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企業法務に関するコラム

事業譲渡契約書作成の安易な雛形利用に内在する危険とは?

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「契約書」「雛形」と検索すると、沢山の雛形が出てきて、無料で使用できるものが無数にあります。しかしながら、ネットで調べた契約書の雛形をそのまま利用する事は、多くの危険が内在しています。ましてや、事業譲渡契約書は、特定の事業または、事業の全てを譲渡する場合であり、一般的に大きな取引となりますし、その譲渡にかかる内容を明確にし、契約上負担する責任や、法律上負担する制約などを総合的に判断して、契約書の作成をする必要があります。そこで、事業譲渡契約書の雛形利用の危険について説明していきます。

1.「事業譲渡」とはどういった法的な行為なのか?

事業譲渡とは、事業を譲渡するという経済的な行為であることに限定されず、法的な意味が含まれています。会社が行う事業譲渡には、会社法上の事業譲渡の場合(会社法21~24条)と、組織再編の一部としての会社分割があります。
経済取引の一部として行う、「事業譲渡」は、上記のとおり、法手な意味としてはその内容により、会社法上のどの規定に該当するのかが分かれ、手続が異なります。また、組織再編の一部である会社分割の場合には、その影響が大きいことから、債権者保護手続きなどの法律上の規制があります。
一方で、会社法上の事業譲渡の場合には、私的自治の原則が該当し、会社の全部の事業の譲渡、及び会社の事業の重要な一部の譲渡の場合以外には、譲渡会社側の手続において、特段の規制はありません。

2.一般的な事業譲渡契約はどういった内容なのか

一般的な事業譲渡契約の内容の多くは、譲渡会社の事業の全部を譲り渡すか、または、事業の重要な一部を譲り渡すといった内容になります。
また、前述したとおり、法的な意味でどういった形式(スキーム)とするかにより、その手続の内容だけでなく、契約条項にも影響が出てきます。
一般的には、会社法上の事業譲渡のスキームを選択します。その理由は、会社分割の場合には、様々な法的な手続きをとる必要があり、特に債権者保護手続きや、会社分割に伴う商業登記手続きなどを行う義務があり、懈怠した場合には一定の罰則がある場合などのリスクがあります。
そのため、事業譲渡契約を締結する際には、その法的な手続きの内容として、「事業譲渡」なのか「会社分割」であるのかについても含めて、合意しておく必要があります。(なお、どの法的手続きを選択するかにより、税務会計上の手続もことなります。)

3.事業譲渡契約書の雛形の安易な援用の危険

事業譲渡契約の雛形の安易な援用の危険については、契約条項上の危険と、法的な意味での危険があります。前述のとおり、事業譲渡契約は、当事者が合意をすれば良いので(それでも、その合意そのものが大変だと思料されますが)、その実態や内容について、把握しておく必要があります。
一般的には、当事者がその事業譲渡の内容の全部について理解できる場合はすくなく、弁護士などの専門家や税理士に相談をせずに取引を行う場合には、大変な危険があると言えます。

4.契約条項上の危険とは?

まず、契約条項上の危険とは、譲渡に係る権利・義務の承継を明確にしておく必要があります。事業譲渡取引においては、その譲渡に係る営業上の資産・債権・債務及び契約上の地位の承継等の要素があります。
一般的には、承継資産及び、承継債務を明記しますが、その範囲の指定が困難な場合には、「譲渡会社が対象事業に現に使用している一切の動産類」等の振り合いの記載などで対応します。しかしながら、このような抽象的な記載を多用する場合には、後々になり、事業譲渡にかかる代金面での争いや、その事業譲渡契約の効力面での争いにつながる可能性が高くなり、出来る限り網羅的に記載することが望ましいと言えます。それでも困難といった場合には、特に争いとなりそうな重要な資産を網羅するといった方途が考えららます。
このほかには、債務の引き継ぎに関する条項や、従業員の引き継ぎの有無などが契約条項上の危険として挙げられます。一般に流通している雛形のまま安易に援用すると、当事者間の意図とは異なる内容での合意となり、あとで、争いの危険が生じ大変に危険です。

5.法的な意味での危険とは

法的な意味での危険とは、まず、契約条項に記載されている内容の資産等であっても承継できない権利があるという点です。このことは、包括承継的な手続きである、会社分割の手続を経た場合でも同様です。
例えば、建設業の許可などが代表的です。前記のとおり、例えば会社分割の手続をした場合、会社法上はその契約内容に含まれる財産は全て承継されます。しかしながら、建設業の許可は一身専属的なものであり、かつ属人的な許可となります。一身専属的な債権は、他の者が承継できないといった民法上の原則と同様、事業譲渡においてもそのような性質の許認可は承継することができません。
したがいまして、前記の例において上記事実を知らずに、譲受会社に建設業の許可がない場合、事業の譲渡を受けても建設業を行うことができず、その取引そのものが意味を喪失してしまいます。
このほかにも、当事者間の認識の相違により、法的な手続きとしては、会社分割に関するものであるのに、他方または双方が、会社法上の事業譲渡手続きを行っていた場合には、突然に債権者から弁済を迫られたり、または、登記手続きの懈怠により罰則を受ける危険があります。
また、会社分割を選択する場合、一定の税制適格を有する場合には、譲渡損益の繰述ができるなどのメリットがあるのですが、当事者間でそういった認識がないと、せっかくのメリットを活用できないといったことが生じます。

まとめ

事業承継契約書の雛形を利用することは会社にとっても時間の節約や費用の節約となり、メリットがあります。しかしながら、例え当事者間であっても、その事業譲渡の内容を、経済取引上の意味と法的及び税務的な意味を含めて理解するのは困難です。
また、近時はウェブサイトなどで、安易に事業譲渡を仲介するブローカーなどがおりますが、このような者たちは、必ずしも法的内容等まで知識に明るいわけではなく、適切な取引のための説明を出来ない場合があります。
危険はもっとたくさんありますが、数点述べさせてもらいました。そもそも契約書とは、どういう性質のものなのか、自分の権利義務を明確にすることが、もっとも大きな意義です。したがって、当事者によって必ず変わる部分があるはずなのです。ましてや、大きな取引となり、紛争が起きやすい事業譲渡取引を計画する場合には、前提として、弁護士等の専門家に相談して頂き、ネット等の雛形利用は避けましょう。

以上

監修者
弁護士法人キャストグローバル 企業法務担当
〒101-0054 東京都千代田神田錦町2-11-7小川ビル6階
[相談受付]03-6273-7758

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