に説明した内容に矛盾が生じる場合があり、不信感を募らせる場合があります。 家族の不信感が増大するような場合には、弁護士が介入し、最悪、訴訟へと発展してしまうこともあります。
過大な請求をされてしまった場合にはどうすれば良いのか
その請求が過大なのかどうかは、初期段階で十分な調査時間を稼ぎ、事実関係を明らかにしていない場合には、判断がつきづらく、対処が困難となります。したがいまして、まずは、十分に事実関係を確認することが重要です。 人間の一般的な心理として、事実関係が明確ではない段階で、さまざまに家族などから請求されてしまうと、冷静さを喪失して、不用意な発言をしてしまうことがあります。また、押しの強い発言などである場合には、要求を全部受け入れてしまうといった事態も生じ得てしまします。 このように、介護施設や福祉施設はそのサービスの特性から、クレームが発生した場合には、とてもデリケートな問題となり、問題の内容が難しくなる傾向があることから、出来るだけ早期に弁護士に相談するなどの対応をすることが、解決の糸口を探ることとなるでしょう。
まとめ
誠実にサービスを提供している場合でも、事故は発生してしまいますし、思いがけずクレームが来るといったことがあります。また、介護施設や福祉施設の内部の状況については、外部から見えづらく、また、利用者が十分に主張できない場合があるなどの事情があり、問題が発生した場合に、不信感を持たれやすくなってしまいます。いざクレームが来ると、その内容の多くが、利用者の生命にかかわる問題につながることが多いことから、問題の内容が複雑で難しくなる傾向があります。問題が発生した場合には、弁護士に相談するのが良いでしょう。