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企業法務に関するコラム

「契約書のない非典型契約における債務不履行が争いになった事例」

  • 企業法務

1 ご相談内容

 依頼者は、継続的な特定のサービスを月額100万円で半年間(半年毎の契約更新)提供するという形で、相手方との間で契約を締結しましたが、契約書の作成はしておりませんでした。サービス提供の翌月払いという形で、最初のうちは相手方から約束通りの入金がありましたが、徐々に支払いが遅れるようになり、最終的には支払がなされなくなっていまいました。支払が遅れ始めた当初は、遅れてでも支払はされていたので、依頼者も督促はするものの、信用して支払がないままにサービス提供は継続していました。

 最終的には、未払が半年分ほど溜まった状態のまま、契約解除により契約終了しましたが、当初依頼者からの督促に対して「支払を待ってほしい」という回答であったところから、徐々にサービスの不備を指摘して支払を拒絶するような回答になってきたことから、お困りになられ、弊所にご相談にいらっしゃいました。

 

2 契約書を交わしていない契約

 契約の成立には、必ずしも契約書の署名押印を必要としません。

 いわゆる口約束でも契約は成立します。例えば、普段のコンビニやスーパーでの買い物などに契約書は作成していませんが「売買契約」が成立しています。

 企業間でも、特に継続的に取引関係にある相手方との取引について、基本契約書も個別契約書もなく、商慣習を前提に、例えば発注書や見積書だけだったり、もっと簡易に電話のやり取りやメッセージでの種類と個数だけのやり取りで取引が進んでいるケースもよくお見かけします。

 「契約書」という形がなくとも、双方の念頭に置いている「商慣習」が同じで、特にトラブルが生じないまま契約終了を迎えるということも多々あります。

 しかし、双方の念頭においている「商慣習」が異なる場合や、何かトラブルが生じた場合に、「契約書」が作成されていないことによって、「契約締結日」や「契約内容」について双方の認識にズレが生じてしまうケースもあります。

 特に、高額の契約や、継続的な契約、商品ないしサービスの提供と支払期限との間に期間が空くような契約などは、契約書を作成しておく方が良いでしょう。

 そうはいっても、継続的に同じ取引先と同じような契約をたくさんしていて、いちいち契約書なんて交わしていられない、というような場合は、個別の契約書を作成しなくても、「基本契約書」という形で、双方の「商慣習」のズレがないことを確認してイレギュラーの事態に備えるという方法もあります。

3 非典型契約とは

 典型契約というのは、民法に契約類型が定められているもので、例えば「売買契約」「請負契約」「消費貸借契約」「賃貸借契約」「贈与契約」等が典型契約にあたります。

 この典型契約に関しては、特に双方の間で明示的に定めていなかったことでも、イレギュラーが生じた場合にどのように解決するかということについて、一定「民法」という法律で予めルールが定められているので、契約書が作成されていなくてても、民法のルールに従って解決しましょうということが期待出来ます。

 このように民法に定めがないような契約類型のことを、「非典型契約」と呼びます。

 非典型契約の場合には、契約の内容=双方の合意の内容を明らかにするために、より「契約書」の存在が重要になってきます。

 そして、企業間の契約では、民法に契約類型の定められていない「非典型契約」が多々利用されています。例えば、フランチャイズ契約やライセンス契約・秘密保持契約・保険契約等も民法に規定のない非典型契約になります。

4 解決方法

 訴訟和解にて解決

5 解決までの経緯

(1)内容証明

  依頼者も当初はきちんと支払ってさえくれればという思いを持っていたため、訴訟提起 準備と並行して内容証明にて請求を行いましたが、残念ながら相手方には任意に支払う意 思がないようでしたので、交渉に時間をかけず、早々に訴訟提起に踏み切りました。 

(2)訴訟―移送申立

  法定管轄は義務履行地の大阪と相手方所在地の東京の双方に管轄があり、どちらに訴訟 提起をしても良いところですが、当方としては当方依頼者の所在する(実際にサービス提 供を行っていた地域)大阪で訴訟提起を行いました。しかしながら、相手方は、自身が東 京に住んでいることを理由に東京の裁判所で裁判を行うべきだという主張を行い、裁判を 東京に移すよう移送の申立てを行いました。

  結論としては、相手方の移送申立は認められず、訴訟を提起した大阪で裁判を続行する ことになりました。

(3)訴訟―争点

  ア 契約の締結

    相手方は、契約書がないことを指摘して、契約締結の有無から争ってきました。

  イ 契約内容

    更に、相手方は、契約内容についても争い、依頼者が契約内容通りのサービス提供   を行っていないから支払義務がないとの主張を行っていました。

  ウ 契約終了時期

    契約終了時期についても、当方の主張よりも早い段階で解約されていたとの主張が   なされました。

(4)訴訟―各争点についての対応

  ア 契約の締結

   契約の締結に関しては、締結日の特定にはやや苦労しましたが、実際に(内容に争い  はあるものの)当方の主張しているサービスの提供があったこと自体は客観的な証拠が  残っており、相手方も「不十分であった」という主張はしているものの、サービスの提  供があった事実自体は争っていなかったこと、数カ月分については、約束通り月額料金  の支払いも確認出来ていたことなどを含めて丁寧に主張立証することで、相手方も比較  的早期の段階で契約締結の事実自体を争うことは諦めたようでした。

  イ 契約内容

   最後まで争いとなっていたのが契約内容でした。相手方としては、依頼者が提供を約  束していたサービスのうちの一部が不十分・不履行という主張でしたが、依頼者として  は、不十分・不履行と言われているサービスは、そもそも契約内容とはなっていない・  提供を約束したものではなく、継続的にサービスを提供している中で、現場で対応して  いる個別のスタッフに対して相手方から寄せられた要望について、契約外の任意のもの  として現場限りで対応してあげていたことはあるかもしれないが、その不履行を主張さ  れる筋合いはないという主張でした。

   非典型契約で、月額料金の対価として設定されているサービス内容が特殊であったこ  ともあり、どこまでが契約内容となっていたのかという点については、契約書がないこ  とから客観的な資料を出すことが困難でしたが、双方のメッセージのやり取りや、契約  締結に際して依頼者が相手方に提出していた提案書の内容、相手方からなされた主張の  矛盾点などをひとつひとつ丁寧に指摘して積み上げていったという形でした。

  ウ 契約終了時期

   契約終了時期に関しては、少なくとも、サービス提供がいつまでなされていたのかと  いう点については客観的な証拠が残っていたことから、依頼者のサービス提供につい   て、相手方も認識した上でサービスの提供を受けていた以上は、サービス提供を受けて  いた月の分までは契約が継続していたはずであるという形で主張立証を行いました。

   相手方も、解約の意思表示はもっと前にしたという主張はしていましたが、サービス  提供をその後も継続して受けていた事実は認めざるをえないという状況でした。

(5)訴訟ー和解

  最終的には、和解でしたので、各争点に対する裁判官の最終判断が示されたわけではあ りませんが、それまでの主張立証を踏まえた上で、最終的な和解金額としては訴額を上回 る金額となりましたので、全面的な勝訴和解ということになります。

    

6 コメント

 依頼者としては、資力が乏しいから支払を待ってほしいと言われて、温情で支払を待っていたにもかかわらず、訴訟になった途端に契約締結事実や契約内容の不備等を理由に支払義務がない等という主張が出てきたため、当然ながら相当ご立腹でした。

 和解内容からすると、総額が訴額を上回る和解でしたので、相手方の主張は全て認められなかったに等しいということになりますので、この点については大変お喜び頂くことが出来ましたが、資力がないということで相当長期の分割払いという内容にならざるを得なかったた点は残念でした。

 訴訟を通じてますます相手方への信頼がなくなってしまったので、履行可能性に不安が残るということでしたが、資力に乏しいというのは事実のようでしたので、判決をもらって乏しい資産から強制執行でわずかの回収をするよりは現実的に支払い可能な分割で総額を訴額よりも多くしたうえで、遅延損害金の利率を20%の利率にすることで履行を促す形での和解ということになりました。

 全ての契約に契約書を作成することは現実的ではないとしても、企業様の事業内容に応じて、特に継続的かつ非典型の契約の場合にはトラブルが起きる可能性も高くなりますので、適切な契約書を準備して合意内容を残しておくことが、リスク軽減につながるかと思います。

 今までトラブルがないから・・と油断せずに、基本契約書だけでも準備する等、トラブル発生を未然に防ぐお手伝いもさせて頂けるかと思いますので、お気軽にご相談ください。 

以上

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