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相談事例

手術によって死亡したとして損害賠償を求められた事案

  • クリニック

あるペットに手術をしたところ、買主から、術後体調が悪くなり、退院後に亡くなったので、医療過誤があったのではないかという連絡が入りました。どうしていくのがいいのかという、相談がありました。

解決までの道筋

さて、医療過誤か否かという問題について、基本的な考え方をご説明いたします。

獣医師に対して、ペットの治療を依頼するというのは、買主と獣医師との間で診療契約が締結されたということになります。診療契約は、請負契約ではなく準委任契約です。請負契約と準委任契約の違いどこにあるかと申しますと、請負契約でもっともポピュラーなもので考えてもらえると分かりやすいと思うのですが、建築工事ですね。こんな家を建ててほしいというのは請負契約です。ある設計に基づいてそのとおりに建ててねという契約であり、建築工事の請負人は、設計とおりに建築して、報酬を請求することになります。請負契約において、報酬請求にあたり、仕事の完成という要件があります。しかし、診療契約といった準委任契約において、必ずしも依頼した仕事が完成すること(完治させる、手術を成功させる)を約することはできません。つまり、準委任契約では、一定の事務処理等の行為を行うことを約する契約です。
ですから、本件において、買主と獣医師の間でなされた診療契約とは、病気の治療の行為をする約束をしたということになります。

本件において、治療行為として手術をなされたことになります。では、医療過誤といえる場合とはどういう場合をいうのでしょうか。
結論を申しますと、手術を行うにあたって、獣医師が善管注意義務を果たしたか否かということになります。そして、善管注意義務を果たしたか否かを判断する基準ですが、そのペットの状況・病状を考慮して、一般的な獣医師であればどのような診療をするのかを基準として、今回の治療行為がかかる基準を超えているか否かということになります。

解決のポイント

一般的な獣医師が基準!

実際に治療行為を行った獣医師を基準にするのではなく、一般的な獣医師を基準とすることがポイントです。なお、原則としてであって、絶対的な基準ではありません。

ですから、スーパードクターに依頼して、スーパードクターが過失による凡ミスをしてしまったとしましょう。その凡ミスが、スーパードクターにとって凡ミスであっても、一般的なドクターであれば、凡ミスといえるミスではなく、善管注意義務を果たしたといえる場合があるということです。

えっと思われる方もおられるかもしれません。しかし、かかる基準は妥当といえます。スーパードクターほど重い善管注意義務を負うということになると、技術向上を一生懸命されたドクターほど、ミスが許されないということになり、不当な結果となります。もちろん、スーパードクターは高い技術を求められ、それに応えてくれるだろうという事実上の期待は存在します。しかし、債務不履行として損害賠償責任を負わせるというのは妥当ではないということです。

医療過誤といえる事案は少ない!

医療過誤といえる事案、善管注意義務を果たしていなかったといえる事案は、そう多くありません。さらに、そもそも善管注意義務に反していたことを立証するのは容易ではありません。裁判官は、医師ではありませんから、理解してもらうのも一苦労です。医療過誤ではないといっても、買主に対する対応は大きな問題です。

最近では、ネット上の口コミが大きな影響を与えるようになりました。医療過誤云々の前に、買主対応が重要です。本件では、詳細を記載することが出来ませんが、お話し合いでご理解いただくことが出来ました。

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