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クレーマーの勢いに押し切られ、書面にサインしてしまった場合の対処方法

クレーマーの勢いに押し切られ、書面にサインしてしまった場合の対処方法

企業に対するクレーマーが、強い勢いで担当者に書面へのサインを求めてくると、押しきられて署名押印してしまうことがあります。 そのようなとき、署名押印してしまった担当者や企業にはどのような責任が及ぶのでしょうか? どのように対応すれば良いのかわからなくなり、動転してしまう企業が多いのですが、とるべき対応をとれば解決できるので、ご安心下さい。 今回は、クレーマーの勢いや怖さに押しきられて書面にサインさせられてしまった場合の対処方法について、弁護士が解説します。

1.クレーマーが書面へのサインを強要してくるケース

クレーマーが企業に対してクレームを出してきたとき、担当者に対して書面へのサインを要求してくるケースがあります。 たとえば、担当者に個人賠償を約束させる書面にサインさせることもありますし、企業の責任を認める内容の書面にサインさせようとすることもあります。 担当者としても、当初は断っているのですが、クレーマーはサインするまで帰さないという態度をとったり脅迫的な文句を述べたりするので、最終的に恐怖のあまりサインしてしまうのです。 できあがった書面についてはクレーマーに取り上げられてしまい、サインした当人である担当者や企業側の手元には残らないケースも多いです。

2.強迫による法律行為は取り消せる

このようにして、不本意な形で書面ができあがると、その後その書面を使って何をされるか分からないと感じ、動転してしまわれる企業や担当者がおられますが、このような場合においても慌てる必要はありません。 そもそも、法律行為は表意者が自らの意思にもとづいて行う必要があります。 そこで、相手による「詐欺」や「強迫」による法律行為は「取消」することができるのです(民法96条1項)。たとえば担当者が「個人的に損害賠償をします」という書面に署名押印させられたとしても、強迫を理由として取消をすれば、効果が発生せず、損害賠償の必要もありません。 強迫にもとづく取消を行うときには、内容証明郵便を使って相手方に対して取消の通知書を送ります。 取消通知書を送るタイミングは、早ければ早いほど良いです。また、強要されたご本人が通知書を送るよりも弁護士が代理人として通知した方がより効果が高くなります。 なお、取消権には5年の時効がありますので、5年以上放置していると取り消せなくなってしまいます。 また、署名押印させられた書面に「法的な意味」が無いケースもあります。たとえば「謝罪文」を作成させられたとしても、それによって金銭支払い義務が発生するものではないので、それだけで相手から何かを請求されたり裁判されたりする可能性はなく、慌てる必要はありません。

3.強要罪が成立する可能性もある

企業の担当者がクレーマーから強要されて書面にサインさせられてしまったとき、相手方には「強要罪」が成立する可能性もあります。 強要罪とは、脅迫によって、義務のないことを行わせたときに成立する犯罪です(刑法223条)。 強要罪が成立するケースでは、被害者としてクレーマーを刑事告訴することができます。これにより、警察に相手を逮捕してもらうことができる可能性もありますし、仮に逮捕にまで至らなくても、相手に強いプレッシャーをかけてクレームをやめさせられる可能性が高くなります。 刑事告訴の手続きについても、被害者ご自身が対応されるより弁護士が対応した方が警察に動いてもらいやすいので、強要罪成立が疑われる場合には、お早めに弁護士までご相談下さい。

4.弁護士に対応を任せた後の流れ

企業の担当者がクレーマーに押しきられて書面にサインさせられたとき、弁護士に対応をご相談いただけましたら、以下のような流れで対応を進めます。 まずは、弁護士名で法律行為の取り消し通知書を作成し、クレーマーに送付します。これにより、悪質クレームが収まる可能性が高いです。 またクレーマーに対し、相手の行為が刑法上の強要罪に該当することなどを指摘して、これ以上悪質クレームを続けるのであれば刑事告訴も辞さないことを通知します。 これによってたいていの悪質クレームが収まりますが、それでも収まらない場合には、本当に強要罪や脅迫罪、業務妨害罪などによる刑事告訴も検討します。

5.クレーマーとのやり取りは記録する

ところで、クレーマーとのやり取り、特に面と向かって話し合う際は、録音することをお勧めします。本来は、録音することを相手に断ることが望ましいです。しかし、悪質なクレーマーほど、嫌がります。最悪は、無断で録音せざる得ない場合も有りうるかと思います。脅迫等の重要な証拠となりますので、くれぐれも記録することを忘れないようにしてください。 悪質クレーマーに対抗するためには、法律のプロである弁護士が対応することが効果的です。

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