悪質クレーマーとの関係を断ちたい事案 / 契約で定めていないサービスや細かな報告を求めてくる顧客への対応
【内容】
日本人向けの留学支援を事業内容とする企業に対して、契約で定めていないサービスを求めてきたり、必要以上に細かな報告を求めてきたりと再三クレームを入れるお客様がおられました。担当者が対応していましたが、なかなか納得いただけないのと、対応に時間がとられ過ぎるのとで、弊所に依頼があり、弁護士が対応することとなりました。
依頼者の要望は、当該顧客との関係を絶ちたいということでした。そのためには、契約を解除することが出発点です。しかし、本件契約は留学前後の一定期間のサービスが内容となっており、まだその期間中であり、既に留学先に到着して学校の手続も終えつつあるところでした。つまり、当方が手を引くと、別途留学先でその後も支援を受けられる保証がありません。しかも、実際に留学しているのは顧客の子(未成年者)でした。したがって、顧客からすれば、契約の解除は避けたいと考える可能性が高い状況でした。
また、契約書に定められている解除の理由に照らしてみると、当方からの解除が絶対に有効(訴訟で争われても問題ない)といえるかというと、微妙な部分もありました。
このような状況でしたので、依頼者と十分に話し合い、関係断絶が可能であるのであれば受け取った費用を返金することもかまわないという方向で慎重に契約解除の交渉をすすめることとなりました。場合によっては強気かつ大胆にすすめることもあり得るのでしょうが、本件はそれではうまくいかないと考えました。
【道筋】
クレーマー対応は特に初動が大切です。「すぐに」対応することと、「しっかり」対応することです。本件でも、依頼があった当日に、まずはメールで相手方と接触し、相手方の要求には応じられないこと、進行中の手続は責任をもって終了させるがその後の対応はできないことを伝えました。やはり今後の留学先での処遇がどうなるのかというところを心配しておられましたので、そこはしっかりと説明し、できる限り納得いただけるように努めました。お子さんのことでもあるので、すんなりとはいきませんでしたが、最終的にはこちらから費用の返還を提案して、契約解除の合意ができました。最初にメールを送ってから、約20日間で解決となりました。
【ポイント】
コンビニの店員の態度が気に入らないという理由で土下座を強要したという話が一時期話題になりましたが、当然不当なクレームです。問題は、そのようなわかりやすいものではない、悩ましいものです。そしてそのようなクレームが圧倒的に多いと思われます。
クレームは一般的に「苦情を言う」という意味だと理解されます。これは英語ではなく外来語です。語源は英語の「claim」だと思いますが、実は英語では「苦情を言う」という意味はなく、「主張する」という意味でとられます。決してマイナスイメージの言葉ではないのです。
我々が行うべきクレーム対応は、「claim=主張」への対応であるべきです。すべからく「苦情対応」であると捉えると、どうしても対応する側も億劫になりますし、対応も雑になりかねません。クレーム対応を行った結果、お客様も信用も失くすというのは最悪です。クレームを喜んで受け入れろというのは言いすぎでしょうが、正当なクレーム=主張であるかどうかを見極め、対応することを目指すべきです。そうすると、自然と初動から真摯な対応ができるはずです。
一口にクレーム対応といっても、相手は人間ですから、個々の状況に応じてきめ細やかな対応が求められます。マニュアル対応には必ず限界があります。対応する企業の業態によっても求められる対応が変わってくるでしょう。クレームの内容もピンキリで、中には不当であるかどうかの判断自体に迷うものもあると思います。対応方法に少しでも疑問を感じた場合には、すぐに弁護士にご相談ください。初動が肝心です。