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ファイナンス法務に精通した弁護士が解説 ファイナンス

ファイナンス法とは?

  1. ファイナンス(金融)に関する法
  2. ファイナンス(金融)―経済学(応用経済学)
  3. 法―基本法なし

一般的分類

  1. 金融取引を規律する法律:金融取引法
  2. 金融制度を規律する法律:金融規制法

ファイナンス法を理解するためには最低限のファイナンス(経済学)の知識・理解が必要

金融規制法

金融制度(金融機関、金融商品、金融市場)を規律する法律を金融規制法といいます。
金融制度の仕組みやルールに関する法令やガイドラインの総称を意味しますが、顧客や投資家保護のための規制(ライセンス制など)が中心となるため、金融規制法または金融レギュレーションと呼ばれます。

金融制度には、①金融機関、②金融商品、③金融市場が含まれます。具体的な内容以下です。

  1. 金融機関には、銀行、証券会社、保険会社、資産運用会社、信託会社(銀行)、貸金業者、リース会社、クレジットカード会社、仮想通貨(暗号資産)関連会社、オンライン決済関連会社など、様々な金融サービスを提供する会社が含まれます。
  2. 金融商品には、預金、ローン、為替取引、株式、社債、デリバティブ(スワップ、オプション、先物取引)、ファンド(組合型)、保険、投資信託、信託、仮想通貨など、様々な金融資産が含まれます。
  3. 金融市場には、証券取引所(株式、社債、投資信託の市場)、デリバティブ市場、店頭市場(証券会社などの窓口販売)があります。

さらに、金融制度はグローバルなつながりがあるため、金融規制の実務には、外国の金融機関(外資系金融機関など)、外国の金融商品(米国株など)、外国の金融市場(NY証券取引所など)なども含まれます。

また、(i)内容面では、個人情報保護や反社会的勢力・マネーロンダリング対策といったコンプライアンス全般、(ii)分野的には、購入資金の調達という観点において金融と一体的な関係にあることの多い不動産(不動産ファイナンスなど)に関する各種規制(宅建業法など)も、金融規制法の一部又はその隣接分野として位置づけられます。

以上のような非常に広範な金融に係る規制全般を取り扱うのが金融規制法の実務となります。

アセットマネジメント

金融機関の情報生産機能(金融機関が顧客から取得した膨大な情報を利用して専門的な情報分析とアドバイスを行う機能)を利用して各種資産(アセット)の管理や運用(マネジメント)を行い、資産価値を高めたり利益の最大化を図ったりする業務をアセットマネジメントといいます。
アセットマネジメント(ビジネス)に関連する法務を、法務の世界では、単にアセットマネジメントといいます。

アセットマネジメントの法務について

アセットマネジメントの法務には、大きく2つの側面が存在します。

  1. アセットマネジメントを提供する金融機関またはこれに関連する金融商品(投資家が投資を行うにあたり購入する投資信託その他のファンドや、当該投資信託その他のファンドの投資対象となる株式、社債、不動産など)に適用される金融規制法(レギュレーション)に関する法務(ライセンスの取得や金融商品の販売方法に関する規制など)
  2. アセットマネジメントを行う金融機関(投資運用会社や投資助言会社)やファンド(信託会社など)と投資家との間で締結される各種契約(投資信託契約、信託契約、各種組合型投資契約、投資一任契約、投資顧問契約など)に関する金融取引法(トランザクション)

しかしながら、アセットマネジメントの分野では、投資家と締結される各種契約は定型化・雛形化されている場合が多いので、金融取引法の観点から弁護士が個々の案件に関与することはそれほど多くはありません。他方、アセットマネジメントでは各種金融規制が複雑に適用されるため、こうした金融規制法を中心に取り扱うのがアセットマネジメントの実務となります。

バンキング

銀行(バンク)が行う金融取引のうち法人向けの金融サービス(ホールセール業務)を、一般的にバンキングといいます。なお、個人向けの金融サービスのことをリテール業務といいます。
銀行の提供する金融サービスは、「預金」、「融資」、「為替取引」の3つが中心となるため(銀行の固有業務)、理論的には、バンキングにもこれらのすべての業務が含まれることとなります。
しかしながら、預金と為替取引(特に預金)ではリテール業務が中心となることから、実務的には、バンキングの中心は融資(ローン)となります。

バンキングの法務について

ホールセール業務におけるローン(バンキング)には以下の特徴があります。

  1. 定型化・雛形化されたローン契約(住宅ローンなど)とは異なり、個々の借主やプロジェクトの属性に応じたオーダーメイドの複雑なローン契約を作成する
  2. 貸付金額が高額(数十億円~数千億円)になることが多いため、リスク管理の観点から、ローン契約の分量がかなり多くなる傾向がある(50~100ページ以上)

特に、比較的定型的な法人に対する通常のローン(コーポレートファイナンス)とは異なり、個々のプロジェクト毎に複雑な仕組みを構築して当該プロジェクトにおける借主(ペーパーカンパニー)に対する貸付けを行うプロジェクト型のローン(ストラクチャードファイナンス、アセットファイナンス、不動産ファイナンス)の場合には、こうした傾向が顕著になります。
このため、プロジェクト型のローン実務においては、専門性を有する弁護士によるローン契約の作成及びレビューが不可欠となります。

以上のように、バンキングにおいては、契約書の作成=金融取引法の観点からの作業が中心となります。なお、バンキングにおいても金融規制法的観点からの検証は必要となりますが、銀行がローン業務を行うことができることは自明であるため、プロジェクト型のローンの場合を除いては、金融規制法的観点からの作業はそれほど多くないのが一般的です。

ストラクチャードファイナンス

一定の「仕組み」(ストラクチャー)を利用したファイナンス(借主にとっては資金調達、貸主にとっては投資)を、ストラクチャードファイナンスといいます。
なお、「仕組み」(ストラクチャー)を利用しない通常のファイナンス(法人向けローン)をコーポレートファイナンスといいます。

ストラクチャードファイナンスは、法人の信用力(総資産と総負債のバランス)に依拠して貸付けを行うコーポレートファイナンスとは異なり、①法人の有する特定の資産(不動産など)、②法人がこれから開始する特定のプロジェクト(太陽光発電事業など)の資産・事業価値やそこからの収益(キャッシュフロー)に依拠して、貸し付けを行うファイナンス手法となります。

特定の資産やプロジェクトに依拠して貸付けを行うためには、こうした資産の保有やプロジェクト事業遂行だけを行うペーパーカンパニー(特別目的会社=SPC/Special Purpose Company)(又は信託など)を設立(設定)し、これに対する貸付けを行うという「仕組み」が必要となるため、ストラクチャードファイナンスの手法による貸付けが必要となります。

ストラクチャードファイナンスの法務について

ストラクチャードファイナンスには以下の特徴があります。

  1. 個々のプロジェクトの属性に応じたオーダーメイドの複雑なローン契約を作成する
  2. 貸付金額も高額(数十億円~数千億円)になることが多いため、リスク管理の観点から、ローン契約の分量がかなり多くなる傾向(50~100ページ以上)

このため、ストラクチャードファイナンスのローン実務においては、専門性を有する弁護士によるローン契約の作成及びレビューが不可欠となります。

以上のように、ストラクチャードファイナンスにおいては、契約書の作成=金融取引法の観点からの作業が中心となりますが、同時に、「仕組み」の一部として、(i)ペーパーカンパニーであるSPCに代わって資産運用(アセットマネジメント)を行う金融機関が存在したり、(ii)エクイティ(出資型)投資を行う投資家に対して株式や各種組合等の投資持分の販売が行われることから、金融規制法的観点からの検証も不可欠の作業となります。

以上のような、複雑な契約書作成実務と複雑な金融規制に関する法的助言を総合的に提供するのがストラクチャードファイナンスの実務となります。

アセットファイナンス

ストラクチャードファイナンスのうち、法人の有する特定の資産の資産価値やそこからの収益(キャッシュフロー)に依拠して貸付けを行うファイナンス(借主にとっては資金調達、貸主にとっては投資)手法をアセットファイナンスといいます。
なお、ストラクチャードファイナンスのうち、法人の有する特定の事業の事業価値やそこからの収益(キャッシュフロー)に依拠して貸付けを行うファイナンス手法をプロジェクトファイナンスといいます。

アセットファイナンスには、その投資対象となるアセット(資産)の種類に応じて様々な種類がありますが、代表的なものとしては以下などがあります。

  1. 不動産を資産とするアセットファイナンス(不動産ファイナンス/不動産証券化)
  2. 各種債権(売掛債権、貸付債権など)を資産とするアセットファイナンス(債権証券化)
  3. 航空機を資産とするアセットファイナンス(航空機ファイナンス)
  4. 船舶を資産とするアセットファイナンス(船舶ファイナンス)

アセットファイナンスの法務について

アセットファイナンスはストラクチャードファイナンスの一種であるため、以下の特徴があります。

  1. 個々のプロジェクトの属性に応じたオーダーメイドの複雑なローン契約を作成
  2. 貸付金額も高額(数十億円~数百億円)になることが多いため、リスク管理の観点から、ローン契約の分量がかなり多くなる傾向(50~100ページ以上)

このため、アセットファイナンスのローン実務においては、専門性を有する弁護士によるローン契約の作成及びレビューが不可欠となります。

以上のように、アセットファイナンスにおいては、契約書の作成=金融取引法の観点からの作業が中心となりますが、ストラクチャードファイナンスで述べたのと同様の理由により、金融規制法的観点からの検証も不可欠の作業となります。

以上のような、複雑な契約書作成実務と複雑な金融規制に関する法的助言を総合的に提供するのがアセットファイナンスの実務となります。

不動産ファイナンス

ストラクチャードファイナンスのうち、法人の有する特定の不動産の資産価値やそこからの収益(キャッシュフロー)に依拠して貸付けを行うファイナンス(借主にとっては資金調達、貸主にとっては投資)手法を不動産ファイナンスといいます。
不動産ファイナンスは、その投資対象となるアセット(資産)が不動産であるアセットファイナンスとなります。

不動産ファイナンスの法務について

不動産ファイナンスはストラクチャードファイナンス及びアセットファイナンスの一種であるため、以下の特徴があります。

  1. 個々のプロジェクトの属性に応じたオーダーメイドの複雑なローン契約を作成
  2. 貸付金額も高額(数十億円~数百億円)になることが多いため、リスク管理の観点から、ローン契約の分量がかなり多くなる傾向(50~100ページ以上)

このため、不動産ファイナンスのローン実務においては、専門性を有する弁護士によるローン契約の作成及びレビューが不可欠となります。

以上のように、不動産ファイナンスにおいては、契約書の作成=金融取引法の観点からの作業が中心となりますが、ストラクチャードファイナンスで述べたのと同様の理由により、金融規制法的観点からの検証も不可欠の作業となります。また、その投資対象が不動産であることから、(i)不動産に関する各種規制(建築基準法など)や(ii)不動産取引に関する各種規制(宅建業法など)の観点からの検証も不可欠の作業となります。

以上のような、複雑な契約書作成実務、複雑な金融規制及び不動産関連法令に関する法的助言を総合的に提供するのが不動産ファイナンスの実務となります。

金融関係紛争

金融機関の提供する金融商品・金融サービスや金融取引に関連する紛争を金融関連紛争といいます。

金融関係紛争の法務について

このうち、(a)金融機関の提供する金融商品・金融サービスに関連する紛争は、典型的には、金融機関とそのリテール業務の顧客との間の紛争となります。
以下などが代表例となります。

  1. 銀行の場合は預金者
  2. 証券会社の場合は株式や社債の個人購入者(投資家)
  3. 保険会社の場合は保険契約者
  4. 資産運用会社の場合にはその個人委託者(投資家)
  5. 信託会社(銀行)の場合は個人受益者(投資家)
  6. 仮想通貨(暗号資産)関連会社の場合には仮想通貨の個人購入者(投資家)

こうした金融関係紛争においては、一般的には理解が必ずしも容易ではない各種金融商品・金融サービスの商品性に関する知識が必要となる上、その勧誘や販売方法に問題があることも多いことから、金融商品の勧誘や販売に関する各種金融規制法の知識が必要となります。
なお、こうした金融関係紛争は、被害者と主張する当事者が不特定多数の個人となることから、被害者訴訟や集団訴訟といった色彩が強くなる点も特徴となります。

次に、(b) 金融機関の金融取引に関連する紛争は、典型的には、金融機関とそのホールセール業務の顧客との間の紛争となります。
以下などが代表例となります。

  1. 銀行の場合はストラクチャードファイナンスにおける貸付先その他のプロジェクト関連当事者や預金・為替取引の法人顧客
  2. 証券会社の場合はデリバティブ取引の相手方法人(投資家)
  3. 保険会社の場合は法人保険契約者や資産運用業務の相手方法人
  4. 資産運用会社の場合にはその法人委託者(投資家)
  5. 信託会社(銀行)の場合は法人受益者(投資家)
  6. 仮想通貨(暗号資産)関連会社の場合には仮想通貨の法人購入者(投資家)

こうした金融関係紛争においては、ストラクチャードファイナンスではその仕組み、契約書及び適用ある金融規制法が非常に複雑であり、またその他の各種金融商品・金融サービスの商品性もリテール向け商品に比べはるかに複雑であることが一般的です。
このため、上記(a)以上に、複雑な取引や金融商品の仕組みを理解できるだけの金融の知識と、金融商品の勧誘や販売に関する各種金融規制法の知識が必要となります。

以上のように、金融関連紛争においては、通常の紛争案件と比べた場合、金融そのものに関する高度の知識と、複雑な金融取引法及び金融規制法双方にまたがる知識が必要とされるため、こうした助言を総合的に提供するのが金融関係紛争の実務となります。

記事を監修した弁護士

弁護士

酒井 俊和

キャストグローバル・パートナー / 四国銀行社外取締役 / 病理学アソシエイツ法務部長

複数の大手法律事務所と外資系法律事務所(米系・英系)において、金融実務を中心に国内・クロスボーダーの企業法務の経験を積んでまいりました。
金融実務については、金融規制(銀行、証券、信託、アセット・マネジメントなど)と金融取引(バンキング、不動産など)の両方を取り扱っております。非常勤で、地方銀行の社外取締役と外資系投資助言業者のコンプライアンス・オフィサーも務めております。
著書として『ファイナンス法 – 金融法の基礎と先端金融取引のエッセンス』(商事法務2016年)。
今まで積んできた知見を活かして、依頼者の方々のお役に立てればと思っております。

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