弁護士コラム
ECサイトでの物販の注意点
EC(electronic commerce)サイト、ホームページで物を販売しているケースがあります。このようなときには、ウェブサイトの運営に際し、さまざまな注意点があります。
以下では、ECサイトで物販を行う際の注意点を解説します。
1.景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)
まず、景品表示法に注意しましょう。
景品表示法は、誇大広告や虚偽広告を禁じています。
①実際の品質よりも優れていると誤解させるような広告は「優良誤認表示」として禁じられます。たとえば「必ず肌がキレイになる」「必ず」「NO1の実績」などと記載すると優良誤認表示となる可能性があります。
②「期間限定キャンペーン」で割引料金を提示して、実際は期間限定しておらず、その料金をずっと適用している場合など、今サービスを受けることが有利であると誤認させる表示は、「有利誤認表示」となり、違法となります。
2.薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器を取り締まる法律で、承認された効果効能以上の表記をすると、薬機法違反となります。
医薬品ではない化粧水などの場合には「治る」「良くなる」といった効果効能を表現することが認められません。たとえば、化粧水を使用することによって「吹き出物が改善する」「アトピーが治る」などと表記すると、薬機法違反となる可能性があります。
3.特定商取引法
通信販売をするときには、特定商取引法による規制に注意が必要です。
3-1.特定商取引法に基づく表記
まず、サイト上に「特定商取引法にもとづく表記」をしなければなりません。
具体的には以下の事項の掲載が必要です。
●商品や権利の価格、役務の対価(送料を含む。)
●商品や権利の代金支払時期と方法
●商品の引渡し時期、権利の移転時期、役務の提供時期
●商品や権利の売買契約の申込みの撤回や契約解除、返品特約について
●事業者の氏名、名称、住所、電話番号
●事業者が法人で、電子情報処理組織による広告をする場合、代表者または通信販売業務の責任者の氏名
●申込みの有効期限
●購入者が負担すべき特別料金がある場合、その内容と金額
●商品に隠れた瑕疵があった場合の販売業者の責任内容
●磁気的方法や光学的方法によってコンピュータプログラムを記録したものを販売する場合やコンピュータによって映画や音楽、写真などの美術工芸品を鑑賞させる場合などには、使用するコンピュータの仕様、性能、必要な条件など
●商品の販売量の制限や特別商品の販売条件、役務の提供条件など
●メール広告を行う場合には、事業者の電子メールアドレス
3-2.メール広告について
メルマガなどのメール広告を消費者の意思に反して行うことは認められません。
購入者や会員にメルマガ配信するときには、消費者がメルマガを拒否できる仕様にしておく必要があります。
3-3.返品について
特定商取引法では、通信販売の返品に関する事項についても取り決められています。
まず、通信販売のケースでも、購入者は商品到着後8日以内であれば、送料を負担することによって返品することが認められます。ただし、販売業者があらかじめ返品の条件を明らかにしていた場合には、その条件が優先されます
つまり、返品についてなんらの記載をしていなければ、商品到着後8日以内の返品が認められることになりますが、「この商品については返品に応じられません」と明記していれば、返品に応じる必要がなくなるということです。
返品に対応したくない商品がある場合には、必ず返品に関する表示をしておきましょう。
3-4.意に反して契約の申し込みをさせようとすることの禁止
特定商取引法では、消費者が意に反して契約の申込みをしてしまうおそれのある表示方法、広告が禁止されます。
たとえば、申込みのボタンを一度押しただけで、契約の申し込みが確定するようなものです。チェックボックス、注意を促す表示を出す、確認・訂正できるなどの仕様にしておく必要があります。
特定商取引法に違反すると、業務改善の指示命令や業務停止命令などの行政処分を受ける可能性があります。
4.利用規約
ECサイトを運営するときには、必ず利用規約を定めましょう。
利用規約とは、そのECサイトを利用する際に適用されるルールをまとめたものです。
ECサイトの利用者1人1人と契約書を作成するわけにはいかないので、利用規約による契約が成立したとすることにより、便宜を図ることができます。
利用規約はサイト利用のルールですから、作成の際には予想されるトラブル内容も踏まえて、そのサイトや商品の個性、ニーズに応じたものにする必要があります。
テンプレートをそのまま利用すると、ニーズに応えきれずトラブル埜元になる可能性もあり、注意が必要です。
5.プライバシーポリシー
ECサイトには、プライバシーポリシーの表記も必要です。プライバシーポリシーとは、その事業者の個人情報取扱の指針です。
事業者には個人情報保護法が適用されますが、プライバシーポリシーによってその事業者の個人情報の取扱方針を明らかにして、利用者の信頼を得ることが可能となります。
プライバシーポリシーには、以下のような記載が必要です。
●サービスの概要
●取得する個人情報の種類、内容と取得方法
●個人情報の利用目的
●収集した個人情報の提供の有無や提供先
●本人による個人情報の停止要求や訂正要求の方法
●個人情報の保管期間や廃棄について
●問合せ先
以上のように、ECサイトを経営するときにもさまざまな法律規制が及びます。