相談事例

性・風俗事件/準強制わいせつ

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業務行為をわいせつ行為だと訴えられたが、正当性を主張し不起訴を獲得

事案

ある医療関連の業務に従事する男性より、「業務上の行為をわいせつ行為だとして女性から訴えられ、警察に取り調べを受けている」と、相談を受けました。
男性は、いまだ逮捕はされていないものの、被害者とされる女性が警察に被害届を提出したことから、突然、わいせつ事件の被疑者として警察から取り調べの呼び出しを受けて、どう対応したらいいかわからず弱りきって弊所に相談にこられました。

解決までの道筋

担当弁護士がご本人から事情を聞き取ったところ、医療関連の業務中に女性に対して下着になるよう指示をおこなった際の行為について、被害を訴えている女性がわいせつ行為だと主張しているとのことでした。しかし、ご本人としては、当時、業務上の必要があって行った行為であり、かつ、本人からの同意もちゃんと確認したうえで(むしろ本人からの要望を取り入れたうえで)行った業務中の出来事であり、わいせつ行為をする意図は一切なかった、と明言されました。

医療従事者等が診察行為等を行った際にわいせつ行為をされた、として訴えられるという事件が、しばしば発生します。
これは、刑法第178条1項の、準強制わいせつ罪に該当する可能性があります。
準強制わいせつとは、「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は身心を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて」わいせつ行為を行った場合に成立する罪で、典型例として、女性に大量のお酒を飲ませて泥酔させて抵抗不能(「抗拒不能」)にさせて、わいせつ行為に及ぶようなケースが挙げられます。同罪が成立した場合、懲役6月以上~10年以下という重い罰則が定められています。
医療従事者等が、被害者に対して、例えば、業務上の必要もないのに「健康診のため」などと偽って、これは診断だという被害者の思い込み(「抗拒不能」)を利用してわいせつ行為を行った場合も、同罪に該当します。

こうした事件の難しさは、多くが密室でのことであり、当事者の言い分しか証拠がないことが多い点にあります。もっとも、本件では、聞き取り内容を慎重に検討した結果、問題とされている場面の前後の経緯や、問題となっている行為そのものの態様などから、業務上の必要性が認められる余地が十分あるケースであり、かつ、被害を主張する女性とのこれまでの人間関係からも、行為にあたって真意に基づく同意が得られていたと信じていた、とのご本人の言い分が、決して不合理とは言い切れない、と思われるケースであり、準強制わいせつ罪には該当しない可能性が高いと判断されるケースでした。
そこで、今後の手続きの流れや、逮捕されるリスク、万が一起訴された場合には、無罪を争うことの負担の大きさなどについても十分にご説明のうえで、否認するかどうかの方針をご本人と協議した結果、ご本人としては、あくまで良かれと思って行った業務の一環であり、たとえ裁判になったとして自分がやったことは正当であったとの思いを貫きたい、との強い意志があったことから、取り調べに対しては否認する方針となり、担当弁護士が本件の弁護人となって、ご本人をサポートすることとなりました。

警察からの取調べにあたっては、弁護人からご本人に対して、黙秘権があること、あくまで任意の取調べであり応じる義務がないので、退室したいときは自由に取り調べ室から退室できること、作成された調書については、どんな細部であっても自分の話と違うニュアンスになっている箇所を修正してもらえなければ、決して同意してはいけないことなどのアドバイスを、適宜行いました。
その後、警察の取り調べは複数回に及び、執拗に自白を迫られましたが、そもそも問題とされている行為態様自体について、本人の認識している事実と異なる内容を認めるよう迫られていたため、適宜、本人から取り調べ内容について相談を受け、客観的事実と異なることは決して認めてはいけない、とアドバイスし、時にはご本人を励ますなどして、一貫して否認を貫きました。
取り調べが相当長時間に及ぶこともあったため、弁護人からは、取り調べの際に本人の体調に配慮するよう申し入れたり、弁護人から本人の言い分を伝えて、当方の正当性を主張したりとサポートを行いました。そして、最終的には、「当方はすでに事実を話し尽くしており、これ以上の取り調べには応じられない」と警察に対して通告し、取り調べの最終期限を切るよう調整するなどして、ご本人の負担を軽減する対応を取りました。
取り調べの際は、弁護人が警察署外ですぐに駆けつけられるように待機し(※日本では、いまだ弁護人が取り調べに立ち会えないため、外で待機するしかありません)、万が一、不当な調べがあったりした場合には直ちに駆けつけるので安心するよう本人に伝えて、本人の不安を解消するよう、サポートをしていきました。

結果

本件は、こうした経緯を経て警察の捜査が完了し、検察へと書類送検がされましたが、最終的に検察が下した処分は、不起訴でした。
ご本は、弁護人によるサポートや助言がなければ、取り調べの途中で心が弱くなって、どこかで事実と異なる自白をしてしまったかもしれない、と話してくれました。しかし、結果として、アドバイスに従って自身の正当性を一貫して主張し通したことで、自らの疑いを晴らすことができたことを、とても喜んでもらえました。

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