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パート社員の雇用契約書を作成する際の重要なポイント

総務省の統計によれば非正規労働者の割合は、全体の37%以上であり、パート社員はあらゆる会社における貴重な戦力になっています。2018年の「働き方改革関連法」成立にともない、パート社員の扱いについてこれまで以上に注意を払う必要が出てきています。とりわけ、「同一労働同一賃金」と呼ばれる原則に関する判例や、予定されている改正法の施行に向けた会社側の準備など、対応を怠ると将来的な法的リスクへとつながります。この記事は、パート社員の雇用契約書作成時のポイントについて説明いたします。

パート社員の雇用契約書を作成する際の重要なポイント

「パート社員」とはどういう社員でしょうか?

パート社員(パートタイム社員、アルバイト社員)は、法律上の枠組みとしては、「短時間労働者」といったものに相当します。パートタイム労働法で定義される「短時間労働者とは、原則として、1週間の所定労働時間が同一の事業所に事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べ、短い労働者をいいます(パートタイム労働法2条)。 したがいまして、「パートタイム」であるかの判断の基準は、1週間単位の労働時間がその事業所の通常の労働者(一般的には正社員)と比較して短い場合をいいます。

パート社員の雇用契約書の作成の際に注意すべき重要なポイントとは?

パート社員の雇用契約書の作成の際に注意すべきなのは、通常の労働基準法施行規則に記載されている事項だけではなく、パートタイム労働法施行規則に記載のある事項も含めて、記載する必要があります(厳密には、「書面で明示すること」が必要であり、契約書に記載しなくても、労働条件通知書に記載し通知することもできます)。 通常の労働者(一般に正社員など)向けに通知すべき労働条件の内容とのちがいは、ⅰ)退職金の有無、ⅱ)昇給の有無、ⅲ)賞与支給の有無の3項目です。一般的には、正社員のみ昇給や賞与の支給をおこない、パート社員には支給しないといった内容になるかと思います。こうした場合には、原則的には、パート社員との雇用契約時に契約書で明示するか、労働条件通知書によって通知するなど、書面で明示する義務があり、これを怠った場合には適正なパート社員との契約とはならず、将来的な法的リスクが生じる可能性があります。また、上記のほか、始業時間の及び終業時間、及び休憩時間についても通知する義務が会社にはあり、毎年改定される最低賃金にも注意が必要です。 そもそも、パートだからという理由で、昇給がない、賞与がないというのは、不合理な区別として違法とされることも大切。昨今、裁判例で相次ぎ違法という判断が下されています。

パート社員へ通知すべき雇用条件を明示しなかった場合のリスクとは?

まず、労働条件(雇用条件)を明示することは、会社の義務であり(労基法15条)、これを怠った場合には、30万円以下の罰金に処せられる可能性があります(労基法120条)。 このほか、労働条件の明示や、パートタイム労働法所定の事項を遵守しない場合には、「正規労働者と同一の雇用契約上の地位確認等請求」などを提起され、これが認められた場合には、不払い分の賃金等があるなどして、支払うように判決によって命じられることがあります(例:大分地裁平成25年12月10日)。

最低賃金法を守らない内容だった場合のリスクとは?

上記のほか、近年は最低賃金の上昇についても注意をしなければなりません。最低賃金とは、毎年、最低賃金審議会において議論の上、各都道府県労働局長が決定し、公表されるものです。ここ2~3年は、政府の政策上の方針もあり、大幅に最低賃金が引き上げられてきました。 東京であっても、10年以前であれば、「時給850円」といった内容の雇用契約は有効でした。飲食店やコンビニでは、時給900円ほどを提示すれば、ある程度の人員は確保でき、時給に関する法的な問題も、従業員からのクレームもありませんでした。 しかしながら、2018年10月に改定された最低賃金によると、時給985円が最低となり、従来は900円でも高額といった印象であったものが、現在では、最低賃金を下回る違法な賃金となってしまっています。 問題は、最低賃金が改定される以前から雇用しているパート社員との関係です。最低賃金に注意を払い、適正に時給を改定し適法に運用することに努めていれば、大きな問題は発生しません。しかしながら、これを怠った場合、将来的に最低賃金との差額分に関して、請求をされるといったリスクが生じます。また、最低賃金法違反となるため、労基署の立ち入り調査を受け、改善するように指導される場合もあります。 昨今、最低賃金を超える超えないという議論よりも、最低賃金では到底採用が出来なくなっておりますので、実質的にはあまり関係ないのかもしれません。

パート社員にも有給休暇?

2018年の法改正により、2019年4月1日より、年次有給休暇の取得が義務化されました。年次有給休暇とは、原則として、雇用されてから6か月以上勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対し、年10日の有給休暇が付与される制度となります。 今回の法改正は、パート社員、正社員の区別なく、要件に当てはまる労働者に対し、会社は1年に5日の有給を与える義務が発生します。 パート社員に関しては、その所定労働日数により比例付与され、また、会社の時機指定義務もパート社員の所定労働日数に応じ比例します。 注意点は、これまでは積極的にパート社員には「有給」があることを、会社は伝えていませんでしたが、今後は適正に通知をおこない、且つ会社の義務としてパート社員に対しても、原則的には、有給休暇を与える必要が生じるといったことです。

まとめ

日本は人口が減少し、働き手が不足する中で、柔軟な勤務条件の運用が可能なパート社員の存在は会社にとって、非常に重要です。上記に記載したの重要なポイントは、一例ですので、気になる方は、弁護士に相談するなど行い、適切な労働管理を行うようにしましょう。

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