相談内容
依頼者は、古着店を経営する会社です。依頼者は、SNSマーケティングを利用したECサイトを運営する個人事業主から、当該ECサイト事業の事業譲渡を受けることとなり、事業譲渡契約書の作成を弊所に依頼されました。弊所にご相談して頂いた時点で、既に相手方とは交渉を重ねていて、事業譲渡の内容の大枠は固まっており、事業譲渡の対象についても把握されているので、デューデリジェンスも省略するとのことでしたが、予定している譲渡実行日まではあまり時間がなく、かなりタイトなスケジュールで、契約書を作成してほしいとのご依頼でした。
解決までの道筋
本件では、スケジュールがタイトなこともあったので、受任の時点で、契約書作成の期限や依頼者との打ち合わせの時期、相手方に確認して頂く期間、交渉期間について、予めスケジューリングを立てて、依頼者にお伝えしました。
事業譲渡契約書を作成するにあたっては、依頼者からこれまでの交渉の経緯や、合意している事業譲渡の内容に関する資料を受領し、精査した上で、まずはオーソドックスな事業譲渡契約書の内容をベースに、依頼者との相手方との間の事業譲渡に特有の事情を盛り込みました。また、事業譲渡を行う上で重要な表明保証事項や譲渡実行の方法、譲渡実行日までにすべきこと、譲渡実行後にすべきことを整理して規定し、ビジネスジャッジが必要な事項については、打合せにて依頼者とすり合わせをしながらブラッシュアップしていきました。ご相談を頂いた時期は、コロナの影響もありましたので、依頼者との打ち合わせは専らzoomを利用して行いました。
打合せにおいては、上記事項のほか、秘密保持義務の内容・期間や競業避止義務の内容・期間、損害賠償の範囲等、事業譲渡自体の内容には関わらないものの、事業譲渡契約を締結するにあたって必要な内容については、あまり契約に慣れない当事者間の交渉のみでは見落としがちであるので、依頼者にその内容について十分説明し、依頼者の意向も踏まえた上で、内容を固めました。
解決のポイント
依頼者のお打合せなどへのご協力があったほか、相手方も契約内容について積極的に争う姿勢ではなかったので、当初予定していたスケジュールよりも余裕を持って契約内容は合意に達し、予定通り、事業譲渡契約の締結、譲渡実行までスムーズに進めることができました。相手方も、弁護士が契約書を作成することで、安心して事業譲渡をすることができたようです。
小規模な事業譲渡の場合、当事者間の簡単な合意のみで事業譲渡を行うこともありますが、トラブルが発生した場合には、それが仇となって、予期せぬ不利益を被ることもあり得ます。また、弁護士に相談をして契約書を作成する中で、今まで気づかなかった事業譲渡上の問題点や、決めておかなければならない事項、改めて合意が必要な事項も出てくるので、その点からも弁護士を入れて契約書の作成、契約交渉を行うことはメリットがあります。
加えて、事業譲渡は、契約を締結し、譲渡実行をすれば、事業譲渡契約の目的自体は達成し、特に問題が発生しなければそれで終了となりますが、その後、事業譲渡の対象となる財産に瑕疵があったりとか、相手方の表明保証義務違反が発覚したり、競業義務違反、秘密保持義務違反等の契約違反が発生することもあります。このような場合には、予め弁護士に相談した上で契約を締結していれば、上記トラブルが発生したときに、早期対応が可能となります。このような観点からも、事業譲渡契約を締結するにあたっては、弁護士に相談することをお薦めします。
たとえ、事業の規模が小さかったとしても、事業譲渡契約を行う場合には、安易にひな形を使ったり、相手方が作成した契約書をそのまま使うのではなく、弁護士に契約書の作成を依頼、またはレビューを依頼することをお薦めします。
解決結果
当初のスケジュール通りに事業譲渡契約を締結し、譲渡実行を行いました。